第61話『長雨と税吏』

 長く雨が続き、その地方のあらゆる土地が数年に渡って水浸しになることがありました。
 しかし、その地方を担当している融通の効かない税吏は、極力例年と同じ様に徴税するために、あれやこれやと手を尽くしていました。
 太守は税吏を諌めましたが、手を緩めておくことが良い結果になるとは思えないと、税吏はあまり良い顔をしません。
 もう、どこ向かおうにも、道は水浸しになっており、場所によっては船を使わなければ移動できなくなってしまいました。
 しかし、税吏は視察先の段取りを決め、いそいそとでかけていきます。
ただ、ある日を境に税吏は外出をやめてしまいました。
 太守が聞いたところ、民の中に人をやめて水の中で住まい始めたものが出た様なので、これ以上は通常の秩序を求め続けてはいけないと判断したとのこと。
 人をやめてしまうほどの長雨なのか、税吏の厳しさ故なのか、太守は判断しかね、それ以上は追求しませんでした。

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