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連載小説 魂の織りなす旅路#19/お父さん

光たちからのメッセージ小説。魂とは?時間とは?自分とは?人生におけるタイミングや波、脳と魂の差異。月曜日と金曜日に更新。

【お父さん】

 係員のお兄さんが、腰ベルトをカチッと閉めた。ブザー音が鳴り響き、周りの景色が少しずつ動き始める。地面が遠のき、体が宙に浮いていくのが嬉しくて、私は足をブラブラさせた。視界が広がり、空がどんどんと大きくなっていく。

 私は波動を解放し、波動で風を感じた。波動で空の大きさを感じ、波動で空飛ぶ鳥を感じる。そうして私は、全身で波動の歓びを味わう。
 なんて気持ちがいいんだろう。私が手を振ると、お父さんは優しい笑顔で手を振り返してくれる。お父さんは、私のことが大好きなのだ。
 私も大好きだよ! そう強く思うと、お父さんの境界線が震えた。お母さんの波動が、そんな私を抱きしめる。お母さんも、お父さんのことが大好きなのだ。

 空中ブランコがぐるりと一回転し、再びお父さんの方を見下ろすと、お父さんは胸ポケットから手帳を取り出すところだった。あの手帳には、お母さんの写真が収まっている。お父さんはたびたびあの手帳を開いて、お母さんの写真を優しく撫でるのだ。
 私はそんなお父さんを見るたび、切なくて胸がぎゅぅっと締めつけられる。お父さんの波動は、お父さんの形をした境界線に閉じ込められていて、私のようにお母さんの波動と抱擁し合うことができないからだ。
 お父さんの波動は、境界線の内側でいつもお父さんの境界線を揺らしている。ときおりその揺らぎから波動の輝きが漏れ出てくることがあって、私はその力強い輝きに惹かれていた。

 空中ブランコの回転する勢いが弱まる。みるみるうちに地上が近づいてきて、とうとう地面に足が着いてしまった。ブランコを降りた私は、お父さんのもとに駆け寄り、もう一度乗りたいとせがむ。今日は耀の誕生日だよ、何度でも乗りたいだけ乗るといいと言われ、私は歓声を上げた。それからお父さんを抱擁し、お父さんの境界線から漏れ出ている、力強く輝く波動にキスをした。

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