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原材料は青森県産りんごと、あたたかいアドバイス(6名分)。とあるりんごジュースの物語。

最近、全国の生産者同士で物々交換が行われている。
自身が丹精込めて育てた農産物や、船に乗り漁に出て獲ってきた水産物を、旬の時期に生産者同士で交換しあうのだ。

そんな中、「生産者と消費者で物々交換を行った」と青森県弘前市のりんご生産者、りんごママこと山上亜木子さんから耳にした。

生産者同士なら、自身の生産物同士を交換できる。では、生産者と消費者の物々交換とは…?

その秘密を探ってみた。

知りたいのは消費者の生の声

りんごママこと山上亜木子さんは青森県弘前市のりんご農家。2019年からインターネットで自身の育てたりんごを販売し始めた。その一貫で、りんごをジュースにして販売することを思いついた。

しかしながら、りんごママはりんご農家ゆえ、家には常に自分の家のりんごが並び「他の人のりんごを食べたり、りんごジュースを飲んだりしたことはなかった。」そう。

だからこそ、りんごジュースを作る上で、一番欲しかったのはお客さんの生の声。そこでりんごママは、消費者の声を聞きながら商品開発を進めようと、ポケットマルシェでいつもりんごを購入してくださるユーザーさんを中心に「商品開発のお手伝いをして欲しい」と直々に連絡をし、協力を依頼したという。

その時の様子を、りんごママのファンでありユーザーの茶太郎さんはこう振り返る。

(メッセージには)「おばちゃんも皆さんと一緒に成長したいんです」って書いてありましてですね。これまでいただいたどんなお手紙よりも背筋が伸びた感じがしたのを覚えています。りんごママの成長意欲と向上心に触れて、こちらのエンジンにも引火しちゃって。

また、別のユーザーのなんちくピヨりさんはこう教えてくれた。

12月25日、「りんごジュースを飲みながら、ジュースのモニターと、私のzoomスキルをなんとかする会のご案内です。」とりんごママからTwitterのDMで連絡が来ました。りんごジュースと農カレンダーを送るので、ジュースモニターとzoomの使い方レクチャーをしてくれないかという「物こと交換」のお誘いでした。(中略)生産者さんたちの「物々交換」を羨ましく見ていたので、「物こと交換」という提案が嬉しく「是非お願いします!」と即お返事しました。

りんごママの呼びかけに応えた6名のユーザー

そんな、りんごママの呼びかけに応えたのは6名のユーザーさん。りんごママのりんご以外にも、たくさんの商品を購入している方が多く、食べ物に詳しい方々ばかりだ。

りんごママと6名のユーザーさんはオンラインで様々なやりとりを交わしあったという。

その時の様子を、りんごママとやりとりをしたユーザーの茶太郎さんはこう振り返る。

(注:りんごママさんに)もっともっとヒントをもってほしくて、1月はもう本当に本当にあれこれあちこちの大量のりんご加工品を買い漁り食べまくり、その中で選抜された本当に美味しいと思うやつだけ詰め合わせで(注:りんごママさんに)送ったりして笑

そうして始まったりんごジュース作り。ユーザーさんのこだわりようは半端じゃなかった。

例えば瓶の大きさと形について。当初は高級感のある細くて長いものを検討していた。しかし、

りんごママのジュースは、甘さが強めで後味はスッキリ爽やか。リッチさというより、家族で楽しめる味。そのため、瓶は高級感のある細長いタイプではなく、丸みのある一般的な形に(した方が良さそう)。

という意見もあり、最終的には丸みの帯びた形の瓶で販売することになった。

商品の顔、ラベルに関しても様々な意見が出た。りんごジュースと言えばその多くは農園のロゴやりんごのイラストが貼ってあるのが一般的だが、

「りんごママのアイコンは印象に残る」

として、りんごママのアイコンをメインに使用することになった。

ちなみにこちらがラベルの初稿。

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フォントにもこだわった。ユーザーさんにいくつものフォント案を叩き台として出してもらい、良いフォントを吟味した。

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そうして、やっとのことで出来上がったのがこちらのラベル。

初稿と比べ、りんごママのアイコンが中心に寄っていてりんごの数も多くなっている。みんなで意見を出し合い、微修正を加えていった結果、このデザインに落ち着いたそうだ。

飲み方に関してもユーザーさんから意見が出た。なんちくピヨりさんはこう振り返る。

私は、ちょうど直前に体調を崩して温めたジュースを飲んでいたので「ホットりんごジュース」を推しました。そこからシナモンやスパイスを加えるのも面白いんじゃないか、熱燗推奨って謳ったらキャッチーだね、などなど話が広がりました。
他にも、お酒を割ってサングリア風にする、煮込み料理やお菓子に使うなどなど、皆さんの豊富な知識と経験からいろんなアイディアが出ました。温ジュースとお酒のジュース割りはその場で何人かが試して「これ美味しい!」と大盛り上がりでした。

生姜と甘糀を入れて、温かいりんごジュースを作ったユーザーさんもいた。

やりとりすること3週間。完成したのはこちらの商品だ。

ラベルの裏側にはりんごママの粋な計らいでこんなメッセージも。

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原材料に「暖かいアドバイス(6名分)」とか書いてあって泣ける。というかこの文章を書きながら泣いている。

6名の想いが詰まったりんごジュースは他のお客さんからも好評で1週間も経たずに完売した。

参加したユーザーのうち一人はこう語ってくれた。

出品からあっという間の完売まで、応援・宣伝しながら皆んなで見守っていました。ちなみに、私もお客さんとしてジュースを購入しました。皆んなで作った想いの詰まったりんごジュースの瓶は、今も大切に玄関に飾ってあります。

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