「彼女が死のうと思ったのは」第3話 #創作大賞2023
父の書斎はいつも本で埋め尽くされていた。そこにはたくさんの作家の本が並んでいたけれど、私はとりわけ父の書いた小説を読むのが好きだった。父の作品はミステリばかりだったので、幼い頃は話の意味がよくわからなかったけれど、辞書やネットで言葉を調べたり、ノートに登場人物をまとめたりしながら読んでいくうちに、だんだん理解できるようになっていった。
父の小説を読みつくすと、他の作家が書いたミステリも読むようになった。ミステリにも色々な形があることをその時知った。中学に上がる頃には有名な作品はだいたい読んでしまったので、自分で書くようになっていた。
高校には文芸部があったので、即決で入部した。私以外は3年生が3人だけの小さい部活だったけど、みんな歓迎してくれた。先輩たちは純文学を好んで読んでいたが、私はミステリ一筋だったので、ミステリばかり書いていた。文化祭で部誌を出したり、読んだ作品について話したり、活動はとても楽しかった。
私が2年に上がる頃には、3年生は完全に引退して部員が1人だけになった。文化祭で自分の作品を見てくれたとのことで、ミステリ好きの男の子が1人入ってくれた。謎解きに強く、一見分かりづらいトリックもすぐに看破してしまう子だった。だけど、部を続ける条件は部員3名以上で、このままだと廃部だと告げられた。妹に頼み込むと、最初は渋っていたが、結局入部してくれた。
それからの1年は楽しい時間だった。最初はぎこちなかったけど、そのうち慣れてきたようで、2人とも活発に意見を飛ばしていた。1度目の文化祭では部誌も発刊できた。ほぼほぼ誰も見てくれなくて、妹は泣いていたけれど。
3年は受験で忙しくなるけれど、先輩たちみたいに参加できればいいなと切に思う。
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