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ミュシャ展

福岡市美術館で開催中の「ミュシャ展」に行ってきた。

私がミュシャを知ったのは、もう3年も前。

雨が降っていても基本傘を持たず、いつもビニール傘を買っていた私は、たまたまネットで可愛らしいデザインの傘を見つけ、「これなら持ち歩こうって気になるかも」と思い、とある傘を購入した。
その傘の内側のデザインに、ミュシャの絵が描かれていた。

ただ、その時はこのデザインがミュシャのもの、ということまでは知らず、あくまでも可愛いデザインとしか思っていなかった。

そしてそれから1年後。
山田五郎氏のチャンネルでミュシャが紹介されており、私はようやく自分の傘のデザインが、遠い国の遠い過去の画家アルフォンス・ミュシャのものであることを知った。

山田五郎大人の教養講座↓

それ以来、私の好きな画家の1人に仲間入りしたミュシャ。
いつか展示会があるならと思い続け、その願いがついに叶ったというわけ。

80年代の少女漫画にも影響を与えたとされるミュシャ。
一印刷所職員でしかなかった彼が、いかにして画家として、果てはマルチアーティストとしての栄光を掴んだのか。

本展示会ではミュシャの活動初期から、晩年の活動について知ることとなる。

平面的なデザインの中の写実性

ミュシャの絵柄の特徴として、その平面的かつ、まるで装飾品のような優美なデザイン性が挙げられる。

最初からそうだったかと言われると、首は縦に振れない。
元々絵の挿絵を描いていた時の絵柄は、全然違うから。

ミュシャ作品/挿絵原画「蚊のお話」
西洋っぽい陰影や、奥行き、質感の違いがよく出てる。
この絵柄も私は好き。


ところが、彼がポスターを描くようになってから、その絵柄は見慣れた平面的なものになる。

ミュシャ作/ポスター「ジョブ」
髪の毛や煙ですら、主役になりうるほど綺麗


この絵を見てもわかるように、女性の髪の毛や、煙草の煙、絵の周りの枠組みまで事細かに描き込まれていて、その優雅な曲線は、まさにその時代ヨーロッパで流行った美術様式、アール・ヌーヴォーらしさを感じさせる。

それまでの西洋絵画のような陰影はほとんどなく、ここまで平面的なデザインなのは、日本の美術様式の影響であると言われている。
たまたま見かけた、遠い異国の今まで見たこともないような絵に、ミュシャがどれだけ驚愕し、影響を受けたのかが分かる。

しかし、女性の顔を見てみると、多少陰影はあるし写実的に描かれていて、それまでの西洋美術の系譜を感じる。
ミュシャは、ただジャポニズムの影響を受けただけではない。
これまで学んできた西洋絵画の技術と上手く融合させ、自分なりの美術に昇華していった彼のセンスの良さにはグッとくるものがある。

擬人化が上手すぎる

ミュシャ作品/所収挿絵「1月・雪」から「12月・霜」
雑誌ココリコに掲載されていたもの。
私は6月と10月が好き。

日本は何でもかんでも擬人化するって言われるけど、ミュシャも結構負けてないと思う。

12ヶ月、四季、1日の流れ、星……。
ありとあらゆるものを綺麗な女性で擬人化し描いている。

そのどれもがただ綺麗なだけじゃなく、上手く特徴を絵に落とし込んでるから、見ていて説得力もある。

ミュシャがもし日本のオタク文化に転生しても、きっとまたしても売れっ子作家になっていたに違いないし、私はきっと彼の作品の虜になって片っ端から作品を集めていたと思う。

日本のオタク女子の心を、掴んで離さないミュシャ。
ああ、そうか。
だからミュシャ様式が明治の日本に渡ってからも、その影響は色濃く、近代の少女漫画への影響まで指摘されているのか。

この相思相愛な日本とミュシャの関係、実はかなりエモいのでは?

理想化された女性

ミュシャの描く女性って何でこんなに美しいんだろう?
色鮮やかな花々で飾られた髪の毛と、こちらを試すような女性の耽美な表情に見惚れない訳にはいかない。

ミュシャ作/ポスター「ジスモンダ」
当時の大人気女優サラ・ベルナールを描いたもの

こちらのジスモンダという演劇のポスター。

19世紀後半のフランスを代表する大女優サラ・ベルナールが一目惚れしたと言われてるけど、確かに私も、自分がこんなにも優美で、耽美で、素敵な女性に描かれていたら、サラと同じような気持ちになっていたと思う。

ミュシャ作品/連作装飾パネルから「夜のやすらぎ」
この女性の目を閉じている横顔に思わずキュンとした。

美しさの中には、可愛らしさもあり、気品があり、ずっと見ていていても飽きない魅力がそこにある。
容易に手が届きそうで、永遠に相手にされず、遠い存在であるような美しい女性たち。

まさに世の男性の理想ではないか。

というか、私の理想の女性像でもある。
思わず視線を奪われるような魅力的な絵画の女性に、私は強い憧れを抱く。

思わず目を奪われるパッケージ

先ほどの章でも言ったように、ミュシャの描く作品はどれもこれも必ずと言っていいほど目を惹く。

ミュシャが描いたとされるチョコレートや
クッキー缶のパッケージ。欲しい。

展示会の解説や、本展示会の画集を購入し読んでみると、ミュシャが活躍した19世紀後半のパリは、ベルエポック(良き時代)と呼ばれ、大量生産が可能になった時代でもあるそうだ。

消費者はたくさんの選択肢の中から、より良いものを自分で選べるようになった時代に、自社製品を1人でも多くの人に手にとってもらおう!
そんな販売側の思いの結果、商品そのものではなく、その商品を楽しむ女性を描くことで、消費者となる男性の購買意欲の向上を狙った、と画集には書いてあった。

女性の私から見ても、確かにこれは欲しくなるデザイン。

今でも通用するようなオシャレで可愛らしいお菓子のデザインは、きっと子供から大人にまで愛されるものであったに違いない。

最後に

ここまで語ってきたミュシャって、実は髭もじゃのダンディなおじさん。

ミュシャとゴーガンとその仲間たちの写真
この写真が来ると思ってなくて、見た瞬間笑った。

その見た目からは想像もつかないような繊細で耽美な作品は、100年以上経った今でも多くの人々を虜にしている。

私もそのうちの1人。

ありがとう、サンタさん。
クリスマスに1人印刷所で働く寂しい青年に、幸運な出会いをプレゼントしてくれて。

ミュシャの描く可愛らしくも、美しい女性は私の永遠の憧れ。

福岡市美術館で6月4日まで開催中↓

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