プラスチック問題(1)
プラスチック問題について、以前から疑問に思うことがありました。
レジ袋とか、スタバのストローとか、
プラスチックを使わない方向に世の中動いているけど、
ゴミとして海に流れ出てしまう使用後のプラスチックの管理を
徹底すれば良いんじゃない?
たぶん今時の子供たちはちゃんとその辺のことも学んでいると思うのですが、おじさんはよくわかっていないので、今回はこちらの本をとっかかりに勉強してみたことを中心に内容をまとめてみます。
はじめに
まずプラスチックが問題視されている理由をはじめに確認しておきたいと思います。我々、平均的な日本人の理解は、
「世界中でプラスチックゴミが海に大量に流れ込み、その結果、海洋生物(カメやクジラや魚)が間違えて食べてしまったり、絡まったりして死んでしまうということが起きてしまっている。各海岸に大量にゴミとして押し寄せてきている」
こんな感じではないでしょうか。
その結果、私が冒頭示したような疑問が湧くわけです。
要するに使い終わったプラスチックゴミをちゃんと分別して捨てれば良いのであって、なんでなくさないといけないの?
と。
根本的な問題を理解していないことは間違いないので「プラスチックの本当の問題はなんなのか?」を解き解してみました。
1. 海洋ゴミの問題
これはプラスチックの問題として大凡イメージ通りだと思いますが、本書によると、2015年までに人類が作ったプラスチックは83億トン。そのうち、63億トンがゴミになっているが、リサイクルされたものは5.7億トン、焼却が7.5億トン、埋め立てまたは投棄が約50億トン。そして、この1.5億トンが海に流れ出てしまっているとのこと。この海洋ごみの8割が河川などを通じてアジア諸国から流出しているという状態のようです。
この結果、太平洋ゴミベルトなるものができ、多くの海洋生物がプラスチックを既に食べ、絡まって死んでしまったりしています。
そして大量のゴミが世界中の海岸に押し寄せています。
ということであれば、やはりアジア諸国のプラスチックごみ処理管理を徹底することが最も効果的な対策ではないか?と思うのですが、本書にはそこはあまり触れられていません。本書にも書かれていることは、アジア諸国の多くでは、ゴミはオープンダンプ方式(つまり、谷などにゴミがそのまま捨てられている)であり、そういった十分な管理がされていないゴミ山から川へゴミが流出していると記載されています。よって、やはりその管理を海外からの援助や投資も使って、徹底するということがやるべきことの第一ではないかと思いました。
一方で、このゴミの山はアジア諸国の現地から出たものだけではない、ということが、なぜ我々がレジ袋やストローの使用を削減する必要があるか、理解する上で重要なポイントのようです。
2. プラスチックゴミは輸出されていた
これも兼ねてから疑問だったのですが、我々は日々ゴミを出す時、ペットボトルは分別して出していますが、他のプラスチックは「可燃ごみ」で出していませんか?そういう地域が多いように思います。捨てる時に、ペットボトルは分別するのに、その他のプラスチックは「これ、なんで分別しなくていいんだ?」と思ったことがあると思います。
国内のプラスチックごみの総量903万トン(2017年)の処理方法の内訳はこんな感じになっているようです。
なんと143万トンが海外に輸出されているではありませんか!そしてこのうち、130万トン(14%)は中国に輸出しています。
要するに、自分たちで分別してリサイクルするより、中国に輸出して分別・リサイクルしてもらった方がコストが安かった、ということ。日本だけでなく、アメリカ、タイ、ドイツ、ベルギーが2016年の中国へのプラごみ輸出トップ5(タイは欧米のゴミの再輸出らしい)。中国は年間700万トン(世界のプラゴミ輸出の半分)を海外から受け入れていたようです。
つまり、
日本でプラごみを捨てる
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一部が中国へ輸出される
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オープンダンプ方式でゴミ山に行き着く
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一部が川に流出し、海にたどり着く
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海洋ゴミとなる
となっていた、ということです。
これで、オープンダンプ方式のゴミ山を適切に管理することだけでなく、そもそもなぜプラごみをなくそうとしているのか、少し解明されました。
なお、中国は80-90年代、自国でプラスチックを生産するよりプラごみを輸入してリサイクルする方がコストメリットがあったようで、政策的に受け入れていたようです。欧米日は自国で分別してリサイクルするより安い中国に輸出してきたということのよう。
しかし、中国は今や賃金も上がってきており、自国でも大量のプラスチックゴミが出るようになりました。そこで、2017年プラごみ輸入を禁止します。
年間700万トンのプラスチックゴミを受け入れてきた中国の輸入禁止により、結果的に、プラゴミの削減はもはや世界中で取り組まなければならない課題となってきたということです。
3. 燃やしてエネルギーとなるプラスチック
先程、日本のプラごみ総量の14%を中国に輸出していると記載しました(2017年)。もう一度、内訳を図示します。
目を引くのはやはり524万トン(58%)のサーマルリサイクルです。要するにゴミ発電です。全国各地に立っているこれですね。
「可燃ごみ」で捨てていいのかな?と思っていましたが、あれはその後、分別されるわけではなく、やはり燃やされていたのですね。
ちなみに、日本だけこれを「リサイクル」と定義していて、本書はこれを疑問視していますし、問題視する指摘も多くあるようです。
リサイクルと定義するかは置いておいて、プラごみの処分方法としては、ゴミ発電には良いことも多くあります。分別・リサイクルするにはコストが高いプラごみを、一括して燃焼効率の高い炉で焼却し、低コストでゴミ処理問題を解決するだけではなく、燃焼による熱を発電や温水プールなどに利用できる効果的な手段という見方で日本ではその技術が磨かれ導入が進んだようです。
だからこそ、国内では広く使われており、「リサイクル」として定義はしていないものの、海外でも利用比率は多いものです。
但し、サーマルリサイクルはゴミ問題への有効な解決手段の一つと捉えられていた一方、別の問題 - 地球温暖化の観点では、大きなデメリットと言わざるを得ません。
(つまり、プラスチック問題は、海洋ごみの問題だけではない!ということにここで、気付くわけです。)
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