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帝王切開後に髄液漏れで苦しんだ話

2021年4月に第一子となる男の子を出産しました。予定帝王切開だったのでいろいろ調べて手術に臨んだのですが、術後、立ち上がれないほどの頭痛が数日続き、心細い日々を送りました。ネットで調べてもなかなか情報が出て来ず、本当に辛かったので、記事にまとめておきたいと思います。

麻酔が入らず1時間苦しむ。

私の場合、手術で一番大変だったのが麻酔でした。事前に麻酔は腰椎麻酔と硬膜外麻酔の併用であるという説明を受け、助産師さんには「帝王切開は麻酔を打つところが一番大変なのよ~」と言われていました。が、本当に麻酔が入りませんでした。

助産師さんに力ずくで抱きかかえられて一生懸命背中を丸めるも、少なくとも5回は何かが痛みを伴いながら背骨近辺を流れていく感覚がありました。背後からは、

「入るんだけど何かにあたってその先に進まないんです」

「椎間板が狭いねえ~」

「背骨が曲がってるのかなぁ」

などの会話が聞こえ、このまま麻酔が入らなかったらどうなるんだろうと不安になりました。14時45分頃に手術室に入ってから、最終的に麻酔が入ったのが15時40分。手術前に「30分から1時間くらいで終わるらしいよ~」と電話で伝えた夫は本当に心配していたそうです。申し訳なかったです。

でも事前に聞いていた通り、麻酔が入ってしまえばあとの手術は今までの苦しみは何だったんだというくらいあっという間に終わり、16時45分には回復室へと移されました。

手術翌日は特に問題がなく経過。

手術当日~翌日は一般的な経過で、手動の痛み止め麻酔をはじめとするいろいろな管は翌日の朝8時には抜け、お昼にコーンスープのような流動食を食べたあと、自室に歩いて戻りました。自分の足で立つのは怖かったですが、点滴の棒を杖代わりにすればなんとかなり、一人でトイレに行くこともできました。

ベッドから起き上がるとなんだか頭が痛い気がしましたが、ずっと横になっていたから貧血気味なのだろうと思っていました。

私がお世話になった病院は母子別室だったので、この日は授乳室まで歩いていって赤ちゃんを抱っこしておしまい。あとはベッドに横になってのんびり過ごし、翌日からの授乳に備えて体を休めました。

朝食中にものすごい激痛が走る。

そして翌日。神経が高ぶっているのかあまりよく寝られませんでした。朝4時にトイレに行った時、頭と首の後ろのところがすごく痛いことに気づきました。すぐにベッドに戻って横になり、ベッドの中でもぞもぞしていました。

そして、8時の朝食。

ベッドから起き上がり、椅子に座ってご飯を食べようとしましたが、頭と首が痛くて痛くて起き上がっていることができません。痛み止めを飲めばましになるかも、という期待をこめてロキソニンを飲み、ベッドに横になって休みました。

1時間くらいたてば薬も効いてくるだろうと思っていたのですが、1時間後いざ起き上がってみるけれど再び耐え難い激痛。慌ててベッドに戻ろうとしたら机の上に置いておいたペットボトルにぶつかり、倒れかけたペットボトルをつかもうとしたら朝食の時に食べきれなかったお粥が入ったお椀をひっくり返し、てんやわんや。

片付けようにもあまりに頭と首が痛くて起き上がれないし、一体この痛みが何なのかわからないし、半泣きになりながらナースコールを押して、自分の現状を伝えました。

すぐに看護師さんと主治医の先生が来てくれ、おそらく麻酔を注射した時に髄液が漏れたことが原因で脳が下に下がり、頭痛が起こっているのだろう、と教えてくれました。とにかく水分をたくさんとること、カフェインも効くのでお茶等を飲むようにと言われ、今日から始まる予定だった授乳はやめて、部屋でゆっくり休みましょう、ということになりました。

赤ちゃんに会いたくても、授乳室まで歩いていくことができない。

初めての出産で、今後の赤ちゃんのお世話がどんな風に進んでいくのかもわからない。

母乳育児にこだわりはなかったものの、産後すぐに授乳が始められないことで本当は出るはずの母乳が出なくなったりするのではないかという不安と、何より赤ちゃんに会えない悲しさでさめざめ泣きました。

自分の体の様子を観察&記録。

でも、落ち込んでいても仕方ありません。「明日は絶対赤ちゃんに会いに行く!」ということを励みに、休んだり起き上がったりしながら自分の体の状態を観察しました。特に、起き上がるときは必ず何時何分に起き上がって何時何分に限界を迎えたかをチェックし、最大で何分起き上がっていられるのか、起き上がっている時間を少しずつ延ばすことはできるのか試してみました。その結果、

・だいたい10分~15分くらい起き上がっていると限界を迎えること。

・痛くなってもベッドに横になってしばらくすれば痛くなくなること。

・横にさえなっていれば元気なこと。

が分かりました。これ以外にも、どのくらい休めば回復するのか、ベッドの角度は何度くらいまで耐えられるのかなど、いろいろ試して記録をしておきました。

ちなみに、これらの記録にはエバーノートを使って夫と共有しました。エバーノートは入院前から夫との情報共有に活用していましたが、今回コロナ禍で一切面会ができなかったため、自分の体調の詳細を伝える上でエバーノートは便利でした。この記事も、当時の記録を振り返りながら書いています。

看護師さんのはからいで叶った授乳。

前日「今日1日しっかり休んで明日は絶対赤ちゃんに会いに行く!!」と意気込んでいましたが、術後3日目になっても頭痛は一向に改善されず、相変わらず起き上がって行動できるのは最大20分。再び起き上がるためにはだいたい1時間はベッドで横になって休む必要がありました。

でも、前日から自分の体の状況をよく観察していたので、9時に担当の看護師さんが来てくれた時にはうまく説明をすることができました。そのおかげか、授乳時のみ母子同室にしている部屋に移動させてくれました。私がお世話になっていた病院は母子別室が基本だったのですが、コロナ禍ということもあり、授乳室の密を避けるため、一時的に「授乳時のみ母子同室」という部屋もつくっていたのです。

母子別室の場合は、お母さんが授乳室まで行って赤ちゃんを受け取り、そこで授乳をしますが、授乳時のみ母子同室の場合は、お母さんが授乳室に赤ちゃんを迎えに行き、自分の部屋に連れて来てお世話をし、また授乳室に返しに行く、というシステムになっていました。

私は起き上がっていられるのが15分~20分だったので、授乳室に行って帰ってくる時間がタイムロスにしかなりません。でも、ベッドの上でお世話だけ、というのであればできます。看護師さんが赤ちゃんをベッドに連れて来てくれ、お世話が終わったらまた連れて帰ってくれる。このように柔軟な対応をしてくれたおかげで、授乳室に行って帰ってくることができない私でも授乳をすることができました。この日は、10時、13時、16時、19時、22時の5回とも赤ちゃんをベッドまで連れてきてもらい、ベッドの上で授乳をし、オムツ替えをしたりミルクを足したりするのは看護師さんにお願いをしました。

少しずつできることが増えてきた術後4日目~5日目。

術後4日目にもなると、少しずつ起きている時間を延ばしていくことができるようになりました。日中6回の授乳時間のうち、前半3回は前日と同じように授乳をするだけでしたが、後半3回は授乳のあと看護師さんに作ってもらったミルクを飲ませるところまでできるようになりました。

そして、術後5日目。

4日目まではずっとベッドで授乳をしていましたが、この日はまず椅子に座って授乳をし、そのあと自分でミルクを作って飲ませることに挑戦しました。前半の3回、同じようにお世話をし、頭は痛かったけど起き上がっていられないほどではなかったので、16時の授乳からは全部自分でやってみることにしました。そしてとうとう授乳室まで迎えに行くところから返すところまで全て自分で行うことができたのです。本来であれば術後2日目に行っていたはずのお世話を、術後5日目の夕方になってやっと全て自分でできるようになったのでした。

頭痛は術後6日目までは少し残っていましたが、7日目にはほぼなくなり、普通に動けるようになりました。そして術後9日目、特に問題のない状態で無事に赤ちゃんと一緒に退院することができました。

自分の状況を言葉できちんと伝えるようにする。

私が今回の髄液漏れの対応で心がけたのは、

術後2日目から毎日水、ポカリ、緑茶の500mlペットボトルを買って飲んでいたこと。

毎日自分がどのくらい起き上がっていられるかを記録したこと。

の2点です。

水分補給に関してはどれほど効果があったのかは定かではありませんが、お医者さんにも看護師さんにも「水を飲んで!」「カフェインとって!」と言われていたので、私は毎日ペットボトル3本を買って飲んでいました。ご飯もできるだけ完食するようにし、口から栄養をとることを意識しました。

また、自分の状況を記録する、というのは、自分の状態を他の人に伝える上で非常に役立ちました。特に、担当の看護師さんは毎日かわります。看護師さん同士でももちろん引き継ぎはしてくれていますが、細かいところまでは伝わっていないなと感じることもありました。その時に自分の状態や、自分がどうして欲しいかを簡潔に伝えることができると、余計なストレスがたまらずにすみます。

さらに、エバーノートに記録することで、夫に自分が産後辛かったかを伝えることもできました。「頭がいたい」「辛い」だけでなく、どのくらい自分が起き上がることができないのか、その中で毎日どのように赤ちゃんのお世話をしているのか、そうした客観的な情報を共有することは、自分の状況を理解してもらう上で大切だと思いました。記録をしても、そこからどのくらい汲み取ってくれるかは相手次第のところもありますが、やっておいて損はないと思います。

人の痛みや苦しみというものは、分かりたくても本当に理解することはなかなかできません。でも、客観的な事実を知ることで、人の痛みや苦しみにどのように対応することができるかを想像することはできます。だから、苦しい、辛い、助けて欲しい、と感じているときこそ、自分の状況を整理しておくこと、それを相手に簡潔に伝えることを心がけると良いと思いました。どんな時でも言葉をうまく使うことって大切ですね。






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