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息子を産んだ瞬間に私は負けた

4月から高校生活が始まった息子。「ランチはカフェテリアで食べたい」と言っていたけれど、昨日は夕方になって「そうだ。明日はお弁当の方が便利かも」と言われる。

私はスーパーに走り、とりあえずお弁当の素材となるであろうものをアレコレ購入(計画性はない)。レジで3000円を越える食材を見ながら、「いくらなんでも明日のお弁当用には買いすぎか」と思いながら帰宅。

その後、久しぶりに息子(15)とケンカをした。

私たち、彼が小学生の頃までは、私の友人に「中学生のカップルみたい」とあきれられるぐらい、低レベルで対等な口ゲンカをしていた。

彼は小学生にしては少しだけ論理的で、私はオトナにしてはかなり幼稚な感情むき出しで、2人で本気でやり合う。

この数年は空気が怪しくなると、息子から「しばらく部屋にこもっておいて。お互いストレスになるだけだから」「何か用事があればLINEで」と提案されて、ケンカを回避してきた。つまり、ケンカすら、してもらえなくなっていた。

昨日はそれぞれストレスが溜まっていたと思う。そして息子は、口ゲンカが始まると「僕は全部お見通しだよ」的に、「ママってさぁ、」と一番イヤなところを突いてくる。

私がそこに反応すると「ほら。女の人ってすぐ感情的になるから面倒くさいよね」とのたまう。

悔しい私は、「だったら明日のお弁当は作らない!」と最後のセリフを言いかけて、思い止まる。いくらなんでも親として幼稚過ぎるから、でもあるけれど、それだけではない。

彼は平気な顔で「いいよ。カフェテリアで食べる。もうずっと作らなくていいよ」と言うだろう。それが悔しい。いや、彼にお弁当を作る機会も残り少ないと思うと、寂しい。

だから結局、私はその幼稚な捨てゼリフを飲み込み、ふてくされて早めにベッドに入る。

今日の私は寝ながら眉間にシワを入れるに違いない。「だから美容にお金がかかるんだ!」と言ってやりたいけれど、「また被害者ヅラが始まった」と言われるのが目に見えている。
なぜか息子は、私が悲劇のヒロインごっこが好きなことを見抜いていて、すでに3回ほど「被害者ヅラ好きだよね」と言われている。

普段は穏やかなのに、その気になれば、ありったけの意地悪で、言葉を剣にしてくるあたり、私に似ている。
そしてガムシャラに剣を振り回す私に比べて、息子の剣は冷静で鋭い。

そして刺しておいて「本気じゃないから。こういう時は、こう言うと良いかなって言う、どこかで聞いたセリフを言っただけ。ディベートと同じで、本気で思っていることとは違うから。いちいち本気にしないで」と言う。

彼の言う「どこかで聞いたセリフ」には、私から盗んだものもあるはずだ。「女はめんどくさい」とか?

彼の言う通り、これは本気の戦いではなく、スポーツとしてのフェンシングであり、お互いのストレス発散を兼ねた「ケンカごっこ」だ。

だから翌朝、ベッドから這い出すと、息子は何事もなかったように平然としている。

それでも私だけ「ケンカごっこ」を引きずりモヤモヤが収まらず、悔しい。

なのに、「お弁当作ってよ?」に少しだけホッとしながら、黙って作る自分がいる。

(やっぱり昨晩買った食材のごく一部しか入らないね)

いかなごの釘煮入り弁当

こうしてネタにするのが私の反逆でもあるけれど、数年後に彼が偶然これを目にしたとて、いつものように「家族のプライバシーうんぬん」と言ってくるだろう。

こうして私は負けていく。

いや、彼を産んだ瞬間から、ずっと負けなんだと思う。

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