子どものコロナウィルスごっこについて

「息子がコロナウィルスごっこをしています」
◆この遊びは不謹慎でしょうか?
今回は、とあるお母さまが雑談でお話ししていた内容です(当カウンセリングルームでのご相談ではありません)。
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新型コロナウィルスが猛威を奮い、不安が続く中でも、5歳の息子は特に変わりなく元気です。いつものように楽しそうに遊んでいたある日、息子が【コロナウィルスごっこ】をしていました。
新型コロナウィルスについては、非常に緊迫した雰囲気があり、さらに重症者・死者も出てしまうくらいの事態です。それにも関わらず、息子は「コロナウィルスだー!」と言いながら、おもちゃのバットを振りかざし、襲いかかってはしゃいでいる…。この深刻な状況を理解できていない!何よりあまりに不謹慎だ!と、とても受け入れ難い出来事だったと、お母さんは嘆いていました。
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◆心のケアに役立つ遊びもあります
この話をおうかがいし、心理士Tは「津波ごっこ」「地震ごっこ」のことを思い出しました。
「津波ごっこ」「地震ごっこ」とは、阪神淡路大震災・東日本大震災など大きな災害の発生後、避難所生活を送る子どもたちの中で見られた遊びのひとつです。さらに復興後も、また、直接的な被害のない地域の子どもたちにも、この遊びは確認されたと言われています。
このような遊びは、心理学の観点からみると、
"子どもたちは、抱えた大きなストレスやトラウマを、自分なりに表現し、うまく付き合い、うまく乗り越えようとしている"
と考えることができます。
つまり、自分で自分の心をケアする、【自己治癒】の動きであると言えます。
不安や恐怖心、悲しみ、戸惑いなどを、子どもたちはまだ言葉で上手に表現することができません。自らが具体的解決しようのない事柄を、子どもは自分の手の届く範囲としての遊びに置きかえます。そして、自分の気持ちをちょっと安定させるのです。

◆思いきり遊ばせてあげましょう
このような観点をふまえ、あらためて今回のお母さんのご相談を見てみましょう。
新型コロナウィルスの流行により、子どもたちが感じている不安やストレスはとてつもなく大きいと考えてみるのは、いかがでしょうか。
大きな自然災害により経験する被害とは異なり、日常生活にじわりと存在し続ける不自由さや不安、ピリピリした空気感を、子どもは感じとっていると思います。
連日ニュースを見てはため息をつく大人を目にし、
外出時はマスクをつけるよう鬼のような剣幕で迫られたり、
手洗いうがいが足りなければおやつなしと怒られ、
楽しみにしていたイベントは突然の中止延期、
大人の会話はコロナコロナコロナ…
でも、子どもたちは、なぜこのような状況であるのかを、大人ほど理解できるわけではありません。
何かよく分からないけれど、とても落ち着きのない大人をみて、子どもは分からないからこそもっと大きな不安を感じているのです。
新型コロナウィルスごっこをして、その不安とうまく付き合おうとしているのならば、思いきり遊ばせてあげてほしいと思います。「自己治癒」を試みるなんて、子どもってすごいなぁという視点を、ぜひ持ってみてください。

◆不安な気持ちはお互いさまです
大人も子どもも、不安な気持ちを我慢する必要はありません。大人は、子どもに対して分かりやすい言葉で説明してあげましょう。嘘をついてただ安心させるのではなく、大人の不安な気持ちも、子どもの不安な気持ちも、お互いにそのまま受け止め合えるといいですね。そして、正しく感染症予防ができるように、伝えましょう。
例えば下記のように、ちょっと言い方をかえてみるなど、できそうなものがあれば取り入れてみましょう。ちょっとずつで大丈夫です。
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・連日ニュースをみてはため息をつく
→→「ちゃんと知るためにニュースみるのも大事なんよ〜」
・外出時はマスクをつけるよう鬼の剣幕で迫る
→→「マスクよく似合ってる!可愛いし、つけとこ!」
・手洗いうがいが足りなければおやつなしと怒る 
→→「早くおやつ食べたいね、一緒に洗おう!」
・楽しみにしていたイベントは突然の中止延期
→→「ほんっと残念だよねぇ。絶対また行こうね。」
・大人の会話はコロナコロナコロナ… 
→→いつものテレビアニメ、絵本の力もどんどん借りよう!
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コロナウィルスごっこも、思いきりさせてあげて大丈夫です。
不安な気持ちを表現している、うまく付き合おうとしている、自分で自分の心をケアしている、という視点で捉えれば、「不謹慎だ」という考えは少し減りませんか。

そして大人も、子どもに対して不安を煽ってしまったのではと自責する必要ありません。不安なことを不安だと感じていい、不安だと表現していい、ということも子どもが感じとっているからこそ、安心してコロナウィルスごっこができているのです。

何はともあれ、コロナウィルスごっこなんてやってたね、と話せる日が来るよう、どうか早くこの新型感染症が終息することを願うばかりです。

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大阪中津臨床心理カウンセリング
http://osaka-shinri.site/

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