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FIREとは「怠惰なのにプライドだけは高い愚か者」が落ちる地獄

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9割の日本人にとって「FIRE」は不可能

給料は上がらないのに増え続ける税・社会保険料。今の日本社会は就活でホワイト高給大企業に就職できなかった人が「FIRE(経済的自由を達成して早期リタイア)」できる未来なんてなかなか思い描けない状況だ。

しかし、実は少しの行動で全ての日本人は今すぐFIREできる。それは、「生活保護を受けること」だ。

一般的にFIREとは、「年間生活費の25倍の資産を年利4%で運用する」という4%ルールで語られることが多い。つまり、年間生活費が200万円の人は5000万円を、年間生活費が300万円の人は7500万円をまずは作らないといけないということだ。

これは逆に言えば、年間生活費を100万円に抑えられる人は、2500万円を用意すればFIREへの準備が完了したことになる。「年間生活費をどれだけ抑えられるか?」という点がFIREを達成できるかどうかを大きく左右するということだ。

次に、「運用資金はどれくらいで用意できるのか?」ということが問題になる。FIRE後は年利4%で運用して生活するという想定だから、運用資金を用意するまでの段階でもその年利で資産を増やしていくと仮定する。

金融庁の資産運用シミュレーションを使って計算すると、 毎月5万円ずつの積み立ては20年で約1800万円、毎月10万円ずつ積み立ては20年で約3600万円になる。仮にFIREに必要な運用資金を5000万円とすると、20年でFIREするためには毎月13万6千円を積み立て続ける必要がある。

もうわかると思うが、「普通の生活水準」を求めると9割以上の日本人には「FIRE」を達成することはできない。貯蓄0世帯が増え続ける今の日本で、毎月13万円超を積み立てられる人がどれだけいるだろうか?もちろん、毎月の積み立て額を減らせばその分だけ目標額に届く時間は伸びて、「早期」リタイアではなくなる。

ここで問題になるのが、「年間生活費を抑えればFIREできるのでは?」という点だ。確かに、年間生活費を100万円程度に抑えれば毎月7万円弱の積み立てで20年後にFIREできる。

しかし、よく考えてみてほしい。

20年も辛く苦しい節約生活をした後に手に入れる「自由な生活」が、年間生活費100万円で本当に満足できるだろうか?

「サイドFIRE」として多少働けばいいと考えるのもありだが、「20年もかけて手に入れる生活としては魅力に欠ける」というのが多くの人の本音だろう。

そして何より、「年間生活費100万円」というのは「生活保護以下の暮らし」なのだ。

多くの人のイメージよりも遥かに豊かな生活保護の暮らし

生活保護費の目安が分かるサイトがある。

生活保護の自動計算サイト

このサイトで計算すると、東京都で単身世帯が受給できる生活保護費は毎月約13万円だ。これは「生活扶助」と「住宅扶助」を組み合わせた額で、基本的にはこの額で生活していくことになる。

しかし、これとは別に各種手当や扶助があるのだ。

病気になれば自己負担0円で保険適用の治療を全て受けることができ、介護が必要になれば自己負担0円で介護扶助を受けることができる。また、NHK受信料や水道基本料と従量料金の一部など、各種免除が受けられる。もちろん税金・年金・健康保険料も免除だ。

さらに、11月から3月までは「冬季加算」として毎月3000弱(単身世帯)が支給され、年末には「期末一時扶助費」として約1.5万円(単身世帯)が支給される。もちろん、世帯人数が増えれば増えるほどこの額は増えていく。

そして、生活保護受給世帯は「住民税非課税世帯」であるため、近々給付される5万円給付のような「バラマキ」の対象に必ず入る。真面目に働いてるワーキングプアが1円も給付を受けられない一方で、働かずに生活保護を受けていると「臨時ボーナス」までもらえるというわけだ。

また、一般的に生活保護だと「働いても保護費が減るだけ」と言われているが、これは半分正解で半分間違いだ。1万5200円未満の収入は全額控除、すなわち「お小遣いとして生活保護費に上乗せできる」という制度になっていらからだ。

つまり、東京都の単身世帯の場合、13万円の保護費と1.5万円のお小遣いで、毎月15万円弱が実質的な生活保護の生活水準ということになる。ということは、生活保護の年間生活費は各種手当やちょっとのバイト代を含めて180万円程度ということだ。

長くなったが、ここでFIREの話に戻る。生活保護でさえ年180万円の生活費なのに、20年も節約と積み立て投資をして手に入れる「FIRE」が、年100万円や200万円の生活で本当に満足できるだろうか?どう考えても「馬鹿馬鹿しい」と感じてしまう話ではないだろうか?

繰り返すが、日本では貯蓄0円世帯が増え続けており、この傾向はそう簡単には変わらないと考えられる。昨今のニュースでも着実に増税や社会保障費負担の拡大が進められる気配があり、日本人の手取りが減り続けることは確定しているのだ。

ここまでの話は「平均的な日本人サラリーマンにFIREは無理」という話であり、総合商社や大手金融機関などの「勝ち組」企業に入れた人はこの限りではない。

しかし、逆に言えばそれ以外の全ての人に関係ある話だ。就活に負けた時点で、日本のサラリーマンにFIREなど到底無理なのだ。

もちろん、「年金の足しにする」とか「サイドFIRE」を目指すのであれば、多くの人にとって節約と積立投資を継続するメリットはある。あくまで「完全に働かない有閑生活をFIREで達成することはかなり厳しいよ」という話だ。

しかし、下らないプライドを捨てて生活保護を受給することができたら?

年間生活費180万円、すなわち4500万円の資金を用意して毎年4%で運用し続けるのと同じ、いや、各種免除を考慮するとそれ以上の水準の生活を「今すぐ」享受することができるのだ。

「生活保護だけは受けたくない」という、世にも下らないプライドを捨てるだけで、あなたはFIREできるのだ

「日本が経済的に苦しくなれば生活保護だって縮小される」という意見はもっともだが、日本が民主主義国家である限り生存権は約束され、生存権に基づく生活保護が無くなることはない。少なくとも、年金が破綻する可能性に比べれば生活保護が廃止される確率はずっと低いだろう。

ましてや、手取り20万円未満のワーキングプアがこれから味わう苦境に比べれば、生活保護は遥かにマシな生活であることは間違いない。

まとめると、「9割以上の日本人にはFIREは無理だが、諦めて生活保護になると人生めっちゃ楽だよ?」ということだ。

「FIRE」などという叶わない夢を信じ、遊ぶことを我慢してまでギリギリまで節約し、そうやって捻出した数万円程度を健気に積み立て続け、数十年後に手に入る「経済的自由」が"生活保護と同じレベルの生活"だなんて、冷静に考えて馬鹿らしいと思わないだろうか?

FIREとは、「働かないで暮らしたい」という怠惰な本音をもっているくせに、「生活保護だけは嫌だ」という分不相応なプライドに縛られた愚か者が落ちる地獄なのだ。

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