第9話 黙秘権を理解できない日本人
刑事事件のニュースで容疑者や被疑者が黙秘していると、多くの人は次のような印象をもつのではないだろうか。
黙秘してるなんて、ほんとにやっているに違いない。無実ならちゃんと説明すればいいのに。
黙秘なんて、弁護士に入れ知恵されたに違いない。
しかし、これは日本の司法の実情をまったく理解していない。もしあなたが無実の容疑で捕まったら、状況にもよるが、黙秘するのがまずは正解である。少なくとも、弁護士が来るまではあまり、べらべらしゃべらない方がいい。
日本の検察や裁判所は、証拠を積み上げて有罪を立証しようなどと、これっぽっちも思っていない。
まずは結論ありきで、その結論に導くためにいかにもっともらしいストーリーを書けるかどうかである。そのためには、あなたに有利な証拠も無視するか、逆に不利に変え、なんでもないことでも、いかにも有罪であるかのようにストーリーを仕立てる。
彼らは、科学者ではなく、作家なのである。
だから、べらべらしゃべって、相手にネタを与えるより、黙秘した方が、いいのである。もっとも、黙秘したからと言って無罪になる保証はないが、彼らが一番困ることであることは確かである。
和歌山毒物カレー事件では、判決文に「カレー鍋の蓋をとって、中身を覗くなど、不審な行動をとり。。。」とある。
カレー鍋の番をしていたのだから、中を覗くのは当たり前だろう。しかも、この目撃証言はほんとに被告かどうか疑わしい。
和歌山毒物カレー事件では、直接的な証拠はほとんどない。だからこんな、些細なことまで、有罪の一因にしないと、彼らのストーリーは完成しないのである。
黙秘権とは、疑われた人間の唯一の武器と言っていい。
しかし、日本では、この憲法で保障された黙秘権を行使するのさえ実に難しい。密室で長期間監禁され、ひたすら自白を強要される。かたくなに抵抗すれば、家族や仲間まで、脅迫の対象にする。ほとんどの人間はおれ、とりあえず認めよう。裁判で真実を言えばいいでないか。と考える。
こうして、供述調書にサインし。冤罪が生まれる。
こんなことをやってる民主主義先進国は日本だけである。
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