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あかちゃんっていわないで

私はスイミングクラブで働いている。
子供たちの中には、レッスンを泣いて嫌がる子がいる。泣いて開始時間に遅れた彼は、その常連だ。

彼は、プールに来る時はいつもいつも泣いている。ぐずりはするけど、終わった時には毎回元気な子。

だから、今日も同じだと思った。普段通り、抱き抱えてプールへの階段を降りようとした時、彼は言った。

「あかちゃんっていわれるからじぶんであるく!」

お兄ちゃん扱いされたい年頃なのかな?
そう思って、「えらいね」と言いながら彼を地面に下ろした。

すると、途端に彼は顔を歪めてもっと激しく泣き始めた。「どうしたの?何が嫌なの?」そう聞くと、しゃくりあげながら彼は答えた。

「せんせいに、あかちゃんっていわれるかもしれないから、いきたくない」

それを聞いて、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

よく泣く彼は、先生に「泣いてるなんて赤ちゃんだね」と毎回言われていた。
その度に彼は、懸命に泣くのを我慢して「ぼく、あかちゃんじゃない?」と繰り返し先生に問うのだ。

彼はきっと、「あかちゃん=きちんとできなくて恥ずかしい」と捉えている。できてないと思われたくないから、泣くのを我慢する。

どうしたら伝わるだろうか。泣くのは悪くないと、泣いても頑張ろうとする君は素晴らしいのだと。

「あかちゃんっていわれるかもしれない」
そう泣く彼に、言葉をかける。

「泣いてたって、自分でここまで歩いてこれたよね。こわいのに頑張ってるよね。それってすっごくカッコいいよ!そんなあなたを赤ちゃんなんて言う人がいたら、わたしがやっつけてあげる。」

泣くことを恥ずかしいなんて、思ってほしくない。泣くぐらい辛いのに、それでも頑張る自分を褒められる子になってほしい。

今日も彼は、笑顔で帰って行った。
大きくなっても、そのまんま、大泣きしても前に進めるあなたでいてほしい。

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