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石黒好美の「3冊で読む名古屋」 ④ どまつりなんて だいきらい

(※ 本記事は2023年8月26日のニュースレター配信記事のnote版です)


【今回の3冊】
『人も街も動かす!巻き込み力』(水野孝一、KADOKAWA)
『檻の中のダンス』(鶴見済、太田出版)
『意身伝心』(松岡正剛・田中泯、春秋社)

名古屋の夏の奇祭といえば

 名古屋には世界各地から集まったコスプレイヤーが大須商店街やオアシス21を闊歩する「世界コスプレサミット」というイベントがある。今年はテレビ塔の下で「世界カレーサミット」が同時開催されており、人々がコスプレのまま猛暑の久屋大通公園でカレーを喰うという光景が繰り広げられ、奇祭ぶりに拍車をかけていた。

 しかし、私からすれば毎年8月最後の週末に開催される「にっぽんど真ん中祭り」(通称:どまつり)もまたコスプレサミットに引けを取らない奇祭である。日本全国から、ときには国境を越えて「よさこい」を踊るために約200チーム2万人が集まり、4日間で200万人が来場するという。

 「どまつり」は学校や地域のコミュニティ、職場などでグループを作り、「地元の民謡」のメロディやフレーズを取り入れた曲に合わせて踊る祭りだ。1999年、当時中京大学の学生だった水野孝一さんが北海道の「YOSAKOIソーラン祭り」に感銘を受け、名古屋でもこんな祭りを作りたいと始めたものだ。

 民謡をユーロビート調、アニソン調、J-POP調などにアレンジした曲に合わせ、一糸乱れぬ振りで舞い踊る。衣装やメイクも凝っており、大漁旗よりさらにデカい旗を振り回し、書き割りを用いてステージの背景を演出する。YouTubeを見るだけでもめくるめくスペクタクルが繰り広げられていることがありありと伝わるのだが、かといって自分もどまつりの輪に入ってみたい、とは露ほども思えないのだった。

「どまつり」は「檻のなかのダンス」ではないのか?

 
 私は踊るのは好きなのである。

 高校生のときにテクノにはまり、21歳のときには世界最大のレイヴ(大規模なダンスミュージックのイベント)「ラブ・パレード」に参加するためだけに単身ベルリンに渡り、3日3晩踊りまくって帰ってきた。44歳となった今でも懲りずに週末は夜ごとクラブに踊りに出かけている有り様である。

名古屋市内のクラブで、筆者撮影

 けれど「決められた振り付け」を覚えて練習しないと踊れないダンスは嫌なのだ。好きな音楽に合わせて思い切り自由に体を動かすほうが楽しくないか?「決まった動きで」「みんな一緒に」なんて窮屈じゃないの?

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