見出し画像

「確からしさの証明」こそCSの本質

 東京は雨が降り注いだ先週までと違い、今日の都内はまたとない晴天に恵まれた。
 惜しむらくは緊急事態宣言で気軽に友人を連れ立って外出できな世情だが、東京では延長も視野にはいっておりまだまだ自粛の日々は続きそうだ。
 せっかくの休日なので、最近仕事で関わりも増えており、自身がITスタートアップにジョインしようと思ったきっかけでもある「カスタマーサクセス(以後CS)」について考えを整理したい。

 2017年11月に医療系SaaSにジョインし3年半が経つ。その過程で得た知識や経験をふまえると、CSの本質は「自社の提供サービスは市場に正しく価値を提供しているのか?」との問に対する確からしさの証明なのではないかと思うに至った。

 端的にいえば「利益の最大化」であり、その手法が「正しい顧客を選び、正しく製品を理解・活用してもらい、正しいタイミングで正しい金額を支払ってもらう」というわけだ。
 そして自分はこの「正しさ」「確からしさ」に心打たれたわけであり、それらを実現するにはアジリティあるソフトウェアサービスなのだと信じているわけだ。

 観念的な話ばかりでは仕様もないので、もう少し事業観点で整理してみる。

事業活動=売上増+コスト減

 先に私のポジションを明確にしてから話しますが、私は顧客の満足度向上に係る活動は全面的にやるべきだと思っているし、「顧客のため」との想いで日々活動している同僚を最大限尊敬している。
 そして、それらの活動の結果として売上と利益が最大化されてゴーイングコンサーンな企業活動に繋がっていって欲しいと願っている。

 そんな未来を実現するには非営利団体や公的機関とは異なり、それらの活動の投資対効果はどうなの?という投資家や経営陣からの問に仮説でも良いから答える責任がある。

 で、表題になりますが、CS活動はつまるところこの2つの活動しか無いわけです。
 既存顧客にはたらきかけて売上を上げるか、コストを下げながら売上をあげていくか(営業利益率を高めるイメージ)。

 改めて時間があるときに図式化したいが、CSモデルを創るなら...

 CS活動による売上-CS活動によるコスト
 =(顧客あたり単価*顧客数)-販管費
 =((前年度顧客あたり単価*単価上昇率)+(前年度顧客数*継続率+新規顧客数))-(人件費(CSM+カスタマーサポート+CS Ops+ソフトウェア開発工数+按分されたバックオフィス工数)+その他諸々) 
 
CSの基礎については下記の書籍に詳しく記されているので割愛するが、これらのモデルを法人規模別にわけて考えるのが主流だと思われる。

カスタマーサクセス実行戦略
カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則

 個人的にカスタマーサポートも販管費に含めたい。
 これは利益の最大化、CSでいえば活動の確からしさの証明にカスタマーサポートも多大な貢献をしているはずで、一般的に言われるコストセンターとは違うという願いもある。
 
 法人規模単位でチーム編成される場合、上記モデルと異なりバックオフィス系のコストは独立したものと考えたほうが良い。つまり

=(顧客あたり単価*顧客数)-販管費

=((エンタープライズチームの売上-CSMコスト)+(MBチームの売上-CSMコスト)+(SMBチームの売上-CSMコスト))
-(カスタマーサポートコスト+ソフトウェア開発費+バックオフィスコスト...)

のように括られるイメージ。その方が各チームごとの適切な人員配置や求められる効率化の度合いが鮮明になっていい。

ソフトウェアSaaSにおけるCS活動の力点はどこか

 上述したモデルを前提とした場合、ソフトウェアSaaSのCSにおいて重要になる点はどこか。
 フェーズによっても異なるとは思うが、SaaSを経験してきた私見としては大きく3点。

1. 商品開発
 
これ超大事。特に投資対効果に見合う商品開発。CSは新規Salesより少ないコストで売上を向上させられる、と言われて久しいが売る商品がなければ話は始まらない。
 例えば対前年比170%の成長が事業計画で立てられており、APRU30,000円の商材を扱っている場合、顧客あたり21,000円のアップセルが必要になる。もちろん全顧客アップセルすることはないので優先度つけて紹介することになる。
 パレートの法則にそって全体の20%が収益に貢献するとして乱暴に試算してみると、135,000円と100,000円近いアップセルをしてもらえると考えられるかもしれない。
 その際、「いや、そもそも顧客都合関係なくARPUありきで考えるのはどうなんだ」といった話ももちろんあって、そのバランスをとるのがCSの役割だと言いたいのだ。
 
 つまり、「顧客の20%が100,000円払ってもらえる課題があるのか?顧客の50%に40,000円払ってもらえる課題があるのか?」といった目で顧客と対峙していく必要がある。
 それは担当者1人では難しいかもしれないがチームとしてそういった目をもっておくことが大事。

2. リテンション
 
これは言わずもがな。
  サービス提供初期だと契約期間がきていないケースもあるが、その場合は解約率に影響がある(と考えられる)先行指標を決めて管理したほうが良い。
 往々にしてNPSとして代替されてしまうケースが多いが、アクセスログやログイン率など顧客の行動をベースにした指標と組み合わせるべきだ。

3. テックタッチシフト
 何でも自動化・システム化するべきだ、とは言わない。わたしも医療系のSaaSにいるので対人支援を求める声もあるし、自分自身医療に関わる身として人と人がつながっていくことで得られる効用があると信じている。
 それらを理解した上で、ゴーイングコンサーンな企業活動をするために、コストの最適化には取り組むべきだ。このコストの最適化は本当に難しい。
 顧客に問えばできる限り人に支援して欲しいとの声があがり、現場に聞くといつでも人手は不足している(実際そうだと思う)。一方で、投資家や経営陣からは資本の投資先としてROIが低いと厳しい指摘をうけるし、低いROIでは新たな投資を得るにも一苦労する。
 実務に関わってきた身としては、①まず小さく始めて ②従来の手法と同等の効果があると証明し ③誰でも簡単に実行できるよう支援して ④チームの成果にした上で標準化する というSTEPをいかに小さく速く回せるかが重要だと理解している。
 
やってみせ いってきかせて させてみて 褒めてやらねば 人は動かじ

というわけだ。

余談

 というほど余談でもないが、ここまで説明してきた内容を社内外に対して説得するにはデータが必要だ。
 なので、早いタイミングでCorp-ITやデータサイエンティストのリソースを確保して事にあたるべきだ。


まとめ

 このnoteはREADME.md的な位置づけとして今後アップデートを重ねるとして、「顧客のために仕事をしたいのに会社の方針が違う」と悶々とするすべてのCS担当者の皆さんと一緒に、我々の活動のROIを算出し、企業活動においていかに投資に値するチーム・施策なのか証明していきたい。
 CS関連の知識はもちろんのこと、管理会計やファイナンス、CSに係るチームの具体的なオペレーションや細かいツールの仕様まで言及していきたいと考えているが、筆者に至らない点も多くあると思うので適宜コメント等でアドバイスいただきたい。

 Twitter: @nakayamada62 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?