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「不妊様」の独り言

実は不妊治療専門のクリニックに通院したことがあります。
幸い通院半年ほどで赤ちゃんを授かることができたのですが、1年ほど夫婦で妊活をし、赤ちゃんを待ち続けていました。

すごく繊細なテーマだと思いますが、独り言のつもりで自分の不妊治療中に思っていたことを書いてみたいと思います。
(ちょっとキツい表現をしてしまうかもしれません。不快に思われる方はブラウザバックしてください……)

不妊様?妊婦様?

不妊治療に関するSNS投稿を見ていると、「不妊様」という言葉を目にすることがあります。
おそらく、私も「不妊様」でした……

「不妊様」とは、妊活中の女性が長く子宝に恵まれず、他の家庭を羨んだり妬んでしまったり、辛い気持ちに囚われて周囲に気を遣わせるような言動をしてしまう状態のことのようです。
少し皮肉めいた表現なので、特定の相手を指して使うべき言葉ではありません。

一方「妊婦様」という言葉もあります。
妊娠中の女性が、妊娠していることから周囲に気を遣わせる言動をしたり、なりふり構わずマタニティハイな状態になることを指すようです。

現在妊娠中の私は本当に毎日幸せを感じていますし、日々無事に過ごせることに感謝の気持ちでいっぱいです。
でも、辛く苦しかった不妊中の日々を忘れることはできません。
今もフラッシュバックして、胸がつっかえるような気持ちになります。
それと同時に、いわゆる「妊婦様」になってしまわないように、友人の多くには妊娠したことを話していません。

これから先は、「不妊様」全開のダークな内容になります。
今後の自分への戒めのためのメモでもあります。
もし、周囲に不妊治療中の方がいらっしゃって、接し方が難しいと感じられている方がいらっしゃったら、参考にしてくださると嬉しいです。
(あくまで私の経験の中の、個人の見解ですのでご了承ください……)

不妊治療中の女性に対するNGワード

⒈まだ若いんだから大丈夫でしょ
なんの根拠もない、言葉だけの励ましは余計辛い気持ちを刺激します。
「若いのに授かれない私って……」
「◯◯さんはもう授かってるのに、私はまだ授かれない……」
など、他の不安を煽ります。

不妊にはいろんな原因があります。
何かしらの病気や体質が起因している場合、年齢関係なく妊娠が難しい方も中にはいらっしゃいます。
不妊治療中はただでさえ繊細になっているので、根拠のない励ましは逆効果になる可能性があると理解していただきたいです。

⒉子育ての方が大変だよ
それと同じように、赤ちゃんを授かれない辛さはあなたにもわからないはずです。
肉体的な痛み、通院などの時間、治療費、先が見えない不安、友人から届くキラキラした子育て報告……
常に全てに追い込まれているような気分になるのです。

子を持たぬ私には子育ての大変さはもちろん分かりません。
でも、その大変さすら私が欲しくてたまらない幸せなんです。
少し想像してくれたら、その言葉の鋭さが理解できるのではないかと思います。

⒊大丈夫?
「大丈夫?」って聞かれた時に「大丈夫じゃない」って素直に言える人、世の中にそんなに多くないのではないのでしょうか。
不妊治療に関わらず、どんなシチュエーションでも言えることなんじゃないかと思います。
本当に辛く、苦しい人は、「大丈夫じゃない」っていうことすらできな苦なってしまいます。
周りに相談することもできなくなってしまうし、身動きが取れなくなってしまう。

⒋2人目〜妊娠報告
これは正直、妬みです。

自分で自分の気持ちをコントロールできなくなってしまうんです。
「なんで私は」って思いで心を支配されてしまう。
マラソン周回遅れのような、頑張っているのに自分だけ報われない、というようなドス黒い嫌な気持ちに包まれる。

本当は心から祝福してあげたいんです。
離れた場所に暮らしている私にLINEで連絡をくれるのって、私のことを大切な友達だと思っていてくれてるからだし。
ありがたいし、これからも大切にしたい友達なんです。

でもそれすらもできない自分の心の醜さを自覚するのもショックで。
LINEの返信で、絞り出して出てきた「おめでとう」すらも、何度もバックスペースで消してを繰り返し、ようやく送信ボタンを押せる程度。
ほんと、醜いですよね。

不妊治療中の女性に対するNGアクション

⒈LINEのアイコンが子供
TwitterやInstagramなど、他のSNSならまだ自衛できるのでいいのですが、LINEは主要な連絡ツールなのでアンインストールするわけにもいかず。
友人と連絡するたび、笑顔でいっぱいの赤ちゃんの写真を目にしなければいけない。
気にしないように、気にしないように……と思っても、アイコンが目に入った瞬間から自分の現状を自覚させられてしまうのです。

これ、正直本当にきついです……

⒉Instagramのストーリー、投稿で育児日記
季節のイベントや記念日などの投稿は理解できるんです。
インフルエンサーとしてコンテンツ配信している人も、理解できるんです。
でも、「パパに抱っこしてもらって眠っちゃいました!」とか、「しゃっくりが止まらない姿が可愛くて動画を撮っちゃいました!」とか、些細な育児日記をこまめに投稿する友人のアカウントはミュートしちゃってます。

「かわいいなぁ」って思って、心から いいね を押せる心の余裕ができるまで……いつになるだろう……

⒊聞かれてないのに妊活・子育てのアドバイス
未経験の私に対して、親切心でアドバイスしてくれているんだとは思います。
ただ、全然素直に聞き入れられないんですよね……
まるで成功体験を聞かされているようで、私が失敗続きの劣等生なんだと言い聞かされているようで、ひどく惨めな気持ちになってしまいます。
「そんなこととうの昔にしてるわ!!」って逆ギレしたくなっちゃったり……

不妊治療患者の気持ち

以前はなんてことなかったような一言や光景すらも、尖ったナイフのように心に突き刺さってくる。
子育てに奮闘する人、お腹で赤ちゃんを育んでいる女性、笑顔で走り回る子供たち、赤ちゃんの泣き声、マタニティマーク。
全てが自分の神経に入り込んできて、心の底から不安や惨めさ、辛さを湧き上がらせてくる。

いつからこんな自分になってしまったんだろう。
こんな未来は思い描いてなかったのに。
なんであの子みたいに上手くいかないんだろう。

こんな人生に意味はあるのか?
私に女性として、人間として生きる価値はあるのか?

全ては私の中の問題なんです。
気づいた時には、少しずつ周囲の見え方が変わっていって、この世の全てが自分を否定しているような気分になってくる。
他の人が普通に得ている幸せ、ただそれを手に入れたいだけなのに、なぜこんなに私には遠いのか。

今でさえ、お腹の中で育っている命が奇跡のように感じられるし、いつか突然消えてしまうんじゃないかという不安に襲われることもあります。

「不妊様」との接し方

結婚したカップルの全てが、必ずしも子供を設けることを望んでいるわけではないと思います。
また、望んでいたとしてもさまざまな事情で授かることができなかったり、諦めている可能性もあります。

全ての家族が、自分自身と同じ道を歩もうとしているわけではない。
ぜひ、自分自身の「当たり前」の状態を突きつけることをせずに、いろんな可能性を想像していただきたいです。
あなたの「当たり前」は、時に相手にとってほしくても手の届かないとても尊いものかもしれないし、目にしたくない現実かもしれないのだから。

近年の女性は特に、人生をステップを踏むように考える部分があると思います。
就職、恋愛、結婚、自宅を購入、出産、子育て……
1つでも周囲より足りないものがあると、それだけで自分の人生の全てが無価値のように思えたりします。
年齢を重ねると、よりそれが鮮明に見えてくるのです。

もちろん、当事者も自己防衛をする必要があります。
でも、元々の交友関係の中で交わされていた今までの会話が、これまでと全く違った影響力を持ってしまうことも事実なんです。

ぜひ、あなたの大切な友人の心を守るためにも、今まで以上にいろんな可能性を考えて接していただきたいです。
「実は不妊治療をしてるんだ」
その一言を伝えたあなたは、きっと相手にとっても大切な友人であるはずだから。

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