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【最強の写真学習】 これで基礎を固める <前座> 最良の参考書を紹介

お話の内容は【初心者向け】です。

おはようございます。
アラスカの中島たかしです。

今回も、米国で写真学習しつづけている僕が、欧米の情報をベースに、日本語で解説をしてゆきます。

今日から10回にわたって行うのは、海外の写真参考書 Creative Nature & Outdoor Photography という最強の写真教科書についての解説です。

なぜ最強かといえば、この本は、テクニックだけでなく、「何を伝えたいのか」という、撮影をする上で根本に添えるべき考えが身につく本だからです。

【まえおき】
本書の著者ブレンダ・サープの写真学習本は、日本では、ナショジオから「風景を極める」というタイトルで一冊出ています。

しかし、アメリカで評価の高い Creative Nature & Outdoor Photography のほうの翻訳はないようです。

ですので、英語を英語のまま理解し、本書を実際の撮影の基礎に添えてきた僕の経験から解説し、みなさんに多くを掴んでいただきたく、書き始めました。

とくに、近年はカメラの精度が上がり、カメラ任せに撮っても、非常にキレイに撮れてしまいます。では、どこで愉しむのかといえば、やはり表現ということに尽きます。

そしてこの本は、より基本的で「表現すること」がメインに書かれた良書です。

本書は、僕がアラスカに留学し自然写真を撮影してゆく上で、重要な役割を果たしてくれました。12年たった今でも頻繁に読み返しており、これまでに20冊以上の読んできた、評価の高い基礎学習本のなかで、最良の基礎本になります。

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僕が書きすすめる記事、全10テーマでは、各記事ごと、作例として、僕が撮影した写真も取り上げていきますので、そこからも、感じを掴んでいただけたらと思います。あくまで、著者ブレンダさんの考えを汲み取った形で進めてまいります。

では、今日の内容です。

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【記事ジャンプ用】


今日の内容1
【著者がもっとも言いたいこと 〜本書のゴール〜】

写真を撮る方は、こんな問いかけを自身にしたことはあるでしょうか。

"What are you trying to say with this photograph?"
この写真で、何を言いたいんですか?

これは本書の中で最も基本的な「なぜこの写真を撮るのか」という根っこの部分を問うものであり、これを繰り返し自分に問い、答えを集めていくと自分の写真が見えてくる、と彼女はこの本の中で強調しています。

これに加えて彼女は、なぜ多くの人は風景写真を撮ったあと、残念に思うことが多いのか、あるいは、失敗してしまうことが多いのか、ということについても、その理由をハッキリ明言しており、それは、

「多くの人が、撮影する時にあまりにも無意識に撮っている」

と言っています。

ここの部分、今後10回にわたって皆さんにお伝えしてゆく各章の根底に添える部分なのですが、風景を見たときに「綺麗だ」と感じてシャッターを押す、これを習慣にしていると、じつは撮影技術&テクニックは使えないのです。

つまり、感動してシャッターを押すということは間違っていないんですが、そのあいだが一つ抜けているということをこの人は本の中で語っています。

では、撮影の際に、どうステップを踏むべきかといえば、

① 風景や生きものをみて感動する
そのどこが自分を感動させたのかを、立ち止まって考える
③ シャッターを切る

この2の部分が、大抵の人は、すっ飛ばしていると言います。

要約すると本書のゴールは、撮影の前に感動のワケを考え、それを伝える術を学び、いま読んでいるあなたがそれを習慣にすることにあります。繰り返します。習慣にすること、です。


今日の内容2
【写真をふくむアートについて】

ところで、アートというのは、皆さんどんな印象をお持ちでしょうかね。写真もアートの一部であると考えられているのが西洋ですが、日本でも言えることは、芸術というのは、分解すれば「感性」と「センス」と「テクニック」の3つ、と言うことだと思います。まとめると、


感性とは、自然を見たときに感じて、自分の中に沸き起こる「感情の幅と深さ」です。

センスとは、それを表現にまで引っ張り出してくるときに、「何をチョイスするか」ということです。

テクニックとは、引っ張り出してくるときに使う「」です。

テクニックというのはスキルと言い換えてもいいので、これは学べるものだとみなさんもご存知と思います。しかし、感性とセンスというのは、人それぞれに、生まれつき備わっているものだと考えている人はいまだに多いですよね。僕は、この本を読んで、これら3つのことは、人が言葉として分解しただけで、じつは一連のものと考えています。そして、この能力は練習すれば引き上げることができるものだと思うようになりました

それを、著者ブレンダは具体的にこの本の中で、

●感性は拡張でき、
●センスは研ぐことができる。

と言っています。詳しくは次回以降の記事でお話します。

今日の内容3
【著者紹介】

本の著者であるブレンダー・サープは、この本を書き上げるなかで強いモチベーションとなった、強烈な体験があると言います。

それは、彼女がうまく写真が撮りたいと思って様々なワークショップに通っている中で出会った、ナショジオの伝説的なフォトグラファー、サムアベルのワークショップのときのことです。そのセミナーに参加していた彼女は、自分の今まで撮った渾身のポートフォリオを、サムに見せたんですね。そして彼に言われたことがありました。

「この写真は、ポストカードみたいなもんだ。それ以上でも以下でもない」

強烈ですよね。伝説的フォトグラファーにここまで言われたら、生きるか死ぬかの瀬戸際…

つまり、これは見てくれる人に対して、なにもコミュニケーションをしていないよということを言われたわけです。かなり厳しい言葉だと思います。

それ以降彼女は、(この本の中にも何回も出てくるんですけれども、)

"What are you trying to say with this photograph?"
この写真で、なにがいいたいの?

つまり、その見せたい写真で、あなたは何を言いたいんですかという根本的なクエスチョンですよね。これこそが、彼女がこの本を書くモチベーションになっているんですよね。

本書の序章の中で他にも彼女は、「巷の参考書は、テクニックが何のために実際に使われるべきなのか、というところがあまり深く語られていない。」と言っています。そのために「私から皆さんに伝えたいことがある」という、そういう強い思いがこの本を書き上げる原動力となったんですね。読んでいると、彼女の気持ちが伝わってきます。

以降、本書の第1章から第10章までを語っていく上で僕の方でもこのブレンダの想いは、つねに背景にしっかりもった上で話を進めていきたいと思います。

今日の内容4
【本書から学んだ僕の作例1】

「作例」というと偉そうになってしまいますが、彼女から本書をつうじて学び、実際に撮影してみたものを、ご紹介してみたいと思います。

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こちらは、アラスカ州デナリ国立公園の上空から撮影した、空撮写真です。この山は、デナリ山です。昔はマッキンレーという名でよく知られた山で、6190メートルの北米大陸最高峰の山です。

多くの要素を込めた写真ではあるんですけれども、僕がいちばんに伝えたかったことは、一言でいうと「山の荘厳さ」です。しかし荘厳と言うと、難しい言葉なので少し伝わりにくいかもしれません。つまり、その山の力強さと、堂々としたすがた。山の勇姿ですよね。ここに僕は強く惹かれたのです。

これを表現するために使ったテクニックとしては、まず二つ大きなものがあって、

① 一つは縦位置で撮影しているということ
② もう一つはモノクロで表現しているということ

この二つです。 さらに細かいことを言うと、

③ シンプルな構図を心がけて撮影
④ 山頂への目線の誘導

この二つも加えています。

この日は、ちょうど風が強く吹いていて、飛行機もすごく揺れたんですよね。大変だったんですけども、ちょうど雲がその山の上に少しかかっていてその強風が吹いている様子、この様子というのが、自分が表現したかった「山の力強さ」に加わって、さらに雲があったおかげでそれを表してくれた。風は見えないですからね。雲が味付けをしてくれた、ということがあります。ここは偶然の部分ではありますが、意識してないと、それを写真の中に入れようとは「思えない」ですよね。

もう一つは目線の誘導ということを意識しています。この写真の下の部分に山の稜線が見えますね。写真は南東方向から北西方向を向いて撮影しているんですけれども、この稜線は、山頂へ行くための登山道でもあるわけですね。飛行機で、山脈をぐるぐる回ります。この構図の位置というのは、そのちょっとずれるだけでだいぶ変わってくるんですよね。撮影チャンスは何度かあったものの、いまある写真のこの稜線のラインというのが最高の位置でした。この線を目でたどると、山頂にたどりつきます。

以上がテクニックとして用いてるものですけれども、この写真には、ストーリーがやっぱりあるんですよね。

個人的な記憶、思い出でもあるわけですけれども、 ここが以降、これから紹介していくブレンダの本で、彼女が写真を撮る人に対して必ず意識をして動くべきところ、あるいは自分の記憶に留めておく必要があるんだよと言っている部分です。

さて、そのストーリーです。少し長いので、個人的なストーリーは写真を撮る上で重要だということを踏まえて、飛ばしてもらっても構いません。(文体は口述筆記になっています。)

この山は登山家の植村直己さんが1980年に世界で初めて冬季単独登頂をした山です。彼は5500メートル地点ぐらいですか、この山が6190 M ですから、8合目か9合目ぐらいのイメージですね。山頂までは行って最後のアタックは成功したものの、帰りにクレバスに落ちてしまった。あるいは雪崩に飲み込まれたのか。これは今となっては誰も分からないわけですけど、彼が亡くなった山なんです。たぶんそこあたりだと言われている、その地点というのが、この写真の左側の稜線のあたりにあるんですね。まあ、細かい所はもちろんね誰も知らないんです。だから、ご遺体というのは見つかっていないわけなんですけれども、今でも植村直己さんというのはこの山に眠っているんですね。日本人である登山家が、アラスカに来て北米最高峰の山を登りきり、しかも厳冬期の山に登って帰らぬ人となったというのが、まあ僕がアラスカに行くまで実は知らなくて、この植村直己さんの話を知った時に、かなり感慨深いものがありましたね。そのことも含めて何度もこの山は撮影しているんですけれども、これが僕の個人的な記憶にあり、印象としては強烈にあるので、内容は少し悲しい部分でもあるんですが、同時にこれは誇らしいことでもあるんですよね。そのアンビバレントな感情というのがこの写真には個人的なものとして含まれてます。

ちょっと個人的な思い出や記憶ということもあるので、なかなかこう写真だけでは伝わらない部分ではあるんですが、写真展をやった時などは、そのお客さんにこの内容を書いたり、山の険しさ厳しさ自然の荘厳さというのキャプション、つまり文章ですよね、文章に書き記して見てくれる人により写真を楽しんでもらう、ということは、表現をする者の責任として、表現をしています。

少し長くなってしまいましたけれども、一つの作例としてブレンダ・サープのこの本から、ベースとして学んだことを実際に撮影に応用したものになります。

今回は、以上になります。

このシリーズではブレンダ・サープの著作Creative Nature and Outdoor photography というこの本をベースに、本書で書かれている内容をご紹介しつつ、僕がこの本で学んだことと、実際に外へ出て撮影したり、応用したそういった作例なんかもご紹介しながら進めていきたいと思っています 。

この記事をここまで読み進めてくれた方は、おそらく熱のある方ですね!写真の作品づくりも考えられている方だと思います。

これからも英語圏の教材をベースに、ハイクオリティな写真を制作するための内容を少しづつ記事にしていく予定です。

ぜひコメント・ご指摘くだされば幸いです!

                            中島たかし
              Nakashima Photography 公式ホームページ


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