男はつらいよ6~ヒロインは若尾文子~を見ての感想。「頭と気持ちは別」であることについて。


面白かった~。前作はちょっと期待外れだったから、今回は笑わせてもらった。山田洋次監督は、寅さんを撮るときは、エピソードを3つ入れるらしい。今回も、3つ。長崎五島の話と、博の独立の話、そしていつもの恋患い。90分のなかに、これらを入れ込む。個人的には、博の独立の話での寅さんの立ち位置がとてもユニーク。

好きなセリフをいくつか。今回の映画のなかで。
寅さん「頭ではわかっていてもなあ。気持ちがそれに従わないのよ。」「変えるべきでない、って思っていても、かえってしまうんだよ。柴又に。」

博の独立はなしの終わりのときの博の潔さ。をれをアシストする桜の素晴らしさ。それに従う博の素直さ。なにかあったら、自分が悪いと思ったら、すんなり謝る。それがとてもだいじ。
若尾文子の祐子「あんなに笑ったり、怒ったり、泣いたり。あんな感情を表すひとたちって、初めて見たわ」

人間は感情が大切。とかく、社会で暮らしていると、秩序を優先して、感情を抑制することが多いけど、それがいけない。感情を●出してみよ。そこから自分というものが分かる。寅さんがなぜ面白いか、それはみんなが感情を表しているから。

さっきの寅さんの、気持ちと頭は 別物、ということ。これは人間特有のものかもしれない。動物はこれが分かれていないだろう。本能=感情であり習性。人間は違う。人間には気持ち=感情=パッションがあり、これとは別に、論理的に考える=頭がある。これだから人間は複雑。感情と感情がぶつかりあうだけだったらいいけど、だれだれに気を遣うとか、そういうのが出てくるし、職場であれば、上司部下の関係性がある。組織に属すればそういうのが出てくる。

家族という最小の組織単位でもそうだ。血のつながりはあるが、感情だけというわけにはいかない。気持ちの思うままに生活すれば、面倒くさくて仕事に行かなくなれば生活費が減っていくし、楽しいからと言ってずっと遊んでいても同じことになる。だから人間は理性=ロジックで最適な行動を次にとろうとするのだ。

寅さんで言えば、感情と感情がぶつかり合う場面が多いが、そんななかでも、6代目の団子やの老舗であるおじちゃんはずっと団子をつくっているし、寅さんにしても、ずっとテキヤ稼業を続けている。自分の持ち場をわかっているのだ。時には感情が優先して体が動くけど、最後は理性を発揮して、いつもの失恋だけど、また家を出ていく。それも理性だろうか。

このストーリーが安定していて、メインエピソードが3つくらいあって、失恋があって、喜びと怒りと、うれしさと、喧嘩と。男と女、子供と老人。かたぎとテキヤと。様々な多様性が混在してるけど、ストーリーは一貫して寅さんの中心の物語。だから面白い。



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