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美容室の開業 見積書を高くして余分にお金を借りても大丈夫?

 「借入用の見積書」という言葉を聞いたことはありますか?余分にお金を借りたいなら高めの見積書を出しますよ?と内装業者からアドバイスを受けたという方から相談を受けました。余分に借りたいから多めの見積書を作る。つまり、実際に支払う工事費用よりも水増しした見積書でお金を借りてしまっても大丈夫なのか?というご相談でした。今回は、「見積書を高くして余分にお金を借りても大丈夫?」についてご紹介します。

〇余分にお金を借りたい
 できる事ならお金は借りられるだけ借りたいと考えている人は少なくありません。私自身も、美容室の創業融資においては借入は最低限にしておいてできるだけ自己資金で出店費用を賄うという考え方はお勧めしていません。 
 その理由は、創業融資はお店を開業した後にお金を借りるよりも圧倒的にお金が借りやすいためです。創業融資を受けた後でやっぱり追加でお金を借りたいと思っても、開業までのキャリア、自己資金、事業計画だけで融資が受けられる創業融資と違って、開業した後の事業がどれだけの利益を出しているのか、どれくらい納税しているのかで融資が受けられるかが決まります。一般的には開業した後の半年後、1年後は追加融資は受けられないと考えておくべきで、こういった事情を考えると、自己資金として準備したお金を開業時に使うのは最低限にして、開業に必要な資金は出来るだけ創業融資で調達した方が良いと考えています。

〇どうやって余分にお金を借りるのか?
 できるだけお金を借りるためにはどうしたら良いのか?金融機関からお金を借りるためには、それだけのお金が美容室の開業で必要となることの根拠が求められます。その根拠となるのが内装工事や美容機材などの見積書となります。
 融資で借りるお金には「設備資金」と「運転資金」に分かれます。一般的には一般的に設備資金として借りた方が返済期間を長くすることが出来ます。設備資金が10年程度、運転資金が5年から7年程度の返済年数となります。借りたお金はできるだけ早く返した方がいいと考える方もいますが、たとえ利息を支払ってでも毎月の返済金額を少なくすることが、お店の資金繰りの負担を少なくでき、結果としてお店がつぶれにくくなると言えます。そのため、返済年数を長くお金を借りるために、設備資金である内装工事や美容機材の見積書が利用されています。

〇高めの見積書を使うことのリスク
 多めの借入がしたいからといって、本来よりも高めの見積書を事業計画で使ってしまいと、そもそも内装工事や美容機材の金額が高すぎることで、事業計画の見直しを求められることもあります。つまり、投資が高額すぎるため、投資額を減らすべきと金融機関から指摘を受けてしまい、希望した融資金額が借りられないという事態の起きかねません。この場合は事業計画そのものの見直しで対応はできるのですが、問題なのは、見積書で提出した費用を本当に支払ったのかを金融機関から確認される場合があるということです。

〇金融機関はどうやって確認をするのか?
 民間金融機関で設備資金を借りた場合は、かなりの高い確率で、実際に支払った領収書の提示を求められます。または、内装工事や美容機材の請求書をそのまま金融機関に提示し、金融機関から直接内装業者、美容機材の会社に支払う、ということもあります。日本政策金融公庫でも、一定額以上の融資をする場合には、実際に設備資金としてどのようにお金を使ったのか、使った領収書、請求書の提示を求められることがあります。

〇金融機関から指摘を受けた時の対応
 高めの見積書を使い余分にお金を借りた後で、使ったお金の内容の分かる資料の提示を求められた場合の対処法ですが、ハッキリ言って提示を求められた時点で、何かの疑いを掛けられている状態だと思った方が良いです。金融機関から借りたお金を当初の目的以外で使ってしまった場合は、最悪、一括返済の可能性もあります。そもそも、多めの見積書を使ってお金を借りる事自体をすべきではありませんが、悪意がない場合でも、見積書よりも安い金額で工事を終えることができた場合等の場合は、まずは正直にこの金額で抑える事できた、という事実を金融機関に提示してください。その上で、既に使った資金の中で、物件の契約金など、設備投資に関連した支払いを拾い出して、設備投資でお金が必要だったことを証明する必要があります。

〇おわりに
 金融機関との信頼関係は何より重要です。人をだましてお金を借りること自体はすべきではありません。一時的にお金が借りられたように思えても、後から事実と違った借方であることが発覚すると、最悪の場合は一括返済を求められてしまいます。多めの見積書で、余分のお金を借りるのではなく、無理をして設備資金としてお金を借りるのではなく、運転資金として融資を受けることを検討してください。運転資金は返済年数は短くなりますが、融資を受けた時に元本据置などして、返済期間を少しでも長くして毎月の返済金額を少なくする工夫をすることがとても大切となります。

美容室専門税理士 中嶋 政雄

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