Variety誌 "BTS’ ‘Butter’: The Origin Story of the Band’s Summer Smash (EXCLUSIVE)" を和訳してみました。

原文: Shirley Halperin: ”BTS’ ‘Butter’: The Origin Story of the Band’s Summer Smash (EXCLUSIVE)", Variety, Jun 3, 2021 7:02am PT

BTSの「Butter」:このバンドの夏のヒット曲 誕生秘話 (独占記事)

ヒット曲にはよくあることだが、BTSの「Butter」はシンプルなフックから始まった。ジェナ・アンドリューズは、ベテランのソングライター兼プロデューサー兼出版社兼A&R(訳者注:Artist and Repertoireの省略形、アーティストの発掘と楽曲の制作。出所)担当の重役であり、業界のすご腕でもある。この曲をコロンビア・レコードの会長であるロン・ペリーに聴かせたところ、ペリーはすぐにマイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」を思い浮かべ、そして大ヒット曲が誕生した。

5月21日にリリースされ、SpotifyやYouTubeをはじめとする音楽リスナーが利用するあらゆるプラットフォームで記録的なヒットを記録し、全米No.1ソングとなった「Butter」が誕生するまでの道のりは長かったと、作曲者やプロデューサーがVariety誌の独占インタビューで語っている。

以下、登場人物。アンドリュースは、カナダのヒットメーカー(ベニーの「Supalonely」等)で、Sony/ATV系列のTwentySeven Music Publishingの共同責任者であり、ノア・サイラスや24kGoldnの所属するRECORDSでA&Rコンサルタントを務めている。また彼女は「Dynamite」のボーカル制作も担当している。ペリーは、SONGS Publishing(ザ・ウィークエンド、ロードが所属)の株式を売却した後、2018年にソニー・ミュージックのレーベルに参加。クリエイティブチームはTwentySeven Musicと契約しているソングライター・プロデューサーのロブ・グリマルディと共同作曲者のアレックス・ビロウィッツ、そしてスティーブン・カークから構成されている。(BTSのメンバーであるRMも作詞・作曲にクレジットされている。)

また、エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントのピーター・グレイが率いるコロンビアのプロモーション部門が、12台のツアーバスを走らせ、全米の地上波および衛星ラジオの意思決定権者に「Butter」を届け、番組制作者が初めて「Butter」を聴くことができたことも目を引く。発売と同時に、すべてのトップ40局が「Butter」をローテーションに加えたのも不思議ではない。そんなことは最近の歴史では過去に2回しか起きていない。2018年にテイラー・スウィフトがパニック!アット・ザ・ディスコのブレンドン・ウリーをフィーチャーした「ME!」、2019年のエド・シーランとジャスティン・ビーバーによる「I Don’t Care」である(ただし、この2曲はいずれもデュエットやフィーチャーであり、BTSの場合は単独かつインターナショナルなものであったことに注目したい)。

もちろん、J-Hope、Jimin、Jin、Jungkook、RM、Suga、Vのメンバーで構成されたグループにとっては、ここはお馴染みの領域である。2020年のシングル「Dynamite」はその年の最大のヒット曲のひとつで、アルファデータ社によると現在までに280万曲を記録している。次回作について「プレッシャーはない」と「Butter」のクリエイターたちは鼻で笑った。

まず初めに、「Butter」はいつ誕生したのでしょうか?

ロン・ペリー:ジェナがあのフックを弾いてくれたときです。マイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」とダフト・パンクを組み合わせたような曲をイメージしていました。

ジェナ・アンドリューズ:コーラスとメロディは、基本的に最初から存在していたものです。隔離期間中、毎日のようにアレックスが来て一緒に作曲していましたし、ロブがスティーブンと一緒に作ったフック付きの曲を送ってくれました。そして、スティーブン・カークが書いたメロディを聴いて、「これはすごい 」と思いました。そして、それを魔法の耳を持つロンに聞かせたところ…

ロン・ペリー:当時は違う歌詞だったんです。

ジェナ・アンドリューズ: "Smooth like butter, like a criminal undercover"(バターのようになめらかに、正体を隠した悪党のように)という歌詞は、ロンの言葉をそっくりそのまま使用しました。それで、これがコンセプトだということになって、そこからすべてが始まったんです。

歌詞はどのようにして生まれたのですか?

ロン・ペリー:歌詞やメロディーのバージョンを変えたり、サビの歌詞を変えたり、トラックを変えたりするのに1か月はかかったと思います。この曲には何百ものバージョンがあります。

アレックス・ビロウィッツ:「Butter」の歌詞を編集をするのに1か月半かかったと言おうとしていたところです。驚異的な量のリライトで、誰も知らなかったような方法で、全員が最大限に力を発揮しました。でも、私たちがどこかに着地するたびに、「それは違う」と言う人が一人はいましたね。

ジェナ・アンドリューズ:私たちは、グループのために最善のことをしているかどうか、本当に掘り下げて確認したかったのです。それは私たちにとって重要なことでしたので、6週間かけて一つ一つの歌詞を目の細かい歯ブラシで磨くようにチェックし、毎日書き直しました。

ロブ・グリマルディ: 1か月半かけてあるポイントにたどり着き、さらに1か月半かけて出来あがったものを修正したというのは、おそらくクレイジーに聞こえるでしょう。でも、BTSはみんなそれぞれ個性的で、自分のやり方をしっかりと貫いていて、だからこそファンも彼らに夢中になっているのです。本当に文化的なムーブブメント全体のために書いているのです。

アレックス・ビロウィッツ:彼らと一緒に、そして彼らのために仕事ができることはとても光栄なことですし、私たちはどんなステップも軽視していませんでした。だからこそ、うまくいかせるために何度も修正したり、同じことを何度も繰り返したりしたのです。

ロン・ペリー:「Dynamite」があまりにも優れていて偉大で、自分たちのハードルがとても高いことはわかっていましたから、「Butter」のすべての部分が完璧でなければなりませんでした。メンバーたちがカルチャーにとってどのような意味を持っているのか、ARMYがどれほど影響力を持っているのか、そして、もしこれがうまくいけば、どれほど大きなものになるのかを知っていました。

「Butter」はサマーバップの素質があると考えていたのですか?

ロブ・グリマルディ:ここ数年のポピュラーミュージックの傾向を見てみると、本当に悲しい曲が多いですよね。私自身のことを言えば、ニューヨークでパンデミックに見舞われ、寒くて、スタジオではずっとマスクをしていたので、ただ自分がかわいそうで寂しくて、寂しくて、寂しくて、寂しくて、というような悲しい曲を書くことにかなり疲れていました。だから、この曲の制作は私にとってセラピーのようなものでした。夏の気分と言っていいのかどうかわかりませんが、世界が最高の意味であったことを覚えているような気分になりました。

ロン・ペリー:COVIDの後ということで、彼らは本当に楽しい曲を求めていたと思います―それが彼らの目標でした。そして私たちは、彼らのようにスワッグな(イケている)もの、つまりそれにマッチした曲を作りたかったのです。また、7人のメンバーがそれぞれが輝き、見せ場を作れるような曲にしたかったのです。

アッシャーやマイケル・ジャクソンへの言及もありますが、それらはどのように組み込まれていますか?

ジェナ・アンドリューズ:私たちは、90年代後半の曲を参考として取り入れることがクールだと考えました。Usher、rock with me、I look in the mirror、マイケル・ジャクソンの「マン・イン・ザ・ミラー」など、その時代をオマージュした歌詞です。

ロン・ペリー:そして私はダフト・パンクのトークボックスを入れたかった。私は彼らにずっと夢中で、いつも大好きでしたから。

ラップについては?私の理解では、ラップを入れるのはRMのアイデアでした。どのようにアプローチしたのですか?

アレックス・ビロウィッツ:一番のポイントは、このグループのことをよく調べて、全体としての強みだけでなく、個人としての強みも確認して、それぞれのメンバーに輝きを与えられるようにしたことです。彼らの音楽を何曲も聴いているうちに、何人かのメンバーが非常に優れたラッパーであることがわかったのを覚えています。曲の中では、全員が参加し、全員が交代することでエネルギーが爆発するような、まさにヒップホップに戻ったような瞬間がありました。これは、ラップを多用するメンバーを参加させるのに最適な方法だったと思います。最初にデモを作ったとき、BTSがこの曲をとても気に入ってくれて、最後にも入れたいと言ってくれました。その結果、彼らにはより多くの見せ場を作ることができたので、これは素晴らしいアイデアでした。このようにクールな共同作業ができました。

アメリカとソウルの時差はどうやって解消したのですか?どのようなプロセスだったのでしょうか?

ロン・ペリー:ずっと修正を繰り返していたので、歌詞の変更やアイデアに関しては、4か月間以上でおそらく数百通のメッセージが届いています。

スティーブン・カーク:BTSの問題点は、彼らの曲を聴くと、彼らがやっていることすべてが好きになってしまうことです。そのため、いい感じのテイクを手に入れても、「念のため別のも送ってくれ」と言ってしまい、そのテイクの方が気に入ってしまい、どちらがベストなテイクかを考えてしまうのです。幸運なことに、プロ中のプロのバンドと一緒に仕事ができたので、音楽業界では簡単なことは何もありませんが、私たちがこれまでにやってきた多くの仕事よりも簡単でした。また、最高のものを選び、またそれをどこに置くかを選ぶことも難しかったです。特に、一日中取り組んでいたものを一晩で仕上げるのは大変なプロセスでした。

ジェナ・アンドリューズ:WhatsAppでの作業が多かったです。基本的には毎日午前5時まで起きていて、5時から8時まで仕事をし、スタジオでは各メンバーが20分ずつ仕事をします。彼らはプロですからね。…ボイスノートで提案をやりとりしていました。

ロブ・グリマルディ:ジェナは5時に彼らと一緒に作業します。翌朝、10時か11時に彼女に電話すると、1時か2時にならないと折り返しの電話をしてこないんです。つまり、彼女は一晩中起きていたことになります。私は日の出まで彼らと一緒に作業していました。

ロン・ペリー:それからの私の生活は、昼間は(コロンビアで)仕事をして、夜はスタジオにいるというものでした。

英語のボーカルを録音するという点では、進歩していると感じますか?

ジェナ・アンドリューズ:そうですね。彼らは素晴らしいシンガーだと思います。「Dynamite」、「Savage Love」、そして今回の「Butter」と、この1年で進歩していると思います。

この曲のどこがリスナーとすぐに結びつくのでしょうか?

ロン・ペリー:トラックが非常に素晴らしい。歌詞も非常に素晴らしい。すべてのメロディーが素晴らしい。ラップの部分も素晴らしい。この曲のすべての部分は、何度も何度も考え抜かれています。私たちが費やした時間はすべてこの曲に表れていて、お互いに意見が合わなかったことはないと思います。最初にミックスが戻ってきたとき、みんなで飛び上がって喜んだのを覚えています。これ以上ないほど誇りに思います。何が起こるかわからないし、発売初日にSpotifyの全世界でのストリーミング数が2,090万回というような記録を更新するとは知らなかったけど、素晴らしい作品だということはわかっていました。

ジェナ・アンドリューズ:今の時代は、バターの絵文字のように、視覚的な歌詞―人々がつかめるような歌詞も重要だと思います。私は今、そのことを念頭に置いて曲作りをしています―何か共鳴できるものを。

グラミー賞受賞歴のあるミキサー、セルバン・ゲネアが「Butter」を担当しましたが、どのような指示があったのでしょうか。

ロブ・グリマルディ:彼には事前に、サウンド面でのイメージを簡単に話しました。ラジオで放送できるようにすることと、ミキサーの仕事をすることの両方をしなければなりませんでした。しかし、この音源には耳を楽しませてくれるものがたくさんあり、ボーカル・プロダクションにしても、ジョングクの歌にしても―その瞬間が何であれ、彼の仕事は、それらを本当にポップに輝かせることと、一貫したエネルギーと底力、深みを与えることでした。彼はそれをやり遂げました。

ロン・ペリー:ロブとスティーブンのプレミックスもとても良かったですが、その後、彼はファイヤー・ミックスで戻ってきましたね。

アレックス・ビロウィッツ:セルバンのミックスは、ケーキの上のアイシングのようでした。

スティーブン・カーク:彼らは皆、素晴らしいシンガーですが、それぞれがとてもユニークなトーンと異なる雰囲気を持っています。そのため、ミックスの際には、それぞれのサウンドやトーンの中庸を見つけつつ、ARMYが「これはジョングク、これはジミン、これはシュガ、これはRM」と認識できるように、接着剤のようにそれらをまとめたいのです。

「Butter」は全米のトップ40局に追加されましたが、これはどのようにして実現したのですか?

ロン・ペリー:この曲は、基本的にすべての人に一度は聴いてもらえたので、これは特別なものになると思っていました。

ピーター・グレイ:12台のツアーバスを借りて、全米のスタッフとフィールドスタッフがポップス、ホットAC、リズムなどのラジオフォーマットの垣根を乗り越えて100以上のラジオ局を訪れました。ことの発端は音楽のセキュリティでした。電話やズームで何百回も曲を再生して、それが漏えいしないことを期待するのは難しいですよね。そのため、基本的な要素として、どうやって音楽を保護するかということがありました。私たちはこの方法が非常に効率的で効果的、そして最も重要なことには、非常に安全であることを発見しました。

COVIDでは、どのようにして安全性を確保したのですか?

ピーター・グレイ:基本的に、バスは安全です。飛行機やホテルで見かけるようなドアノブやエレベーターのボタンなど、パンデミックの際に避けたいものはありません。バスはあなたの家に来て、あなたをピックアップして、あなたの行先へと出発します。食料の入った冷蔵庫、ベッド、バスルームがあり、顧客に会いに行く間、何日もバスの中で生活することになります。自分もマスクをして、相手もマスクをして、運転手が降りれば、世界的な大物バンドの音楽を流してもどこにも漏れる心配のない、プライベートで安全なミーティングスペースができるのです。だから、8月に「Dynamite」の準備をしていたときから、安全性とセキュリティを第一に考えていました。

上司を説得する必要があったのでしょうか?

ピーター・グレイ:まったくありません。8月に初めてこの話をしたとき、ロンはチームの安全性と音楽のセキュリティの重要性を理解していたので、気に入ってくれました。ですから、ロンからは非常に早い段階で「イエス」と言われました。彼はこのアイデアを気に入ってくれました。大胆で野心的なアイデアでしたが、当時は達成しようとしていたことには大いに意味がありました。ツアーバスで誰かの家に行くと、その人の注意を引くことができます。そのことがもたらした結果は、普通では起こりえないことでしたが、それだけでなく、完璧でした。私たちはその結果にとても感激しました。

この曲が発売されたとき、みんなはYouTubeの再生回数やSpotifyのストリームを夢中で見ていましたか?その初日は、あなたにとってどんなものでしたか?

アレックス・ビロウィッツ:私の人生で最高の24時間でした。

ジェナ・アンドリューズ:少しクリスマスに似ていましたね。あるいは、大晦日にボールが落ちるような。

ピーター・グレイ:賭け金が高く、期待も大きかったですね。ロンはつねに完璧で卓越したものを目指しており、180のラジオ局で完璧にローンチできたことに、本当に興奮し、感謝しています。これはチーム全員で祝うべきことです。

ロブ・グリマルディ:こんなに長い時間をかけて15,000回も聴いた曲の場合、私たちがいつも忘れてしまうのは、その喜びをみんなで分かち合えることがどれほどクールなことかということです。だから、感謝の気持ちと同時に、安堵の瞬間でもありました。

スティーブン・カーク:それから、一言いいですか?ロン、きみにも言ったことがあるが、これは公に言うべきことだと思う。レコードの裏側を理解している人、つまりプロモーションやレコードを世界に届けるために何が必要かを理解している人と、同時に毎晩スタジオに通っている人を見るのは素晴らしいことです。

ロン・ペリー:つまり、これはチームワークの賜物なのです。みんなが何時間もかけて、何度も修正してくれて、本当に大変でした。クリエイティブな能力と貢献をしてくれたみんなに感謝しています―ジェナの歌詞から始まり、最初のフック、あのトラック、すべてが非現実的でした。とても良い経験になりました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?