タイミング   短編小説

 どうやら私は苦手らしい、友人同士の会話に割り込むのが、興味のない話に相槌をうつのも、取引先の方にコーヒーをお出しするのも、いつも遅いと上司に叱責される。 
あぁこの上司というのは、前述の「興味のない話を」長々としてくる私の悩みの元凶と言っても差し支えない。 
ほら、やっぱり苦手だ。 今する話じゃないとタイミングを間違えてからいつも気付く。

子供の頃からそうだ。 いつもは通らない道で帰ると、好きな子が違う男の子と仲良く帰っていた。
一緒に帰ろうと勇気を振り絞り、誘い、あえなく撃沈した日にだ。 
 大縄飛びに入っていくのも苦手。
 はじめての告白は一限目の授業が始まる前にしてふられた。 
 妻にプロポーズしたのも仕事場で、それも昼休憩の終わる3分前。
しかし、妻は「なんで、今なの?」と笑って、なぜか了承してくれた。
 その妻の誕生日に浮気がバレて今は別居している。

  そして今日も。 「なんで今なんだよ。全く。」 熱さのせいもあってか、自分自身に腹が立つ。 

      皮膚が爛れ
      自らの身体から出る煙にむせ
      最悪な起床を迎えた
  なぜか、まだ聞こえる耳に、こんな私の最期に泣いてくれる妻の声が聞こえる。
   謝ろうと思うが、私の声は届かない。

   
  あぁ、本当につくづくタイミングが悪い

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