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連載小説 魂の織りなす旅路#59/魂の解放⑴

光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。月曜日と金曜日に更新。

【魂の解放⑴】

 このところ、娘が言っていた〈魂の解放〉という言葉が頭にこびりついて離れない。娘は魂で妻と会話をしていたと言う。しかし、言葉を介さない会話だなんて、僕には理解ができないし想像すらできない。
 娘は「これからよ」と軽い口調で言った。それは僕もいずれそれができるようになるということだろうか。しかし、妻はもういない。娘の話は、妻が生きていた頃の胎内での話なのだ。

 僕は縁側に向かうと籐椅子に腰を掛け、瞼を閉じた。体が暗闇に溶け込むと、竹筒から水鉢へと流れ落ちる水音が、聴覚とは別の感覚で聞こえてくる。それは耳を介さず直接頭に響いてくるのだ。そして、僕の全身が水音に包まれる。
 この不思議な感覚に心奪われた僕は、最近毎日この籐椅子に座って水音に身を浸している。今日は特に残響が長い。水音の余韻が次々と重なり合い、僕の中でどんどんと増幅していく。

 増幅した残響に全身が共振するのを感じたとき、突如頭の中でキーンという音が鳴り始めた。耳鳴りとは違う。まるで音波のようだ。頭のてっぺんから手足の先にまで振動が伝わってくる。僕はあまりの気持ち良さに恍惚となった。

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