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kiyofico
譲りあい
膝を怪我して病院に向かう途中の電車のこと。
平日の昼過ぎなので、都内ではあるがそこまで混んではいない。
中学生だろうか、5, 6人ほどの制服を着た女の子たちが乗り込んでくる。私の横が1人分空いており、そこを巡ってじゃんけんでも始めるのかと思いきや、互いに「どうぞ、どうぞ」「いいよ座って」という譲りあいの逆椅子取りゲームが勃発。誰も座ろうとしない。さては私の体臭が原因か、もしそうなら私が悪いが、彼女らは私の前に立ち群がっているのでそんな様子ではない。私が席を譲ってふた席分を作り、仲良く座ってもらおうかと考えたが、膝が許してくれない。
そうしているうちに、彼女らは他の立っている乗客にも声をかけ始めた。だが誰も座ろうとしない。私は1人ばつが悪かったが、なんとか気にしないふうを装い終始座っていた。
その後、最も積極的に人に席を譲っていた子がとうとう座った。彼女は座りながら、前に立つ友達と仲良く話している。
目的地に着いた私は駅を降りた。ちらっと電車の外から私が座っていた場所を見ると、他の子が座っていた。
昔からの日本の美徳とも言われる譲りあいの精神。そんな素晴らしい考え方が私に様々なもやもやを置いていく、おもしろい体験であった。
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