防衛費の議論に関する違和感

防衛費に関する議論が活発になっている。岸田首相が防衛費増額の財源を増税で賄うと発言したが、与党内ですら議論がまとまっていない。

財源の問題は重要だ。国債で賄えば将来の世代の負担に繋がるし、増税すれば現役世代の負担がさらに重くなる。しかし、財源の前にそもそもなぜ防衛費の増額が必要なのかを明確にする必要があるのではないか。

国際政治を学んでいる人や日頃から国際情勢に関するニュースをチェックしている人ならば、近年の世界情勢は日々不安定化しており、防衛費増額もやむなしという意見に異論はないだろう。しかし、大多数の日本人は国際情勢にそれほどの危機感を抱いていないと思われる。なぜか。

第一に、日本は「吉田ドクトリン」のもと、安全保障をアメリカに依存し、自身は経済成長に注力してきた。だからこそ日本は防衛費はGDP比1%という、非常に少ない金額で日本の安全保障を確保することができた。日米同盟は、簡単に言えば「日本が土地を貸す代わりに、アメリカは日本を守る」関係であり、しばしば非対称な同盟(asymmetal alliance)と言われる。

第二に、日本は島国だからだ。朝鮮戦争やウクライナ戦争を見ればわかるように、他国と陸続きの国は隣国から侵攻されるリスクが島国と比べて高い。日本は北朝鮮、ロシア、中国などの国から囲まれているものの、海を隔てており、侵略される可能性は低かった。

このような理由で「平和」に慣れた日本人は、いきなり防衛費倍増と言われれれば違和感を感じるのも無理はない。まして物価上昇が著しい中での増税は抵抗感が生まれて当然ではないか。

安全保障は他国からの攻撃を「予防」するために必要とされるが、それゆえ成果を実感しにくい。国民全体に負担させることで安全保障に関する意識を高めたいという考えは理解できるが、改めてなぜ防衛費増額が必要なのか徹底的に議論し、国民に理解してもらうことが大切なのではないか。

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