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ワールドワイド・トラブル!?LAでまさかの不払い。手強い女社長との攻防…辛酸なめ子の「LAエンタメ修行 伝聞録」

「いや〜もう、ひどい1ヶ月でした。ひどさワールドワイドみたいな」
私の中ではタフさワールドワイドなMutsumiさんがそんなことをおっしゃるとは、一体何が起こったのかドキドキします。

「日本じゃなかなかこういう経験できないです。常識狭かったな、みたいな感じですよね」
電話で話を伺うと、不動産がらみのトラブルだそうで……。

「ダウンタウンに事務所のスペースを持っていて、ビザを取る前に借りて会社として使おうと思っていたんです。でもアーティストビザが取れたのでそのスペースは使わなくなりました。ただアメリカでは契約するとその期間は借りないとならないんです。でもサブリース(又貸し)はできるので、テナントを募集しました」

さらっとおっしゃいましたがアメリカで不動産を借りてさらに又貸しする、という複雑な行為を異国でなしとげられるMutsumiさんがすごいです。
「そしたら一年前に、メイクアップスクールの会社が入ったんです。NYやLAでビジネスしている会社。オーナーは金髪でいかにもアメリカ人って感じの女性です」

なんとなくハイディ・モンタグとかマイカ・モンローみたいな、クラスの女王的なイメージの美女を想像します。そんな人と契約したら威圧されそうですが……。

「まず、敷金を払ってもらう時のやりとりがスムーズにいかなくて、なかなか入金してくれず、口座の登録に時間がかかるとか言い訳されたりしてちょっと面倒くさかったんですが、そのあとは毎月ちゃんと払ってくれてました。最初の取り決めで、契約更新しない場合は2ヶ月前に解約することになっていて、2ヶ月前に確認の連絡したら更新したいと言われ安心していたのですが、一ヶ月前に『やっぱり出る』と言い出して……」

そのどさくさにまぎれて8月分の家賃が未払いで、9月分の家賃は入っていたという不可解な事実が判明したそうです。

「管理会社に言われて気が付きました。メイク会社に遅延金と家賃を払ってくださいと言って、最初は払うと言っていたのに2週間経っても払われず……」

ちなみにおいくらなんでしょう。LAなのでかなり高そうです。

「16万円くらいで遅延金は1万5千円くらいです。そのメイク会社は、サイトを見ると料金設定も高いし、支店もいくつかあって、お金に困っている感じはしないし、そのくらいすぐ払えそうなんですけどね……」

Mutsumiさんに教えてもらったそのメイクアップスクールのサイトを見たら、メイクレッスンが3時間で500ドル、3日間のワークショップが1300ドルとわりと良いお値段。しかもサイトを開いたらその女社長エイミーがサイトを見ている人に「How may I help you?」とチャットで話しかけてくるので気が抜けません。予想以上の美人で、人を振り回しそうな主役オーラが感じられます。

「エイミーは未払いのまま『それって払わなきゃいけないの?』とか言い出したんです。とぼけてるのか確信犯なのか忘れてるかわからないんです。8月分が払われていないことを説明したら、オッケー払うって言ったのにまだ振り込まれず……。問いただしたら、パソコン画面では振り込んだことになってるとか、NYの担当者が休みだから、とか言い訳をはじめて。こちらがいくら突っ込んでも仕方ないです。今まで知り合った限りですが多くのアメリカ人はあまり過去を振り返らないようで、あの時ああ言ったでしょ、ってエビデンス出して説明してもほとんど意味がないんです。払う払う、払ったよ、払ってない、というのを2、3回繰り返しました。お金がないわけじゃないと思うんです。ちょっと心の闇を感じます……」

エイミー社長のインスタを探し当てたので、見てみたらメイクスクールの生徒さんに「Keep learning, keep growing, keep positive」などと励ましの言葉をかけていました。インスタの映え写真から華やかな日常を演出しつつも、ポジティブシンキングが空回りしていて、頬がこけ気味で疲れている感が。女社長で公私を充実させるのは大変だと思いますが、それで踏み倒しが許されるわけではありません。

さらにトラブルは続き、裁きの境地へ...

「不払い以外にも理不尽なことが……。退去と引き渡し日は30日とお互い約束していたのに、エイミーは28日に既に引っ越ししてNYに帰っちゃったんです。『家族にエマージェンシーあってもうNYに帰らないとならない。次のテナントが入れるように完璧にきれいにしたから安心して』というメールが来ました。もちろん家賃1ヶ月分は不払いのまま。さらに現地に行ったら室内装飾が全部残ってたんです。建て付けした巨大な仕切りの壁とか、壁中に打ち込んだ棚とかいろんなことをやっていたのがそのままに……。お金は払わないし撤去しないとならないものも全部置いてってあっけにとられました。メールではよくあんなこと言えるなとびっくり」

エイミーの最近のインスタを見たら、メイクをオフする方法の動画をアップしていました。自分のメイクをクレンジングする前に部屋をクリーニングしろって話ですよね

「管理会社に、これってアメリカでは普通なの?と聞いたら、そんなことないと思うけど、とさらっと言われて。結構ドライな感じなんです。でも困っていることを訴えたら、メイク会社に強めに連絡してくれました……。そしたらすぐエイミーからメールが来て、ごめんごめんみたいな感じで、『荷物撤去するから安心してください。便利屋さん呼んで撤去させます』とのことでした。ただ撤去したゴミは超巨大な粗大ゴミだからビルのゴミ捨て場に捨てられない。持ち帰ってください、と管理会社にも再三言われていたのに、エイミーからは『ゴミって下に捨てればいいんでしょ』というメールが来て、いちいち噛み合わない。」

自分に都合の良い現実に勝手に脳内変換してしまう人なのかもしれません。エイミーはオンラインで便利屋さんを頼んだものの、その便利屋さんにも話が伝わっておらず大量の木材が乗るような車ではなかったので粗大ゴミは結局捨てられないまま……。中途半端な情報伝達でトラブルが増大したそうです。

粗大ゴミの処理、私も日本で引っ越しの時に困って、業者に頼んだらトラックで乗り付けてきて足下を見られて20万円その場で請求されたことがあります。泣く泣く払いました……。LAのゴミの撤去量、いかほどになるのか想像つきません。

「見積もりに来てもらったら、業者の韓国人のおじさんがめっちゃいい人で、ゴミの処理に、壁の穴埋めやペンキ塗り替えもして500ドルでした。アジア人の人情が沁みました」

禍福は糾える縄の如し。良心的な業者に出会えたり、次の物件を借りてくれそうな韓国人の女社長がいい感じで一緒にビジネスできそうだったり、開運の兆しがあるそうです。災いの反動で、きっと大きな幸運が訪れるのではないでしょうか……。

「家賃未払いの件もあるし、小額裁判を検討しています」と、Mutsumiさん。アメリカで裁判を起こすなんてなかなかできない体験です。

「今回はいろいろ学びになりました。エイミーとやりとりしてて思ったのが、感情的になるのが一番損なんです。感情的なストレスのダメージは一番自分に来る。ああいう人に何言っても無駄だから。さらっと流してダメだったら裁判でいいや、くらいに思うのが良いです」

悟りの境地というか裁きの境地に達したMustmiさん。そして女社長が入り乱れるアメリカ。女性が活躍できる土壌があるのは素晴らしいですが、よほど精神的にタフでないと生き残っていけないのが伝わります。日本から裁判必勝祈願の念を送ることしかできません……。

編集後記:後日、これ以上ひどいことは無いと思っていたところ、更に想像を上回る出来事が....。続編はこちら


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