日本人の半数が「高血圧」。 のカラクリ
脚を鍛えれば血圧は下がる!
気温が下がってくると血圧は上昇傾向になる。寒さのために、血管が収縮して細くなるので、心臓はより力を入れて全身に血液を送り出そうとするからだ。
心臓が収縮して大動脈へ血液を送り出すときの圧力が「収縮期血圧」(俗にいう「上の血圧」)で、心臓が拡張して全身の静脈から心臓に血流が流れ込むときの血圧が「拡張期血圧」(下の血圧)である。
2000年までは血圧の正常値は上=140mmHg未満、下=90mmHg未満であり、「高血圧」は上=160mmHg以上、下=95mmHg以上で、その中間は「境界型高血圧」と呼ばれ、もちろん降圧剤の処方はされていなかった。
ところが2000年に日本高血圧学会が高血圧の基準を突然、上=140mmHg以上、下=90mmHg以上に引き下げ、さらには血圧を下げる場合の目標値を上=130、下=85とした。この基準からいけば、日本人の少なくとも約4000万人、多く見積もると約6000万人が高血圧ということになる。
「高血圧」が長く続くと、脳卒中(出血、梗塞)、高血圧性心臓病(心不全)、虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)、高血圧性腎臓病(→腎不全→透析)、腹部・胸部大動脈瘤破裂、脳血管性認知症などを発症しやすくなるので、西洋医学では投薬により何がなんでも140/90mmHg未満に抑え込もうとする。
脳、心臓、胃腸、腎臓、肺など、ありとあらゆる体内の臓器は、血液が運んでくる種々の栄養、水分、酸素、ホルモン、免疫物質などを糧にして、生活(その臓器特有の働き)を営んでいる。よって、血圧を必要以上に無理に下げると、こうした臓器に栄養が十分に届けられないので、健常な働きが完全に遂行できず、以下の表のような副作用が表れることもあるのだ。
なにしろ「血圧」は全身の臓器に血液を送り届けるための「心臓の圧力」である。血圧が上昇するということは、なんらかの理由(血管が動脈硬化で細くなっている、病気の臓器が血液を大量に必要としている、など)があるからだ。
よって、降圧剤なしでも、正常血圧に保てるような生活習慣を身に付けることが肝要である。
●正常血圧を保つ生活習慣
それには「高血圧」の原因を理解し、それに対処する生活習慣を励行する必要がある。
一般的、公約数的には文末の図で示される。しかし、若い人には高血圧に悩む人は少ないし、年齢と共に高血圧患者は増えてくることからして、高血圧は「シミやシワ、白髪や薄毛」などと同じく、「老化現象」の一面がある。
「老化は脚から」ともいわれるように、足、腰、尻など下半身の筋力・筋量が低下してくると種々の老化現象が出現し、血圧は上昇してくる傾向がある(詳しくは拙著『高血圧の9割は「脚」で下がる!』<青春出版社>参照)。
若いときは尻、太ももなどの筋肉が発達しており、その筋肉内を走っている毛細血管の数も多く、下半身に血液が潤沢に巡っており、「頭寒足熱」の健康状態にある。歳と共に下半身の筋力や筋肉が減弱してくると、毛細血管の数も減り、行き場を失った血液は上半身に集まってくる。その結果、上半身の腕で計る血圧が上がってくるのである。
よって、ウォーキングをはじめとする運動、スクワット、ももあげ運動などで下半身の筋肉を鍛えると、上半身の血液が下半身に降りてきて、血圧は下がってくる。
また、筋肉運動により「プロスタグランジン」「タウリン」などの「降圧物質」の産生分泌が増加し、血管が拡張し、また利尿も促進され、塩分、水分も排泄されて血圧が下がってくる。
「老化は脚から」といわれるが、「高血圧の最大の原因は脚(の弱り)」と考えてよい。
高血圧をはじめ、心臓病、糖尿病、痛風、脳卒中などの生活習慣病を防ぐために脚の筋肉の鍛錬は極めて大切である。
(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)https://kkeeii.link/douga/syea-3/
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