見出し画像

漫才台本「OH!バイオテクノロジー」

坂田利夫「しかし、今の世の中は、人間関係が寂しいでんな」
前田五郎「と言いますと?」
さ「大阪からここへ来る時のことですが、新幹線のホームのベンチで、昼間から酒飲んで男が寝てますねん」
ま「この季節にベンチで寝たら、風邪ひいてしまうがな」
さ「ところが、誰一人として『もしもし、そんなとこで寝てたら風邪ひきますよ』と注意する者がおらん」
ま「で、君が注意した訳やな」
さ「私は注意出来へんがな」
ま「なんで?」
さ「寝てたんワシやがな」
ま「寝るな!」
さ「待ち合わせの時間より、一時間も早よ来たもんやから、カップ酒飲んで待ってるうちに、寝てしもたんやがな」
ま「情けない男やなぁ」
さ「私が寝てると、突然、私の上にぶつかってき来た男がいまして」
ま「ぶつかって来た男が」
さ「びっくりして見ると、五人の体格のええ若い男がホームでプロレスごっこみたいなことしてますねん」
ま「そんなことしたら、周りの人に迷惑やないか」
さ「『バカモノー!ホームでプロレスごっこするとは何事だ!人の迷惑のことも考えんか!』」
ま「……よう言うたなぁ」
さ「と、心の中で言いまして」
ま「心の中だけでかい!」
さ「ほな五人の男が私を見て『あっアホの坂田や、アホの坂田や!』とこうや」
ま「失礼な奴らやねぇ」
さ「私も線が切れたがな『アホの坂田で悪かったのう!なんぼアホでも、常識のないお前らよりましじゃ!!』」
ま「そらそうや」
さ「と、心の中で言いまして」
ま「また心の中だけでかい!ほな実際に口ではどう言うたんや?」
さ「『アホの坂田でんねん、サイン致しましょか』」
ま「情けないわ!」
さ「その代わり、その五人が列車に乗って、ドアが閉まった時に言うてやったがな」
ま「どう?」
さ「あんたバカね、ホホホ!」
ま「遅いねん!言うのやったら、本人の前で言え」
さ「そしてこの松尾町にやって来たんですが、さすが関東の町ですね、大阪と違ごてアカ抜けてますわ」
ま「ホー、松尾町のどういうとこが、アカ抜けしてると感じました?」
さ「さっき町の中を歩いてますと、交差点がございまして」
ま「交差点がね」
さ「その交差点の信号が壊れていて、青と黄色しかつきまへんねん」
ま「信号が青と黄色しかつかなんだ?」
さ「アカ(赤)抜けしてますねん」
ま「……ほんまに、赤のつかん信号なんかあったんかい。あったら事故が起こるで」
さ「そやから事故が起こったがな」
ま「どんな事故が?」
さ「米を積んだトラックとアズキを積んだトラックがドカーン!」
ま「衝突したんやな」
さ「そこへ、水を積んだ散水車が突っ込みまして、おまけに三台が燃え上がりました」
ま「米を積んだトラックとアズキを積んだトラックが衝突してそれに水を積んだ散水車が突っ込んで燃え上がった?凄い事故やなあ」
さ「火が消えた後を見たら、一面に赤飯が炊きあがってまんねん」
ま「ほんまかい!」
さ「食べてみたけど、なかなか美味しい赤飯でしたよ」
ま「ようそんなええ加減なこと言うで、しかし、赤飯で思うんですが、食べ物に関しての昔の人のアイデアはすごいですね」
さ「と言いますと?」
ま「『赤い色をしたご飯を作りたいのやけど、どんな工夫をしたらそんなご飯が作れるやろ』というのが、赤飯が考えられたきっかけや思うねん」
さ「でしょうね」
ま「もし君やったら、赤いご飯を作るにはどうしたらええと考えました?」
さ「米に絵具混ぜて炊いたらええやないか、と思たでしょうね」
ま「単純すぎるわ!そんなもん食えへんやないか」
さ「アズキと一緒に炊くなんて、当時としては、すごいアイディアやったんやろね」
ま「いろいろと試行錯誤を繰り返しながら出来たと思うよ」
さ「シコーサクゴで思い出しましたが」
ま「何を?」
さ「うちのおかん、シソーノーローでんねん」
ま「関係あるかい!赤飯だけやなしに、例えば野菜サラダなんかでも、どんな野菜を組み合わせて混ぜたら、おいしいものが出来るのやろ、といろいろ考えられて作られたもんやと思うよ」
さ「いや、野菜サラダが作られたきっかけは、偶然やったと思うわ」
ま「偶然というと?」
さ「ジャガイモを積んだトラックと、人参とレタスを積んだトラックが衝突して、そこへドレッシングを積んだトラックが突っ込んで、偶然、野菜サラダが出来たん違うか」
ま「出来るかい!トラックの衝突の話はもうええねん」
さ「確かに、食べ物に関する昔の人のアイディアいうのはすごいなと思いますね」
ま「食パンとハムを一緒に食べる方法はないかと考えて作り出されたのがハムを食パンに挟んだハムサンドやわな」
さ「魚のすり身と板を一緒に食べる方法は無いかと考えて作り出されたのが、すり身を板にくっつけたカマボコですわ」
ま「カマボコが板まで食えるんか!!そんなことを言うてるから、君は人から、カマボコアホなんて言われるんですよ」
さ「カマボコアホ?」
ま「アホが板についてるいうて」
さ「やかましいわ!」
ま「考えてみると、食品と食品を組み合わせて作られた食品言うのは、世の中に数限りなくありますね」
さ「あるねぇ、例えば、天ぷらの中にごぼうが入り込んでるのがごぼ天」
ま「レンコンの穴にカラシが詰まってるのが、カラシレンコン」
さ「ちくわの穴にジャムが詰まってるのが、ジャムチク」
ま「……そんなんあるか!?」
さ「知らんか?なかなかいけるんですよこれが」
ま「パンにハンバーグがセットになったのがハンバーガー」
さ「パンにお茶がセットになったのもありますね」
ま「パンにお茶がどうセットに?」
さ「パンの間に抹茶の粉が挟んであるねん」
ま「ホー、で、それの名前は」
さ「抹茶のことを英語でどういう?」
ま「ティー」
さ「それがパンに挟まってるねや、パンティーやないかい」
ま「あるんかいほんまにそんなもん!それにしても、いろんな組み合わせの食品がありますが、もうこれ以上は新しい組み合わせの食品は出てこんでしょうね」
さ「ところが私、今、非常時に役立つアイディア食品を考えてまんねや」
ま「非常時に役立つアイディア食品?」
さ「ちくわありますやろ?その穴の中へ乾電池を入れて、先に豆電球をつけまんねん」
ま「で、それはなんや?」
さ「食べられる懐中電灯」
ま「アホな!まあこれからは、組み合わせよりも、かけ合わせて出来た食品というのが、どんどんと出てくるでしょうね」
さ「かけ合わせるというと?」
ま「例えばイノシシと豚をかけ合わせて産まれたのがイノブタや、うまいで」
さ「なるほど、かけ合わせて、両方のええとこどりするわけやな」
ま「抹茶や果物なんかでも、かけ合わせの妙によって、どんどん新しい品種が産まれてるんですよ」
さ「田舎の私のおじさんも、そのかけ合わせの妙に挑戦してるがな」
ま「何と何をかけ合わせたん?」
さ「松と竹……ほな、こんな大きなマツタケが産まれるの違うやろか言うてね」
ま「君のおじさんだけあって、しょうもないこと考えるなぁ。で、松と竹をかけ合わせて、マツタケは産まれたんかい?」
さ「竹松が産まれました」
ま「……なんや竹松て?」
さ「おじさんの5人目の子や、『もういらん』言うてるのに、嫁はん腹ぼてになってしまいまして」
ま「おじさんの子供のことはええねん。松と竹とかけ合わした結果はどうやったんや?マツタケは産まれたんかい」
さ「マツタケ産まれまへん」
ま「……産まれるわけないわな」
さ「しょうがないから、おじさんは夏みかんと梅干しの木をかけ合わせましてね」
ま「夏みかんと梅干し?」
さ「夏みかんは皮が分厚いけど中は食べれる、梅干しは外は食べれるけど、中の大きな種は食べられないでしょ」
ま「なるほど、それをええとこどりして、外も中も食べれる新種を作ろとしたんやな」
さ「ところが世の中は、そうはうまくいかんもんでんなぁ」
ま「というと?」
さ「出来た新種は、外が夏みかんで、中が梅干しでんねや。皮向いたら、中に大きな種が入ってるだけでんねや」
ま「最悪やないかい!しかし、これからは、かけ合わせだけやなしに、バイオテクノロジーで、新しい食品が作れるんですよ」
さ「なんですか、そのバイオテクノロジーて?」
ま「知らんかバイオテクノロジー、通称、バイオて言うやろ」
さ「あの弾くと音の出る」
ま「そらバイオリンや!そのバイオによって、何でもがコロっと変えられるねや」
さ「何でもがコロっと?」
ま「そうや、例えば、君とこの妹、おっぱい小さいやろ」
さ「小さい小さい」
ま「その小さいおっぱいが、バイオによって大きさはバイオ」
さ「そら『倍よ』やろ!」
ま「バイオによって、君の頭の毛かて増やせるんですよ」
さ「私の髪の毛増やせるの」
ま「今の量の十バイオ」
さ「そのシャレはええねん!」
ま「うちの兄貴見てみ、先日までツルツルやったけど、今月からはフサフサやろ。それがバイオやで」
さ「嘘つけ、あれはカツラや!」
ま「まあ近い将来、遺伝子組み換える注射一本で、なんでもが変えられる時代が来ますから、それがバイオテクノロジーや」
さ「注射一本で……ほな、私の髪の毛を増やそと思たら?」
ま「頭に、トウモロコシの遺伝子を注射するねん。ほな、黄色い長い毛、頭の先っちょから生えてきます」
さ「……トウモロコシの遺伝子て!」
ま「そやから、将来は注射一本でどんどん食品改良が出来ますからね」
さ「と言いますと?」
ま「例えば、普通の安物のカニがいるとしますやろ」
さ「安物のカニがね」
ま「そのカニに、やっぱりトウモロコシの遺伝子を注射しますやろ、毛ガニになるがな」
さ「……ええやないか」
ま「普通のチチ牛がいるとするやろ」
さ「チチ牛がね」
ま「そのチチ牛に、オレンジの木の遺伝子を注射しますやろ……フルーツ牛乳出すようになるがな」
さ「すごいやないかい!ほな、チチ牛にいちごの遺伝子を注射したら?」
ま「もちろん、イチゴミルクを出すようになりますよ」
さ「ということはですよ、ニワトリに牛の遺伝子と小麦の遺伝を注射すると、そのニワトリは、カステラを産みまんねんな?」
ま「なんで?」
さ「カステラは、卵と牛乳と小麦粉でできてまんねやろ」
ま「なるほど、君の言う通り、そのニワトリはカステラを産むことになります。しかし、言うときますが、ニワトリに牛の遺伝子を注射したら、そのニワトリ、『モォー!モォー!』と鳴くようになりますよ」
さ「気色悪いな!しかし、早いことそういう便利な時代が来てほしいでんな」
ま「もうすぐ来ますよ」
さ「来たらまず一番に、私はトウモロコシの遺伝子を注射してもらいますわ……ほなフサフサ」
ま「確かに毛はフサフサになるけど、副作用はありますよ」
さ「副作用というと?」
ま「トウモロコシの遺伝子ですよ。皮膚がブツブツになって、黄色うなりますよ」
さ「ほな、トウモロコシやめて、毛ガニの遺伝子注射してもらいますわ。毛は同じように生えまんのやろ」
ま「確実に生えます」
さ「よかった」
ま「でも副作用として、横に歩くようになります」
さ「もうええわ!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?