見出し画像

場違いな私たち

「うちら、だいぶ場違いだね」。私たちは顔を見合わせた。

千歳空港の荷物受取所では、私たちのと似た黒くて大きいバッグもいくつか流れてきたけど、よく見るとどれも楽器やゴルフケースだ。

空港とニセコスキー場を結ぶ直行シャトルは1ヶ月前に終わっていたから、私たちはJRのホームに向かった。ゴールデンウィークまで滑れますとサイトには書いてあったけど、5月の北海道の空気は想像以上に夏の陽気を含んでいて、もこもこのブーツに汗が滲んでいく。

「寄り道しちゃおっか、小樽で。」と一人が言った。


数時間後、私たちは店先の網で焼かれる貝を見つめていた。ウニとイクラが贅沢にのった海鮮丼を平らげたばかりだけど、ついさっき水槽から出された帆立とバターの香りに喉鼓が鳴る。

きれいにワックスがけした板の出番がないまま1日が終わりそうだけど、満腹の私たちには関係ない。たまには寄り道もいいなと思う。

予定外の出来事が起こるから、旅は楽しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?