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ペルソナ3は異質な作品だ【P3Pリマスタークリアレビュー】

ペルソナ3を好きになってから10年が経った。
10年放置していた、というよりも温めていたという方が正しい。

久しぶりな感性でペルソナ3をどう感じるのか楽しみにしていた。
ペルソナ3は無印とFES、後日談をクリア済み。Pは未プレイ。

先日ようやっとクリア。
クリア時間は40時間。難易度はBEGGINER。ハードはSwitch。

結論:
シリーズ屈指の異質なゲームだった

こいつぁすげぇゲームだ。
ますます好きになっちまったぜ。

※評価点からネタバレを含みます。
※とっても長くなってしまいました。ご容赦。

プレイフィール

ヌルヌルサクサクなペルソナ3

触ってみた最初の感想としては、『ヌルヌルサクサク』であること。
これはすごい。驚いた。レスポンスが早い。
本腰入れて遊ぶつもりだったけど拍子抜け。本当に気軽にできる。
P4Gにすら感じてた人形劇のめんどくささがない。
というか、初見でもないし、古めのゲームはこれぐらいのあっさり演出でいい。

紙芝居でも迫力あるよね

人形劇がないのは寂しくはあるけど、演出盛々がいいなら映画版をどうぞ。
正直、P3はシリーズ踏破のために仕方なく遊んでる人もいると思う。
そういうモチベの人でもやり続けられるような手触りでした。
結構自信持ってオススメできる出来。ここは頑張ったね、アトラス。

最高な雰囲気と設定

歴代最高なオシャレは3。これは間違いない。異論など認めるものか。

ヒュー! 最高にCoolだぜ!

後述するけど、P3は一つのコンセプトを突き詰め切った感がある。
このコンセプトをもとに、いろんな要素を解釈し直して、それをゲームバランスと作風に落とし込み切った。
映像美はP5だと思うし、親しみやすさはP4だと思う。
でも、普遍的なオシャレさは3がズバ抜けてる。プレイした後に思う。4とか5は焼き増しだ。

独特で無機質なデザイン、召喚器の設定、影時間やボス戦。
スタッフの「イケてるっしょ?」に屈服させられる屈辱。うん、認めるよ。オシャレだよ。

仲間と深夜徘徊。この厨二感最高。

自分たちの『好き』を詰め込んで、表現し切って、受け入れられる。
この開発チームは幸せそうだなぁと思いました。これを20年近く前に発売したんだもんなぁ。

誰も言わないけど、ボスデザインもかなり好きだよ

今から遊んでもビビッとくる人はくるかも。
「5から逆走したけど3が一番好き〜」みたいな人は、きっとこのあたりの魅力にやられたはず。プレイすると多分わかると思う。

シリーズ初心者も経験者にとっても、「手軽に遊べるRPG」としてリマスターされた感じがとてもします。¥2,000で買えるのはとってもお得。
興味がある人は買おう。質感的にSwitch版がオススメです。
逆にPCとかPS5でやると拍子抜けするかも。
寝っ転がりながらやるペルソナ最高。

というわけで、以下ネタバレ全開です。クリア後にまた会おう!

評価点

コミュがおもろい

遊んでて思ったのが、『自分が学生に戻った気分』になれること。
コミュで関わるキャラクターが本当にそれっぽくて、「こんなやつクラスにいたよな〜」みたいな既視感がある。

こういう薄っぺらいやついるよね
君が好きだ。君からなんじょうくんの素質を感じる。
何がだよ(真顔)

一言で切り捨てると、どの話も『どうでもいい』。
でも、そのどうでも良さがたまらなく好き。だって、たかが高校生なんかに重大な悩みなんてあるはずがないんだもん。
後述するけど、P3と4,5ではコミュの意義そのものが違う気がしている。

もちろん、味のあるキャラクターも忘れちゃいけない。

ジジイの小言が沁みる歳になったよ
口調とセリフで学生時代を想起させるテキストセンス

3以降のペルソナは、オムニバスというか短編集みたいな楽しみ方がある。
3は全体通してドライでシリアスな仕上がり。4のようなあからさまさが薄め。

悪く言えば淡白だけど、僕はこっちの方が好き。
無達なんか当時は見向きもしなかったなぁ。でも、今回は一番楽しみにコミュ進めてたよ。おもろいね、人生って。

リアルな人間模様

不満にいれるか迷ったけど、こっちに入れました。

このリアルな距離感。もうちょい仲良くしようよ笑

よく言われる、「3はギスギスしてる」ってやつ。
確かにそうだ。うん、納得してる。僕の記憶がそういってる。

でも、「ちょっと茶化しすぎじゃん?」って思ってた。コンセンタラフーとかモト劇場とかガキパトとか、アトラス信者はネットミームが好きだから。

でも、違った。マジでびっくりした。こんなんだっけか。
個人的にキッツいなぁと思うシーンをいくつかピックアップ。震えて慄け。

ちょっと調べただけですやん
順ちゃんさぁ….
正論だからって何言ってもいいわけじゃないんだぜ、ゆかりっち

大体順平とゆかりのせい。お前らムードメーカーとしての役割を自覚しなさい。

先輩組がドライな立ち位置で、本来なら賑やかしの同級生が感情ぶりぶりなのでこうなってしまいました。うーん、本当にコイツらは。

でも、個人的にこういう不快感は全然OK。
FESまで遊んだけど順平は好きじゃない。嫌いでもないけどね。
でも、そういうキャラがいてもいい。むしろ順平にムッとできるぐらい3にのめり込んだとも思える。
こういう感情の吐露がないと、どうしても人間臭さを感じられない。

悪い子じゃないんですよ
これをはっきり言えたら本物よ

作中での醜態が彼らの恥部だと思う。
人としての底。人間関係の底。だからこれ以上悪くなることは考えにくいし、本音でぶつかり合ってる感じがする。
これ以上拗れたら関係そのものが無くなりそうだし。

そういう泥臭い部分が見えた時、初めてその人の魅力がわかる気がする。
順平もゆかりも全然嫌いじゃない。突っかかってくることも、なんとなく嫌いな人がいるのも本当に等身大。
ここはファンタジーじゃなくてリアル路線なんだもんなぁ。
このアンバランスさがP3の魅力だと思う。

同じ4月末でもこの落差。陽介、その蕎麦よこせ

史上最高のラストバトル

アバター(化身)でしかないのよね、お前も

アルカナは旅路だ。
愚者から始まった旅の果てに死(XIII)が待っている。

よくこんなん思いつくよなぁ。というか、アルカナネタはいつかやろうと思ってたのかな?
全人類の魂をかけたラストバトルで、「全ての人の魂の戦い」が流れるんだもんなぁ。
これだけで胸熱なのに、最後の最後だよ。もう、絶句。

死の恐怖を焼き払え!

この「I will」はいつ聴いても鳥肌立つ。無理だよ、こんなん。良すぎるよ。

明彦のセリフが最高にカッコよくて好き

追い討ちをかけるような味方の応援エール。
明彦と順平が好きだなぁ。むしろ順平はここぐらいしか見せ場がないし。

HP999の絶望感

最高すぎる専用スキル。
キタローは大好きだけど、ずっと封印しておいてくれ。
それか超上の存在として君臨してくれ。頼む。その切なさがP3の魅力だから。

メメントモリであるということ

「じゃあ次は僕も、もう一度アトラスのユーザー層を拡げるために『ペルソナの新作』をやってみよう」

【ゲームの企画書】橋野桂インタビューより

ディレクターの橋野氏は『新作』としてペルソナ3を作り出した。
その軸にあったのが「メメント・モリ」、「死を想う」ということ。
久しぶりにプレイをしてて強く実感した部分。

P3は本当に「死」に溢れている。

絶対的な死。こんなん怖いに決まってるだろ。
主人公でこれをやる案もあったんだとか。気になる。

死の恐怖に立ち向かうお話。
一日一日を大切に。誰もが聴いたことがある、もはや陳腐な言葉。
これを実感させるためにカレンダーシステムが採用された気がしている。

君に会うために、僕はP3を始めたんだ

ペルソナを遊ぶ時ほど一日の使い方に頭を悩ます瞬間もない。
ゲーマーの頭の中は「1週目でコミュMAX」みたいな電子臭い煩悩に塗れてるんだろうけど、一日を考えるっていう点では一緒。

単に「ギャルゲーっぽい新鮮味を!」っていう浅い考えじゃなくて、没入感を高めるための措置だったんだと思う。4以降はシステムとして継承されただけだと思うけど。

その観点で見ると、3のコミュの見え方が変わってくる。
4や5はワンマンプレイ。コミュ毎にクオリティを用意して、指すところで指すイメージ。全体のつながりは薄め。コミュ毎の好き嫌いも分かれそう。
3はチームプレイ。コミュ毎の訴求力は弱め。ゲーム(チーム)全体で得点するイメージ。

日常に自然と絡む死の描写
君に出会えてよかった

作品全体が「死」っていうテーマを想っているからこそ、サブキャラやコミュの言動にも深みがある。4以降は本編に対する箸休めになっちゃってるけど、3はその感じがしないのよね。一体感がある。ゲームの一部って感じ。

命なき物に最後を看取らせる

アイギスがヒロインである意味を今まで深く考えてこなかった。
なるほど、命の価値を問いたいからこそ、機械の乙女にしたんだねと納得。
だからこそ、最後の最後でアイギスが寄り添うことにも意味がある。意味を帯びる。おしゃれな演出だよね。

アイギスは作中で命を手にしたけど、アイギスにも死が訪れるのだろうか。
ED付近のアイギスは達観した様子だったけど、「待っててね。私も行くよ」っていう意味合いなのか?

個人的には機械のままでもよかったなぁ。
生き物を超越した物同士仲良くするっていう展開でもよかった。蛇足か。

P3は決め切ったテーマに直進していった。
コミュもダンジョンもありとあらゆるものがテーマの演出のために作られたんだと思う。

この召喚すら自死がモチーフだもんね。かっこいいだけじゃないのよ。

ひどく言い切ると、4も5も3の焼き増しだ。
3の革新性は越えられなかった。改革の必要があるのかといえばNOだけど。引っ提げた新要素にしっかり意味を持たせて、作品のトータルバランスでクオリティを叩き出した。

罪罰が異聞録の進化系であるように、4や5も3の進化系だ。
「アトラスの新作」として「女神異聞録ペルソナ」は斬新だったと思う。
でもペルソナ3は「RPG」として斬新だったと思う。
この大きな括りに耐えうるほど何もかも新しく、革新的で、ものすごいパワーを内包した作品だ。

そういった諸々の意味も込めて、P3は異質な作品だと思い直した。
やっぱり面白かったし、すごい作品だったんだなぁ。

さぁ。
以下、不満点です。この野郎が。

不満点

圧倒的にめんどくさいシステム周り

めんどくさいシステムをそのまんまにすんな!
これが僕の大きな声です。まったくもう。

まずは依頼システム。
なーんで3つが受注限界なのかなぁ???????
3つにこだわる理由あるかなぁ???????しかも受注しないと該当アイテムドロップしない仕様は誰が得するのかなぁ???????????????現代人は納得できるのかなぁ?????????

おかげで無駄にタルタロスを彷徨う羽目になりました。本当にキレそう。
てかレアエネミー周りが本当にゴミすぎる。なんで当時は気にならなかったんだ?

ちゃんとクソアクションで先制してもENEMY ADVANTAGEなのは納得いかん。
なんで遭遇運に勝って、ポップ運に勝って、実力で先手とった後に、2連続の「逃走しない」テーブル引かないとダメなの????????????俺なんか悪いことした!?!?!?!?!?!?!!?!?!?!?!?!?!????

あと、マルバツゲー信者は反省しなさい。
ひっさしぶりにやったけど、全然面白くない。指定スキルの依頼消化中にマハブフダイン継承できなくて発狂しそうになった。ダメ。スキル選択なんて自由にさせてよ。この要素はいらない。思い出の中に生きてくれ。

リマスターとして

P3『P』のリマスターとしては上出来だと思う。アトラスよく頑張った。ここはみんなで褒めよう。いい仕事だ。
でも、『P3』のリマスターとしては納得感が低い。
なーんで『F』が放置のままなの?

P3がPSPで遊べる→わかる
P3Pがスイッチで遊べる→わからない

P5がスイッチで遊べるなら、P3Fだってスイッチで遊べるはずでは?
もちろん、移植の手間の話は少し聞いてる。

もしかしたらP3Fを移植するよりも、P3Pの方が安上がりだったのかもしれない。でもせっかくスイッチで出してくれるなら、もっと何かが欲しかったなぁ。

というか、こんなにベタベタに移植するぐらいなら、もっと早くやってよ。
こんなにもったいつける必要はなかったはず。仮にPSPの移植が楽ならP1とか罪罰も出してよ。買ってもやらないけど。

どうせ作り直すなら一手間加えたり、Fの要素が欲しかったところだし、ベタ移植ならもっと早く出して欲しかったって印象。

P3フルリメイク勢の気持ちがよくわかった。
僕含め、大切に想ってる人がたくさんいる作品だからこそ、丁重に扱ってもらいたいなぁ。

改悪な追加要素

最後に一つ。どうしても許せない追加要素が、これ。

風情台無しだよこんなん

これ、誰が考えたの? 誰が許可したの?
P3Pからの追加かと思って動画見漁ったけど、どうも今回のリマスターからっぽい。少なくとも5年前とかにアップされた動画では確認されず。

※参考

ガキさんのボイスは聞こえるか聞こえないかぐらいでよかったのさ。
こんなんするぐらいならボイス削除でもよかった。聞こえるはずないんだから、そもそもが。
誰に向けたどんな配慮なの? これで誰が喜ぶの? どんな気持ちで入れ込んだの?

不便はそのままにするくせに、余計な一手間加えやがって。
ホントにこういうことするよね、アトラス。ダメだよ。二度としないで。
過去の遺産で飯食おうとするなら、当時のクリエイターの気持ちを踏み躙らないで。
余計なことするぐらいなら新作作って。ホントにがっかりした。

総評

女子高生にハイレグ着せて喜んでるアラサー。プレイされるお前が悪いんだぞ、美鶴先輩。

リマスターはタイムカプセルだと思う。
当時の気持ちを掘り起こして、その違いを楽しむ。
もちろんそれには作品そのものの魅力がなければいけないのだけど、そういった意味ではP3は神ゲーだと思った。

タナトスと修学旅行に行けるのはペルソナ3だけ!(すっとぼけ)

昔よりも感受性が豊かに、拾えるアンテナが広がったが故に、作品の楽しみ方が変わっていく。
『メメントモリ』なんか当時高校生のクソガキには無理っすよ。それでも好きになってしまえる魅力があった。
僕は指定難病の持病持ちなんだけど、そうなった今だからこそいろんなキャラの言葉が沁みるようになってきた。病気も悪くないもんだ。

変わるところもあれば変わらないところもある。

ヒロインは先輩がトップです。ギンコや芳澤なんか比べものになりません。

本当に美鶴先輩好き。結婚したい。結婚したらなんじょうくんと親戚になれるじゃん。なれるじゃん!?!??!?!!!!!!!!

と、このままじゃ僕の『Mitsuru』フォルダからスクショをペタペタするだけの記事になってしまいそうなので、想いはここに留めておく。ふふっ。

ペルソナ3は偉大なゲームだ。
偉大で異質なゲームだ。久しぶりにプレイしてそう思えたから、やっぱりそうなんだと思う。
未プレイの人はぜひ遊んでもらいたい。

こういう小ネタを仕込むところも好きだぜ、アトラス

引用させていただいたインタビューはこちらから!


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