ねこが100年生きてくれたらいいのにのうた


 ねこが100年生きてくれたらいいのに
 わたしのねこがわたしよりずっと長く生きて 
 たくさんの宝物を集めて それにもすっかり飽きて そろそろ行こうかななんて気まぐれを起こした時に
 私が待つ天国にゆっくり尻尾を立てて来てくれたらいいのに

 ねこが100年生きてくれたらいいのに
 この子がもうじき死ぬ時を見なくちゃならないなんて
 この子ともうじき離れなくちゃいけないなんて
 この子が私を置いていくなんて
 心なんかいらないぐらい
 出会わなければよかったと思うぐらい
 悲しみで胸が張り裂けそうなのに
 この子はぷうぷう寝息を立てて幸せそうに眠っている

 ねこが100年生きてくれたらいいのに
 この子の寝顔を100年見守って
 この子に朝早くから100年起こされて
 いつかさよならを言ってやわらかく頭を撫でて 庭先に100年分のご飯を買い溜めておくから この子の幸せな明日を願いながら眠れるんだったらいいのに

 ねこが100年生きてくれたらいいのに
 おまえのいなくなってしまったあとの寂しい人生を どうやって一人で生きていけばいいんだろう 
 おまえがわたしに教えてくれたたくさんの愛を どうすればおまえの幸せに引き換えられるだろう
 おまえが100年生きる世界なら
 人間の孤独はみんなどこかに去って
 悲しみも少しは嵩を減らすだろう

 ねこが100年生きてくれたらいいのに
 おまえはきっとわたしのいない世界にも たくさんの幸せを蒔いて たくさんの愛を教えてやれるのに
 それなのにおまえは悲しみばかり置いていってしまうの

 ねこが100年生きてくれたらいいのに
 ねこが100年生きて
 ああ満足した とあくびひとつで虹の橋を渡って
 待ち焦がれるわたしを見つけに来てくれて
 それまでずっとずっと家族のままでいられたらいいのに

 ねこは100年生きられない
 ねこは人間に別れを教えて行ってしまう
 ねこは愛するものがいなくなっても続く愛の重さを人間に背負わせて
 ねこはあくびひとつで行ってしまう
 遠いところへひとりで行ってしまう
 人間のことなど振り返りもせず行ってしまう

 ねこは100年生きられない
 ねこへの愛は100年続いて
 わたしが灰になるとき
 わたしの魂にしっぽを絡ませ
 もう一度撫でてとねだるだろう

 100年後には
 ねこもひとも同じ一筋の風になって
 地球を撫でて聞くだろう
 寂しくはないか 寂しくはないか

20240205
なまむぎなまこ 拝

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