見出し画像

インド政府がPUBGモバイルをBAN。現在までの状況とふわっとした推測

9月2日、インド政府は「インドの安全を保障するため」としてPUBGモバイルを含む100以上の中国系アプリの利用禁止を発表しました。
9月4日にインドのアップルストア及びGooglePlayストアからPUBGモバイルが取り下げられ、続々とプレイ自体も出来なくなったという投稿が上がっています。ただし本日9月6日時点でもインド国内でプレイできている人はいるようで、利用している通信会社によって若干のタイムラグがあるのではと言われています。
いずれにせよ、近日中にインド国内ではPUBGモバイルがプレイできなくなることは間違いありません。

インドとPUBGモバイルとテンセントへの影響

全世界で大人気のスマホゲームPUBGモバイルですが、その中でもインドは最大のマーケットでした。一日のインドでのアクティブユーザーは5000万人を超えるとされ、先月(8月)だけのデータを見ても、全世界での新規ダウンロード数のうち約30%(150万ダウンロード)をインドが占めています。
一方で売上ベースで見ると世界全体の売上に対してインドでの売上は約1%程度とインドプレイヤーの課金額は低いようです。しかし今回のこのインド政府の発表後、発売元であるテンセントの株価は2%以上下落し、時価総額にして340億ドル(およそ3兆6000億円)を失ったと報道されています。

インド国内の反応は思ったより静か

PUBGモバイルコミュニティでのインド人というとかなり熱狂的なイメージがあるのですが、今回のBANに関しては予想に反して冷静だなというのが正直な感想です。SNS上の反応を見ていても、怒りのコメントやBAN解除を呼びかけるような投稿があまりないように感じます。
今年の7月に隣国パキスタンでPUBGモバイルが一時的にBANされた際は、芸能人やストリーマーによる抗議動画の投稿や複数のルートでBAN差し止め訴訟が起きるなど多くのアクションが見られました。より大きなコミュニティを持つインドでそういった動きがまったくないことにびっくりしています。

なぜあんなに熱狂的だったインド人が騒いでいないのか?気になったので考えてみた

推測1:TIKTOKの前例から諦めモード?
インド政府による中国系アプリの利用禁止措置は今回が最初ではありません。今年の6月末に第一弾として世界的に人気の動画アプリ「TIKTOK」を含む約50のアプリがBANされたことは大きな話題となりましたが、今日に至るまでこれらのアプリもインドでは利用できない状態が続いています。確実性のない話になりますが、「TIKTOKのBAN解除を裁判所に申し立てをしようとしても引き受けてくれる弁護士がインド国内にいない」というコメントもみかけました。TIKTOKの前例からも政府の措置が簡単に解除されないことが明らかなので受け入れるしかない、といった認識なのかもしれません。

推測2:反中感情?
このインドでの中国系アプリBANの流れは今年6月に起きたインドと中国の国境紛争に起因するというのは周知の見解かと思います。個人的な推測になりますが、「PUBGモバイルをプレイしたい」という気持ちより、反中感情の高まりから「中国への対抗策として自国政府の措置を支持する」というような気持ちの方が上回っているのかもしれません。

インドのプレイヤーはどうするのか

1.何とかしてPUBGモバイルをプレーする
前述の通りプレイヤー側はあまりBAN解除に積極的ではないようです。その代わり「VPNを使う」「KRJP版をDLしてみる」など別の方法でPUBGモバイルが遊べないかという試行錯誤がみられます。
※PUBGモバイルにはテンセントが発行するグローバル版と、韓国・日本のみでPUBG Corprationが発行するKRJP版の二種類が存在します。

2.類似の別ゲームに移行する
例えばPUBGモバイルと同じテンセント開発ですが規制を免れているCoDモバイル、また低スペックスマホでも遊べることで東南アジアで人気が出ているFree Fireへの移行が考えられます。またこのPUBGモバイルBANの流れを予想していたのか、規制発表直後の9月4日にインドの会社が独自に開発した「FAU-G」というバトルロイヤルゲームの発売が告知されました。

PUBGモバイル(テンセント)側はどうするのか

BAN発表の翌日にテンセントはアプリを引き続き利用できるようインド政府に働きかけたいとコメントしたとの情報があります。テンセントはこれまでにもBAN対策とみられるゲーム内でのセキュリティ規約表記の修正などを行ってきましたが、結果的には意味を成しませんでした。このような経緯と規制の流れから考えると、交渉の余地があるとするなら、”アプリを修正して規制のクリアする”のではなくインド国内の会社への経営譲渡を目指すのではないかなと思います。

InstagramのPUBGモバイルインド公式アカウントはBAN発表後も更新を続けていますが、最新の投稿はErangel2.0のティーザー動画と「Get ready for New Erangel! 」というなんとも言えないコメントで終わっています。インド人も楽しみにしていたはずの新マップErangel2.0。アップデートはもうすぐ(9月8日)ですが、その日までプレイできる人はいるのでしょうか。

競技シーンへの影響

今年に入ってTSMやFnaticなど世界大手のゲーミングチームがチームを起ち上げるなど、esportsの面からもインドのPUBGモバイルのマーケットの大きさは世界から注目されていました。つい先月行われた世界大会 PMWL EAST(PUBG Mobile World League)では全20チーム中7チームがインドからの出場だったことからも、PUBGモバイル競技シーンにおいてのインドの存在の大きさが伝わるかと思います。
今月もインドを含む南アジア諸国のプロリーグPMPL SAが予定されていましたし、インド国内では公式の大学リーグであるPMCC Indiaの開催が告知されたばかりでした。世界大会でのインドチームの活躍を楽しみにしてたんですがどうなってしまうんでしょうか。

今回のBANが一時的なものではなく国内でのプレイが不可能とみられる以上、ゲーミングチームのインド撤退&チーム解散も現実的になってきます。日本国内ではPUBGモバイルでの競技活動を専業とするプレイヤーはほぼいないのではないかと思いますが、インドでは既にプロとしての活動が生活していく上の収入源となっている選手がいます。今回のBANは選手生命どころか生活に関わる話になってくるのです。

インドだけではない

ストリーマーへの影響
インドのストリーマーに限らず、北米やアジアのストリーマーもおそらく多くのインドからの視聴者を獲得していたと思います。自身がゲームをプレイできない環境で、それでもそのゲームの配信を見続ける視聴者はどれだけいるでしょうか。

他国でもBANの可能性
近日、アメリカでもインドと同様に「安全保障上の懸念」を理由として中国製アプリを規制する動きが出てきています。それに追随し、先月日本でも中国製アプリの規制検討との報道がありました。もしかすると今回のインドでのPUBGモバイルのBANは他人事ではないのかもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?