「しあわせのかおり」2月17日前口上
ここしばらく、理解とは何かと考え続けています。
そう考えてしまう出来事がたて続けに起こっているのか、気にかけているので余計に目に入るのか、どちらだろうかとも、思い始めてもいます。
父の従妹なのに歳下という親類が居るんですが、先日、二人でちょっとした買い物をせねばならない用事があって、とある雑貨屋に向かいました。
求める品が定まり、件の歳下のおばがレジに行ったのですが、どうやらレジ前にあるくじを3枚引いて良いということで、引いたくじを引き換えるべく、わざわざ店員さんがレジ前に出てきてくれました。
次回、そのお店で使える割引券がもらえるということらしいですが、残念ながらどれも末等の100円引き券という結果に終わって、店を後にました。
店を出て車に乗り込んだところで、おばが開口一番。
「見た?店のおばちゃんさ、私がくじ開く前から100円引きの券3枚数えたよね!数えたよね。見た?」
おばは、店員のおばちゃんの動きが目に入った瞬間から「私がくじを開く前に割引券を数えないで!」と、引いたくじを持ち替えながら、心の中で悲鳴をあげていたそうです。
確かに、おばがくじを引いた時点で100円の割引券の束から3枚数えて抜く店員さんの動作を見てはいました。
「どうして?100円しか当たらないってこと?本当はくじ開く意味ないの?」
おばからは疑問符しか出てきませんが、こちらとしては、特に不思議とも思わずにただ見ていた光景なので、「開いて何が書いてあるか見るまでは、くじを楽しみたかった」と残念がるおばに、ただ相槌をうつより他ありませんでした。
何を見て何を考えるか。
まさに、何も考えなかった私と、心の中で悲鳴をあげていたおばの違いは明白ですが、さらに第三者が居て、この光景を見たとして、どの様に見て取れたでしょうか。
100円引き以上の「当たりくじ」が入っている量を考えたら、100円の券を数えておき、それ以上の場合はちょっと引っこ抜けば即渡せると思えば、まずは100円券を数えておく方が、店員さんにしてみればスムーズに動作できる手順だったかもしれません。
私はこの瞬間のおばの表情を見ていませんでしたが、店員さんの手元を見たおばが、ひょっとしたら怪訝な顔を隠しきれていなかったかもしれません。
となれば、「この女の人は、店員さんが割引券を数える姿に何か反応した」ということが見て取れた可能性があるわけです。
おばの表情が変わったとして、どんな印象だったでしょう。「数えないで!」は見て取れたでしょうか。それとも何か別の内心をイメージさせたでしょうか。
おばと同じことを感じたことのある人ならば、おばを見て瞬時に共感を覚えたかもしれません。
私、比較的女子向けな雑貨屋には似つかわしくないハゲヒゲメガネデブなので、そっちに気がいくかもしれません。または、目に入ってもそれは何も考えるきっかけにならない、ただ流れて行く日常の一部かもしれない。
こうして改めて書き起こしてみて思いますが、店員さんにとっては、仕事のスムーズさや、客として目の前に立つ人との接し方としてどうだったでしょうか。
誰も同じことを考えていないこうした瞬間に見て取れるものの何を拾うか。改めて、演劇が発生する瞬間を探求する、自分の原点に居合わせた様に思います。
ここからの考察はいくらでも続けられますが、ひとまず、しあわせの香りのお料理をお楽しみください。
そうこうしているうちに、お芝居が始まります。
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