第51話『ささやかな宴席』

 突然やってきた男が、亀の肉を調理するから鍋を貸してくれと言います。
男の鍋は取っ手が取れてしまい、動かして火加減をすることができなくなってしまったそうです。
 外は今にも雨が降りそうで、外で煮炊きができそうな天気でも無いので、家に招き入れて、竈を使っても良いと言ったところ、男は大層喜んで、亀の肉を一緒に食べることになりました。
 ちょうど、近所に住まいをしている下男もやってきたので、酒を買いにやらせて、三人で酒盛りとなりました。
 亀の肉は柔らかく仕上がり、思わぬ宴席となり、三人は大いに楽しんだということです。
 それからというもの、男が時々やってきては、宴席を囲む様になりましたが、やがて他の来客が訪れる様にもなり、寂しかった家は少しずつ賑やかに、豊かになっていきました。

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