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いま、どうしていますか。元気ですか。
大学時代、とても多くの時間を共有する友人がいた。同じ学部で同じ講義を取り、一緒にお昼を食べ、空き時間には学食や近所の本屋で暇つぶしをした。ドライブもしたし、飲みにも行った。卒研で配属された研究室も同じだった。当時は携帯やメールというインフラの黎明期だったから、キャンパスで会う時間だけが繋がりのほぼ全てだった。
いわゆる恋人の関係だったことは、最後まで無い。当時はお互いにパートナーがいたから。セックスはおろか、キスもない。手を繋いだことは・・・どうだったかな。
◇
お互いに卒業し居住地も離れてからは会うこともなく、年数回のメールと年賀状程度に遠ざかっていたが、あるとき、結婚披露宴への招待状が届いた。学友カテゴリかなと想像したが、80人ほどいた会場での私の知り合いは、新婦だけだった。
話し相手のいない円卓でただ所在なく、料理とメニューと新婦新郎を見ているだけの私。新婦の友人が、新婦のエピソードをプレゼンする。うん、その話は聞いたことあるぞ、とか思いながら微笑んで、肉を頬張った。宴の終わり、入り口で見送る新婦は「心細い思いさせてごめんね」と気遣ってくれたが、謝ることじゃない。むしろ、カテゴリのひとりじゃない招待をしてくれたことが、嬉しかった。おめでとう。幸せにね。
◇
以降は次第にメールのやり取りも減り、年賀状だけが唯一の繋がりになった。そしてある年のはじまり、旧姓に戻っていた単名の賀状に目を落とす。そこには、タイムズスクエアを背景にした彼女のワンショット自撮りと、「夏に行ったニューヨーク、楽しかった!」の文字だけ。事情をうかがうメールなどは、しない。そのままハガキホルダーに綴じ込み、つけっぱなしのテレビに視線を戻した。
でも、番組の内容は全く入ってこなくて、いまどこでどうしているのかを、気にしている。
そのお金で、美味しい珈琲をいただきます。 ありがとうございます。