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不親切な日本人

特急券の券売機で、明らかに困っている様子の女性がいた。海外から来た観光客のようだった。

横目で女性を見ながら、隣の券売機を私は操り、自分の切符を買った。私がスムーズに買えたのは、これまで何度も買ってきた経験があるから。初めて買ったときはやはり戸惑った。まして外国ならなおさらだろう。

お困りですか。

下手な英語で話しかけてみようか迷ったけれども、あいにく列車の発車時刻が迫っていた。英語が堪能だったら、それほど時間がかからず助けられるかもしれないけれど、意思疎通がうまくいかなければ、助けにならないばかりか私は列車を逃してしまう。

私は不親切なわけじゃない。
英語ができないから。
そして、時間がないから。
時間がないから、心に余裕がない。
時間がないのは、早く帰りたいから。
なぜならとっても疲れているから。
心も体も疲れきっているから。
だから心に余裕がない。
本当は、不親切なわけじゃないんです、私は。

心の中で言い訳を繰り返しながら、誰か「余裕があって親切な日本人」が彼女を助けてくれますようにと祈りながら、改札に向かって走った。


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