見出し画像

自分で歩いて食べて寝るお金

以前に勤めていた住友林業時代、3年間のインドネシア駐在を経験しました。
その仕事の中で、頻繁に行く機会があったスンバ島は、コモドオオトカゲで有名なコモド島の南100kmぐらいに位置しています。
9割以上がイスラム教徒のインドネシアですが、スンバ島は珍しくキリスト教徒の多い島で、日曜日は街の教会からアップテンポの讃美歌が聞こえてきます。

スンバ島民にとって、家畜は最も重要な財産です。
庭の水牛を「いくらの価値?」と聞くと「角が立派だから300万円!」といった答えが返ってきます。
ずいぶん高い感じがしますが、実はスンバ島民に300万円の水牛を現金で買える人は殆どいないはずです。
郊外に行くと牛の行列が道を渡っていて、計算上は数千万円~の価値ですが、その用途は結婚する時のお嫁さん実家へのプレゼントなのだそうです。
人気の女性を奥さんに貰う時ほど、たくさんの立派な家畜が必要で、若者たちは結婚するその日のためにせっせと牛を繁殖させ太らせているのだそうです。
また、島民間でトラブルが発生した時のお詫びの品、感謝の意を示す時のお礼の品も家畜で、家畜無しに農村社会を生きる事は困難です。
家畜=食料というより、家畜=通貨そのものというイメージが近いです。
彼らは、通貨が歩いてどこかに行ってしまったり、草を食べて子供を産んだり、病気で死んでしまったりする世界観で生きています。

金利とか物価変動とか難しく感じますが、我々もお金のことは牛か豚かだと思ってしまえば単純なのかも知れません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?