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矛盾の揺籠

讃え 褒められた花々も
枯れて仕舞えば
なんの木だったか
忘れられる

かつてあなたは
なんの木だったか…
かつてあなたは
どんな花を咲かせたか…

尋ねたところで
過去のこと
如何に見事に咲かせようとも
如何に人々を惹きつけようとも
たまゆらの夢…
うつそみの微睡に見る
幻…

何にありがたくて手を合わせていたのか…

目覚めたようで
生まれてこのかた
一度も 目を覚まさぬまま
死んでゆくような気分で
いえいえ それすら気づかず
死ぬのかも知れぬと
ふと思ったら
可笑しくて 吹き出した

まことに
何が真実なのかしらん?
わたしのことを
見向きもしなくなった家人が
晩御飯何?
と聞くから…
反射的に 
カレーライス
と答えたけど…
じゃあ 食べたら出かける
と答えたから
それを 今から作る…
と意地悪く再度言ってみた
すると ため息と共に 
じゃあいらないわ。
と 玄関へ急ぐ足音が聞こえた。

やがて 扉が閉まり 静まり返る家。

静寂はいい。
都会の中の静寂は殊更 深山の静寂に等しい。これに耐えられないなら都会に来るべきじゃない。
ひとりはいい。

孤高はいい。思考を邪魔されない。
賞賛も 他者からの肯定もいらない。わたしはわたしを肯定する小さな生き物になる。

だれの許可を得て生きている訳じゃない。
自分の許可を信じている

わたしは多分なんの花も咲かせていない それはおろか 目覚めてもいないのかもしれない
でも 静寂をひとり謳歌する微々たる矛盾を手に入れる度 微睡から少し覚めて 覚醒までに至らぬように
まるまり続けている

あなたは なんの花を咲かせていますか…
それは素敵な花ですか…
目覚めたことが ありますか?

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