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春が口の中に舞い込んで

春の陽気に誘われて、母と一緒に自転車で走る。

まずは、食料の確保。
スーパーでお弁当と、飲み物を購入。

さあ、目的地まで走る、走る。

途中、コインランドリーから洗剤の匂いがフワッと鼻腔に触れる。
洗い立ての純粋な匂いは、お日様の匂い。

暖かい日差しに背中を押され、また走る。

やっと着いたのは、流川。
もうところどころ葉桜になっていたけど、まだまだほんのりピンクの桜の花が、穏やかに迎えてくれた。
柔らかい土の上に、レジャーシートを広げる。

「いただきます」

どうぞ。と言わんばかりに桜吹雪。
天むすを食べようと大きく口を開けたところに、勢い桜の花びらが一枚入ってきた。
春が口の中に舞い込む。

「ごちそうさまでした」

小さな子供が、若い父親と母親に手を引かれ桜を眺める。
若いカップルが、手を繋いで頬を染めつつ桜の絨毯の上を歩く。
初老の夫婦は、桜の下で朗らかな笑顔を浮かべている。

平和だ。

暖かい春の陽気は、眠気までも誘い込む。


桜は綺麗だった。

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