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写真漂流 - 天体写真(3)

shot with SONY DSC-RX0
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前回の星景写真からは離れるが,最近撮影した天体写真といえば,昨年11月の「ほぼ皆既月食」である.”ほぼ”というのは後わずかのところで皆既になったという,つまり天文学的に言うと食分が1.0にわずかに届かなかったということだ.

Date Taken: 2021-11-19 18:02:56, Exposure Time: 1 sec, FNumber: f/8, ISO Speed Ratings: ISO 640
(Canon EOS 7D + TAMRON SP 70-300mm F4-5.6 Di VC USD)

この写真を見て思うが,月食の写真なんて,フィルム時代は露出の調整にかなり苦しんだはずだ.適切な露光が叶わないために,上のような赤銅色の月面を捉えることなんて至難の業だった.

ところがデジタルになってからは,露光直後に捉えた像をチェックできる.さらにRAWで撮影しておきさえすれば極端な話,事後処理でなんとでもできるようになった.これだけを取り上げてみても,天体写真においてはもうフィルムになんか戻る気にもならない.

さらに撮影データを野帳に逐次記録する必要もなく,画像ファイル中のExifデータを開けば,事細かな要素まで参照することができる.

ほんともう,ものぐさ者の自分にとってはこれ以上の道具はありえない.欠点を上げるとすれば,調子に乗って撮りすぎてしまうことくらいだ.

さて上の月食の写真なんて,ほんの序の口.デジタル時代が到来して,天体写真は私が知る以上に大きく変わっている.天文雑誌を見てもその解説に大きくページを割いているが,昨日今日に写真を始めたビギナーでは,とてもついていけないほど専門的な内容が並んでいる.だから私自身,深く関わるのが恐ろしい(笑).

けれど考えてみれば,天体写真というものは「短時間で暗い星まで写せること」,「解像度を高めること」,「ノイズを減らすこと」,「視野の全面において恒星を点像として捉えること」を追い求めているのではないか.これは昔も今も変わらないと思う.それにはデジタル技術やソフトウェアだけではなく,最新の光学レンズの発展,つまりは望遠鏡の光学システムや写真レンズの高性能化も,大いに寄与している.

つまり我々写真家が日常手にしているカメラとレンズさえあれば,比較的容易に天体写真のスタートラインに立つことができるはずだ.現在の写真技術は高度になってきているのだから,ふだん使用しているカメラでも,かなりの写真が撮れる能力を秘めている.よってその力をいかに利用していくかが問われる.今あらためて写真家としての手腕,そして「眼」が必要とされるのではないだろうか.

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