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劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室

松木彩監督作品、鈴木亮平氏主演映画「劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室」を観てきた。

同名ドラマ版を見ていて、スペシャルドラマまで見ていたこともあり、映画化と聞いて「これは見に行かないわけがない」」と公開を待ち望んでいた。

公開からそう時間が経ってないことや、ゴールデンウィーク中ということもあり、座席は既に多くの人で埋まっていた。

母と一緒にペアシートに座って、映画が始まるのを待つ。

あらすじ

横浜ランドマークタワーの一室。
怪しい清掃員の男がガソリンを室内に撒き散らし、火をつけた。
瞬時広がる火の海、そこから逃げ出すように数千人が逃げ惑う緊急事態が発生し、東京MERにも出動要請がかかる。
急いで現場に向かう東京MERメンバー。
そんな彼らの前には、厚生労働大臣が新設した救命のエリート集団、横浜MERのメンバーが。
「待ってたら、救えない命がある」と主張する喜多見に対し、横浜MERのチーフドクター鴨居は「待っていなきゃ、救える命も救えなくなる」と真っ向から反する意見で対峙する。
火災はどんどん広がり、やがてそれは爆発事故にまで発展する。
次々と爆発するタワーに残された193名の中には喜多見の妻であり、妊娠中の千晶の姿も。
喜多見らは無事に、193名の命を救うことができるのか。
そして、千晶とお腹の赤ちゃんの運命はどうなるのか。
命の危機に挑む勇気と絆の物語が始まる。

以下ネタバレあり感想


展開がわかっていても心臓がもたない

これは作り物。
だから、大体死者ゼロになるのは分かってた。
だってそうじゃないと映画として成り立たないし。

「どんなに命の危機が迫ったとしても、必ず助かるんでしょ」

と思っていたけど、それで実際そうなんだけど、それでもめちゃくちゃハラハラする。

冒頭の飛行機事故から山場が2つあって、この飛行機事故だけでも一つの物語になるのでは?ってくらい熱い展開が待ち受けてる。
それで横浜ランドマークタワー編になったら、もはや想像を遥かに超える山場の多さ。
「これ映画始まったばかりだよね?」なんて全ての場面で思った。
ハラハラドキドキしすぎて心臓がもたない。

このTOKYO MERって、セリフも動きも出てくる小道具も細部までこだわっているおかげでめちゃくちゃリアル。
それに加えて映画ならではの迫力満点の映像故に、自分が本当に事故現場に遭遇した気分になる。

「え?これ助かるよね?死なないよね?え?死ぬ?助かる?」って言葉が何度も頭をよぎり、ちょっとホッとしたらボーンと爆発が起きたり、ピコーンと急変する人がいたり「この映画のクライマックスどこ?」と困惑した。
おかげで見応えは満点なんだけど。

正直かなり疲れた。

パンフレットみて、監督の松木氏も映画の撮り方をしたほうがいいんじゃないかと迷ったけど、主演の鈴木氏の「ドラマ版と変えない方がいい」という言葉でこの撮り方をしたとあって、「あ、あれわざとだったんだ」と知りちょっとびっくりした。

でも実際の医療現場って、こんなもんよなとも思った。
ホッとする暇なんかなくて、一つの処置が終わればすぐに次の命を救わなければならない。

医療従事者として命を扱い、救うということは、常に緊張感を持たなければいけないということを再認識した。

正義のヒーロー来たり

自ら危険な現場に飛び込んで「東京MERです!もう大丈夫ですよ」と宣言してくれる喜多見の姿は、助けを待ってる要救助者そして見てるこっちまでホッとさせてくれる。

まさに正義のヒーローであり、「この人たちが来てくれたから大丈夫」という心の拠り所となっている。

また、迫り来る火事や爆発の恐怖からパニックに陥る大人たちの横で、自分の命を顧みずに自分の命を救おうとしてくれる姿に感銘を受けた中学生たちが自ら手伝いを言い出すシーンは、正義のヒーローの継承が行われているようでグッときた。

きっとこの子達の中には将来消防士や、医者、看護師を目指しす子が出てきて、いずれ「あの時助けていただいた者です」とか言って同僚として働く時が来るんだろうなと勝手に想像してたら、あれいつの間にか涙がポロリ。

悪者をやっつける正義のヒーローも素敵だけど、脅威から自分の命を守ってくれる正義のヒーローもかっこいい!

憧れと安心感を与えてくれるMERメンバーはすごく輝いていた。

待っていたら救えない命がある

ドラマ版からのキーワードである「待ってなきゃ救えない命がある」という言葉。

一医療従事者としてハッキリいうと、私はあまりこの言葉には賛同はできない。
横浜MERチームの鴨居チーフが言うように「待ってなきゃ、救える命も救えない」と言う信念の方が、私の考えに近い。

危険な現場に飛び込むことは、自分の命がなくなってしまってもおかしくない。
一歩間違えれば、自殺行為だ。
当たり前だけど、自分の命がなくなってしまえば救える命も救えなくなってしまう。

緊急辞退発生時、まず自分の命と身の安全を確保してから救助活動に当たるというのは医療現場での基本中の基本。

だから、東京MERチームはもうちょっと怒られるべきだったと思うのは私だけなんだろうか。
横浜MERチームも、映画の最後の方で賞賛し、考えが変わっていたけど、それじゃ医療従事者でも危険な現場に飛び込むべきってメッセージに聞こえて、私は納得がいかなかった。

作り物だからそこまで細かく見なくてもと思われるかもしれないけど、ここまでリアルにこだわっていて、医療従事者の方々への感謝を伝えるために作ったんだったら、そのメッセージはちょっと受け取りがたいと思ってしまった。

せめて横浜チームには最後まで「待っていなきゃ、救える命も救えなくなる」と言う信念を貫いて欲しかったし、音羽も「結果的には良かったけど、危険な行為はやめてください」と東京MERチームを少し叱るシーンがあっても良かったなと感じた。

他の医療従事者はどう思ったのだろうか?

潮見君とジェシーのギャップ

今作から登場した潮見知広という研修医。
彼を演じたのは、SixTONESのジェシー。
私はジェシーの演技をほぼ初めてくらいに見た。

え、ジェシーの演技良くない?

SixTONESの中ではバラエティ班って言われてるけど、スタイルと顔の良さで存在感と華があるし、かといって役に全く合ってない訳でもないし、思ってたより遥に良かった。

まだまだ初々しさは残るし、抜群に上手いかと言われたらそこまで手放しには誉めないけど、普段のジェシーのオラオラでとりあえず前に進もうぜ!なんて先陣を切って前に突き進む感じを封印して、あそこまで救命現場で怖気付くオドオドした研修医を演じ切ったのは単純に凄い。

そしてそんなオドオドとしてた(災害現場でオドオドしない人なんていないし、危険なんじゃ?って現場に踏み込むのを躊躇するのは当たり前だし、正しいことだと思う)潮見君が、映画後半で自ら火の中を飛び込んで、医療キットを持ってきたシーンは、彼の殻を打ち破った成長を感じられて熱いものがあったし、ジェシーの持つ熱い心とリンクしていて、とてもハマっていたと思う。

最後に

迫力満点の映像、ハラハラドキドキの展開、正義のヒーローのカッコ良さ、命の尊さ、たくさんの要素がミルフィーユのように重なり、おかげで鑑賞者に一息つかせる暇もなく2時間が過ぎていく。

医療従事者として、自分は命とどう関わることができるのか、自分自身と向き合える作品だったと思う。

主演の鈴木亮平氏の演技は相変わらず素晴らしく、彼の演技が周りの役者陣の演技のリアリティを引き上げ、映画自体の没入感を高めていた。
本当に彼が大成してくれて良かったと思うばかり。

元々ドラマが好きだった人はもちろん、医療物が好きな人、命を救う正義のヒーローを見たいという貴方におすすめする。

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