法務担当や個人事業主向け 契約書の書き方

契約書は会社の色んな場面で登場します。契約前段階の打ち合わせ段階で公になっていない情報をやりとりするためのNDA(秘密保持契約書)、会社間の基本的な契約条件をまとめた取引基本契約書、ホームページのデザインを依頼するための業務委託契約書、商品を売買するための売買契約書など。

なんのために契約書を作るのか、なにをもって契約書というのか、なにを契約書に書く必要があるのかを知っておくと、大体の場面に対応することができます。

■なんのために契約書を作るのか

ここでいう契約書とは、「紙に色々書いてあって、最後に署名と印鑑が押しているもの」と皆さんが一般にイメージするもので構いません。

実は一部の契約を除き、契約自体は契約書がなくても、口約束でも成立します。
あるいはメールでのやり取りでも契約自体は成立します。例えば、A社担当者がB社担当者に「来週月曜日までにミネラルウォーター20ケース(1ケース1000円)が欲しい。」とメールし、B社担当者がA社担当者に「承知しました。」と回答した場合、これだけで売買契約自体は成立します。
※厳密には、会社の代表権という話がありますが、今回は省きます。

ではなぜ手間をかけてまで、書式を整え、印鑑をおすか。

一言で言えば、裁判で勝つためです。
法治国家の日本では、お金を払ってもらえない、商品を卸してもらえない、貸したものを返してもらえないといった場合に、無理やりお金や商品を相手から奪う、取り返す「自力救済」は認められません。
原則裁判所の手続きを通して、実現するしかありません(強制執行とよばれます。)。

そして裁判所の手続きを進めるには、「契約したこと」を裁判所に証明する必要があり、証拠を出す必要があります。
契約書とは、まさに「契約したこと」を証明する証拠のために用意します。

もちろん、書面にすることで、口約束や話し合いでは曖昧だった部分を明確にする効果もあります。曖昧な部分が予め回避されていれば、トラブルを予防することもできます。

当然裁判で使うものですから、裁判になった時点で既にお互いこじれにこじれています。
なのでよく曖昧な部分や交渉が難しい部分に関して「問題が起きたら話し合って決めたい。」と言われますが、契約書が本当に必要な場面とは、「既に話し合いでどうにもならない場面」ですので、あまりおすすめはしません。
※この辺は、離婚問題に近いですね。ほとんどの人は「離婚なんて絶対しないから大丈夫」といって結婚しますが、結果は押して知るべし、、、、


■契約書の書式

よく「契約書」だと重々しいので「覚書、合意書、注文書、見積書、誓約書等」でダメでしょうか、というご質問をいただきます。
結論を言えばなんら問題ありません。「覚書、合意書、注文書、見積書、誓約書等」名称が違っていても、書式が整っていればこれらも「契約書」として扱われます。

まず「契約」とは法的に定義は定められていませんが、「当事者間の合意であって、その合意内容が法的拘束力を有するもの」をさします。
この合意内容を書いたものは全て「契約書」です。覚書や合意書、利用規約から注文書、見積書、はてはメールまで「契約書」になり得ます。

ただ裁判では、まず契約書(契約が成立したこと)を証拠として裁判所に認めてもらう必要があります。
その場合、一番簡単に証拠として認められやすい方法が「双方の署名・押印(会社でいえば代表印、個人なら印鑑登録した実印)がある書面」として「契約書」を証拠として提出することです。

逆に言えば、双方の署名・押印があれば、書式や体裁はなんでも構いません。メールを印刷したものでもいいですし、付箋でも構いません。

とはいえあまり見栄えが良くないものを渡すと会社の信用にかかります。付箋やチラシの裏に書かれた契約書を渡されたら、いくら書式が整っていても「ここの会社大丈夫か?」てなります(エコかどうかはともかく)。

■契約書の書き方

実際に契約書を作成する場合、一から作成しなくても、今はネット上色んな書式が無料でありますので、それらを活用することもできます。

その場合も下記のポイントに気を付けてもらえればと思います。
・担当者と代表者が読んで内容を理解できること
・内容が明確であること(例えば、商品、製品、品物等色んな表現が出てくるのは避ける。)
・「誰がいつまでになにをするか」、主語と述語、期限を明記すること。特に自社が最低限その取引で相手にしてほしいことは、必ず記載する。逆に、実現出来たら嬉しいこと(最最悪実現できなくても構わないこと)は記載しなくてもいいです。

■作成から保管まで

ドラフトを作成したあとの基本的な流れは下記になります。
・一方が相手に契約書のドラフトをメールで送る。
・相手がメールで内容を確認し、承諾または訂正、追記を求める(ここのやりとりが1週間~1ヶ月くらいかかる場合がある)。
・双方が内容に合意する。
・ドラフトを作成した側が、2部印刷して、2部とも署名捺押印をする。印紙が必要なものは印紙を1部貼る。
・レターパックに入れて相手に2部郵送する。
・受け取った相手が2部とも署名押印し、1部に印紙を貼り、印紙が貼られた1部を返送する。

※印紙が必要かどうかは、国税庁の「印紙税額一覧」を参照ください。よく使われるものだと、
必要:請負契約(システム保守・開発を含む)、売買契約、基本契約(請負・売買)
不要:準委任契約(システム保守・開発を含む)やNDA(秘密保持契約)、基本契約(準委任)

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