見出し画像

ブーステッド 第1話

「神経接続完了。バイタル正常。拒絶反応ありません」
強烈な白光に瞼のうえから瞳が焼かれる。目が開けられない。それでも己が仰向けに寝ていることや大勢の人に囲まれていることくらいは知覚できる。いや、正確には”知覚できるようになってきた”だ。
「よし。輸血を増やして手術を続ける」
「……あの、この数値……意識が戻ってるかも?」
「麻酔だ。目覚めるにはまだ早い」
「すぐに投与します」
手術に麻酔。断片的に聞こえる言葉の切れ端から、ここが病院であることが察せられる。おそらく手術室だろう。そこで思い出した。俺がなぜこんなところにいるのか。こんなところで寝ているのか。
巻き込まれたのだ。交通事故に。テレビ局へと向かう、車の中で。
天国から地獄とは、まさしく。なにせ俺は数時間前には天にも登る気持ちで真夏の太陽のもとオリンピックの表彰台の一番上に立っていたのだから。金メダルをかけてもらうために。
千千詩恩(せせしおん)、14歳。
史上最年少で世界記録を更新しての十種競技世界一。文句なしのキングオブアスリート。それがまさか、こんなことになろうだなんて。
「麻酔完了しました」
「よし。手術を続ける」
霞のかかり始めた意識の片隅で「すべてが夢なんじゃないか?」という疑問が湧く。夢だとしたらどこからだろう。

「──目、覚めた?」
瞼の向こうに光。しかし記憶に焼きついている痛みを伴う人工的な白光ではない。穏やかな自然の光だ。誘われるようにして少しずつ目を開ける。
白い天井に白い壁。ざっと視線を巡らせれば、周囲のほとんどが白に覆われている。清潔そうな白に。声をかけてきた看護師の女性も白い衣服に身を包んでいる。
「待ってて。いまタスリー先生を呼んでくるから」
僕が言うのもなんだし、僕よりは年上なんだろうけ れど、年若い看護師さんだった。黒い髪を仕事モードとばかりに束ねていた。太っているわけでなく、しかし丸みを帯びていて、”美人”の多いアスリート仲間にはいない類いの、”可愛い”の側の女性であった。笑顔がまぶしく、さぞ多くの患者さんの癒やしになっていることだろう。
……タ……スリー? T3?
遅れて引っ掛かったのは彼女が連れてくるといった医者の名だ。まるで型式である。よもやロボットではあるまいな。そんな風に考える己こそ、まさか人外の道に足を踏み入れているとは、この時はまだ知る由もなかった。
ともかく俺は身動き一つ取れない現状を打破しようと身体のあちこちに命令を送った。しかし文字通り指の一本も動かせない。首を左右に傾けることさえできない。どうにか己の意思が反映されるのは目玉だけ。顔は固定されているものの、瞳を動かすことだけはできた。視界の端の窓のところに黄色がかった花が見える。夏の強い日差しを跳ねて、まるで金色に輝いている。誰かがお見舞いに持ってきてくれたのだろうか。
「やあ、詩恩くん。僕が君の主治医の田田田四太(たたたしった)だ。田が三つで田3(タスリー)と呼ばれている。というか、呼ばせている」
「……あだ名、だったんすね」
「タが4つで4タ(シッタ)と呼んでくれてもいいが、田んぼの田と太陽の太を同じとしてカウントするのはどうにも違う気がしてね」
「それ以前にそれじゃあ本名になっちゃうでしょ」
「鋭い指摘だね。というか、もう喋れるのかい? さすがは金メダリストだ。信じられない回復力だよ。まあ、麻酔が効いているから身体は動かせないだろうけどね」
先程の彼女と一緒に病室に入ってきたのは、これまた若い先生だった。もちろん俺よりは年上なのだろうけれど。背が高く細身で、医者の不養生というやつか、どうにも不健康そうに見える。フレームのないレンズだけの眼鏡が削げた頬にマッチしていて、まさしく小説に出てくる医者キャラそのもの。地毛なのだろうか。茶色がかった髪がうねうねと捻れ、そこだけあだ名と同じくらい個性的である。その他はあまりにステレオタイプなその外見から、逆に医者でなく、そのコスプレをしているようにすら見える。
「麻酔が切れてからだと混乱させてしまうから、動けないうちにざっと説明させてもらうよ。君が今置かれている状況について──」
ここまで努めて明るく、また表情に出さぬよう気を使ってくれていたのだろう。彼が初対面から妙にフランクに接してきた理由が知れた気がする。田田田あらためタスリー医師の顔に一瞬の哀れみが浮かんだのを俺は見逃していない。背筋に冷たいものが走った。この部屋がクーラーが効きすぎているという理由とは、別に。
……選手生命は終わりか。
世間的に見れば俺はまだ十四歳だ。けれどこれでも親元を離れ、世界の舞台で大人相手に駆け引きをしてきている。読書が趣味で言い回しに好んで難しい言葉を選ぶこともあって、十歳の頃から”四十歳のおっさんみたい”とよく言われたもの。ゆえにそれなりに察せてしまう部分がある。それでも、であった。大きな怪我であることは言わずもがな。動けないことから分かっている。しかし事の顛末を聞かされた衝撃は計り知れないものだった。我が事ながら、まさかここまでの状況に陥っているだなんて。
タスリー医師の説明を要約すると、こうだ。
『四肢が切断されている。両手両足ともに肘から先と膝から先が僅かな部分を残して失われている。代わりにすべてに義手と義足がはめられている。神経を接続できる最新鋭のロボットだそうだ。見た目はほぼ生身と同じ。そのうえリハビリを重ねれば指の動きを再現でき、温度を感じられるようになるかもしれないらしい。若き金メダリストの不運な事故ということで国も手厚いサポートを惜しまない、とも』
ぼうっと天井を眺めながら、あの暑かったオリンピックの記憶が現実だったことを知る。そしていま目の前にある受け入れがたい事実も夢ではないのだ、と。
「細かいことは後にして、まずはそれだけ伝えておきたくてね。麻酔が切れても、その…… すぐに手足は動かせない…… ということなんだ」
当然だろう。そもそも動かせる手足が一本もないのだから。あまりに非現実的な状況に混乱することもできない。どうにも頭にまで麻酔がかかっている気分だ。状況は理解したはずなのだけれど、現実味がまるで感じられない。
「……クーラーを弱めていってくれ。少し寒い。それから…… ちょっと、寝る」
「そうだね。まずはゆっくり休むといい。ああ、そうそう。金メダルはそこの窓際に飾らせてもらったよ」
俺は言葉は返さず、そのまま無言で再びの眠りについた。傍らで看護師の彼女がなにやら励ましの言葉をかけてくれる。その声がどんどん遠くなっていく。いっそすべてが夢であればよかったのに。あるいは現実でるというのなら、もう目覚めなければよかった。そんな思いが脳裏を過ると俺は再び闇に堕ちた。

3年後──

「誰かぁーー!?」
「いやっほぉーー!」
ひったくり犯。ここのところ頻繁に出没するという未成年の集団だ。バイクに二人乗りをし、後方の者がバッグをひったくる。そこまで聞く分には、そこらの悪ガキと大差ない。けれど、この集団は少し”わけ”が違うらしい。俺が出動するほどに。
様子が変わったのは三ヶ月前の春先から。天下の白バイ隊含め、逃げる彼らを一切捕まえられなくなったというのだ。ライダーがおよそ少年のそれとは異なる腕前らしい。この夏はやられ放題だったというわけだ。
レディ、セット──
一〇〇メートル走、あるいは一一〇メートルハードルだろうか。十種競技の短距離種目を思い出す。ここでは誰かがスターターピストルを鳴らしてくれはしないけれど。ここではスタートを切るのは、いつだって自分だ。
頭の中で号砲を鳴らし、クラウチングスタートの体勢から左足を踏み出す。同時に踵のオーギュメント・バーナーを作動する。ゼネラル・エレクトリック社のジェットエンジンに装備されるアフターバーナーを小型軽量化したようなものだ。地面を蹴れば一足で五メートルは進む代物である。アスファルトが削れていないかと心配になるほどの加速は、もはや前進というより飛翔に近い。2歩目が地面を噛む前に逆足のバーナーも点火する。そのまま翔ぶが如くアスファルトを蹴る。左、右、左、右。スピードに乗れば、さながらジェットコースターだ。夜の町が俺に次々置いていかれる。
「ターゲットは前方斜め右方向を直進しています」
「コピー」
闇夜に溶ける漆黒のヘルメットにオペレーターからの指示が届く。目視で射程に捉えればフルフェスのシールドにサーモグラフィで透かされたターゲット二人の体温が表示される。AIの行動予測では次の十字路を左折して細い道へ逃げ込むつもりらしい。夏だというのに長袖長ズボンよろしく全身をくまなく包む黒ずくめの俺のバトルスーツは体温調整機能を有している。適度に涼しく、実に動きやすい。そのまま影のごとく夜に紛れ、スピードスケートさながら滑るように加速する。みるみるバイクに追いついた。次の左折のポイントで頭をおさえる。
「そこまでだ!」
イン側をまくってバイクの前に回り込み、正面からハンドルを掴んだ。両足のバーナーの出力を上げ、猛牛を受け止めるがごとく、バイクを強制停止させる。
「お前たち。抵抗するなら──」
「すいませんでした!」
拍子抜け。停車させられるなり、二人とも両手をあげての降参ポーズ。もう少し抵抗や反発があるものと思っていたのに。なんとも中途半端な悪ガキである。といって年齢は俺と大差ないのだろうけれど。少なくとも後部シートの白のタンクトップの少年は同世代だった。前方のライダーは俺と同じでフルフェイスのヘルメットをかぶっているため年齢は定かでない。
「それじゃあ、あとは任せようかな」
複数台のパトカーのサイレンが響き、バイクの前後が塞がれた。これならもう取り逃がすことはあるまい。俺はひとあし先に帰路につく。あまり目立つのは好きではないのだ。今となっては。

「おかえり、ロボコップ。今回も見事だったね」
「誰がロボコップだ! 古いんだよ!!」
明日は雨だろう。この3年でタスリーの髪の毛のうねり具合から翌日の雨が予想できるくらいには、俺、千千詩恩も回復していた。身体も、そして心も。
「っで、なんで今回もロボディのパワーが2〇パーセントまで抑えられてるんだ?」
「実戦だからね」
「俺じゃあうまく扱えない、ってことか?」
「逆だよ。君だとうまくやりすぎてあちこち壊しかねない。だからブレーキをかけてるんだ。なにせ、やりすぎた場合の弁償はこっちに費用請求が回ってくるから」
飄々と応じる長身痩躯のひょろながパーマは、目下、俺の手足、すなわちロボディをメンテナンス中である。なにやらおかしな機器をあれこれと持ち替えては義手と義足をいじっている。タスリーから毎回のように「自由にしていていいから」と断りをいれられるけれど、俺としてはぼうっとしながら待つより他にない。なにせ四肢を外すのだ。それもハーネスのようなもので宙に固定された状態で。これでなにを自由にしろというのか。椅子に腰をおろせているのがせめてもの救いである。
「3年でここまで使いこなせるようになるなんて、さすがはキングオブアスリートだ」
「元キングオブアスリートだ。でも、あんたの抱えるモルモットの中でも最上級の素材ではあるだろ?」
自嘲めかした口調でいえばタスリーが義足の間近まで寄せていた顔をあげ、屈託のない笑顔を向けてくる。さらには親指まで立ててくる。まったくやれやれだ。眼前の男は見た目どおり医師というより研究者であった。というより医師にして義肢装具士であった。それも最先端の義肢を研究している類いの。しかも変人でありながら国内有数の天才ときている。
「悲劇のヒーロー。その若き金メダリストを助けるため、という名目だけで国から随分な補助金が出るからね。さらにその実験体はキングオブアスリート。世界一と折り紙つき。こんなに美味しい患者、他にいないよ」
「……実験体って。せめて肉体にしとけよ」
「じゃあ世界一の肉体の実験体としておこうか?」
再びロボディに向かったタスリーは今度は一瞥もせずにさらりと言ってのけた。この3年で俺に気を使うことが一切なくなっていた。俺本人を前にして己の研究に没頭し、そのために俺を利用していると言ってはばからないくらいに。しかし哀れみや同情を向けられるより、よほど気持ちがよい。
「先生はああいう人だから。詩恩くん、あんまり気にしないでね」
いつものように四肢のない俺にボトルを差し出してくれるのは、馬馬馬連華(ばばばれんか)である。事故から目覚めたとき、最初に声をかけてくれた彼女だ。まさか看護師でなく、いや看護師ではあるのだけれど、タスリーの専属助手だとは思わなかった。
「そういえば、こういうので飲むと金メダリストだった頃を思い出したりする?」
「えっ? ああ、陸上やってたときもこういうボトルで水分補給してたっけ。でも、まあ、そのときはスポーツドリンクだったから。麦茶じゃなくて。中身が違うだけで不思議と違うものの気がするよ」
「そっか」
後ろに「それならよかった」が隠れていることが察せられる。四肢のない俺に液体を飲ませるにはスポーツ用のボトルが最適である。だから使うのだけれど、不幸な過去を不必要に思い出させてしまわないか、と彼女は心配してくれているのだ。
「ありがとう。それで連華さん、今日はどこにいってたの?」
「他の患者さんのところだよ」
タスリー製のロボットを装着しているということは、おそらく同業者だ。すなわちSCT(スカット)の拡張人間”オーギュメンター”である。
オーギュメンターとは”拡張する"という意味のオーギュメントと、”捕まえる”という意味のハンターを組み合わせた造語だ。そしてSCTとは”Special Cyber Teams”の略。警備局のSAT“Special Assault Team”、刑事局のSIT“Special Investigation Team”に次ぎ、サイバー警察局に設けられたあらたな組織である。サイバーがインフラにまで普及した近年の情報社会の新しい犯罪、なかでもロボットなどを悪用した物理的な犯罪に対処する部隊で、アンチいわく警察の犬2.〇あるいは警察のロボット犬だ。
「そういやタスリーの患者さん…… っていうの? 受け持ち? 担当? って、何人くらいいるの?」
「オーギュメンターってことなら8人だよ。全部で11人いて、そのうちの大半、8人がタスリー先生の担当なの。モディファイターやエンハンターには興味ないみたいだけど。っで、それとは別に普通の患者さんってことなら百人以上いるよ」
「えっ!? そんなに!」
「あれで名医ではあるから。本人は自分の研究以外やりたがらないけどね。そうはいってもあれだけの才能だと世の中は放っておいてくれなくて──」
連華さんはタスリーを差した指をそのまま俺にも向けてくる。
「俺のは”元”だよ。才能ってやつは手足とともに無くしちゃったから」
「いやいや、これだけ僕のロボディを使いこなせるというのは凄い才能だよ。詩恩くん」
「……聞いてたのかよ」
「地獄耳のタスリーとは僕のことさ。っで、バスリー。他の子たちの様子はどうだった?」
「先生、何度も言ってますけどバスリーはやめてくれません?」
「なぜだい? タが3つで僕はタスリー。ならばバが3つできみはバスリーだろう?」
田田田四太、それがこのくるくる天然パーマの痩せた男の名だ。馬馬馬連華といい、2人とも一族を継いだ証の三連姓を得ている。俺の千千の家もひと回り年上の長兄が千千千(せせせ)の姓を継いでいる。上に兄貴が2人、姉貴が1人。俺は末弟、4番目に神様から授かった恩恵、四恩(しおん)あらため詩恩だ。さておき、女性のあだ名にバスリーはないだろう。眼前の男のセンスのなさに毎々辟易させられる。
「響きがゴツいからだろ。どう考えても連華さんのあだ名にあってねえよ。研究バカは天才のくせに、そういうところはわかんねえのな?」
「……詩恩くん、僕に辛辣すぎないかい? もうちょっと目上の天才を敬ってくれてもいいんだよ?」
「先生、そういうところが詩恩くんの反感を──」
ウーウー、ウーウー、ウーウー!
突如として空気を切り裂く緊急警報が鳴る。侵入者であることは直後の揺れからすぐに知れた。あきらかに地震でない。何者かよる攻撃である。その何者かも、およそ察しはつくけれど。
「タスリー、急いでロボディを装着してくれ! 早く!! あと、なにか使える武器ないか?」
「詩恩くん、これはどうかな?」
連華さんが渡してきたのは鋼鉄製と思しき一組のトンファーである。
「なんで、こんなものが? まあ、無いよりマシか……」
「やれやれ。せっかくメンテが終わったところなのにやり直しかな? こりゃあ盛大に請求書を回さなきゃね」
台詞とは裏腹、眼前の研究者の瞳に喜々とした光が灯っている。おそらくは煽ったのだろう、この男が。けしかけてくるよう仕向けたに違いない。実験データを取るため。さらには賠償金を巻き上げるため。
「……なにがやれやれだよ」
俺に四肢が装着され、フルフェスのヘルメットがかぶせられたのとほぼ同時だった。壁の一角が斬り裂かれ、サイコロステーキになったのは。

襲撃者は改造人間”モディファイター”か強化人間”エンハンター”だ。どちらもSCTのブーステッド、本来ならば拡張人間”オーギュメンター”の味方である。しかし限られた予算を奪い合う兼ね合いで、SCT内の派閥は総じて仲が悪い。なにかにつけて難癖をつけあう間柄だ。今回も今しがたの俺の出動に関する何かしらであろう。
「あら、失礼? あまりに質素なラボだったもので入口が見つけられなかったわ?」
穴の向こうからモディファイター火火香愛(かかかあい)の声がする。現れたのは金髪の巻き髪、それもボリュームのある縦巻き髪のお嬢様だ。戦闘に不向きな髪型とは一転、その身体は燃え盛る炎のような赤一色のバトルスーツにぴたりと包まれている。さらにはその両の手に彼女の身の丈にしては大振りの日本刀がそれぞれ。
「まぁーた、コイツかよ」
改造人間とは優れた人間のDNAを注入して遺伝子レベルでブーステッドした者である。彼女は現代社会にあらたに設立された四大貴族”火火”の家の”落ちこぼれ”という烙印を払拭すべく、五体満足の健康体にありながら自らブーステッドに志願したイレギュラーだ。同い年の17歳。SCTの最年少メンバー同士であるからか、事あるごとに俺をライバル視してくる。
「いいこと、詩恩? プラモデル風情がひったくり犯を捕まえた程度でいい気にならないでよね?」
「なってねえよ。あとな、このクソ暑いのに壁に穴を空けるなよ。クーラーが効かなくな──」
刹那、香愛の姿が消える。同時に一つにも聞こえる鈍い金属音が2つ。ロボディに搭載された戦闘AIの自動防御が間一髪でトンファーを突き出して防いでいた。彼女の二刀の斬撃を。香愛には宮本武蔵のリストアDNAが組み込まれている。すなわち伝説の剣豪の神速の太刀筋がここに再現されている。
「有無を言わさず斬り掛かってくるんじゃねえよ、キチガイお嬢が」
うんざりしながらタスリーのほうを向けば、シールド越しにも見紛うことのない大きな頷き、暴れても問題なしの意が返ってくる。これのどこが問題ないのか。
「まったくやれやれだ……」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?