法務担当向け 代表取締役社長とは

契約書業務をしていると、契約書の署名欄としては「代表取締役」の記載が一番多いと思いますが、これ以外にも「代表取締役社長」「取締役社長」「代表社員」など色々な記載を見ることがあります。
しかし、場合によっては契約自体の成立にかかわることがありますので、ここの記載は注意が必要です。
簡単にまとめると会社の代表を示す法律用語とそれ以外にわかれます。

主な法律用語は下記になります。

 株式会社:代表取締役、取締役、支配人
 合同会社、合名会社、合資会社:代表社員、社員、業務執行社員、支配人

法律用語ではない肩書:社長、副社長、会長、店長、

法人の代表とは

まず法人の代表とはなにか、を簡単に説明します。人間の場合は、本人が自分の意思表示(契約したいと考え、そのように行動すること。簡単にけば契約を締結すること。)ができますが、法人の場合、「法人」自体はあくまで書類上の形がないものなので、そのままでは意思表示をすることができません。
そこで代表を定め、その代表者が法人の意思表示をかわりに行います。ただ誰が代表者か、が明確でないと、契約相手としては、法人の代表だとおもって契約したのに、後から「あの人は、法人の代表ではないので、その契約は無効です」と言われてしまうリスクがあります。
そこで法人の代表が誰であるかを、会社法が定めています。

代表取締役と取締役

注意がいるのは、「取締役」であっても、代表者である場合と、代表者ではない場合があります。

<株式会社の代表者>
代表取締役がいる場合:代表取締役(会社法349条第1項ただし書)
代表取締役がいない場合:各取締役(会社法349条1項2項)

<合同会社、合名会社、合資会社の代表者>
代表社員がいる場合:代表社員(会社法599条1項ただし書)
代表社員がいないが業務執行社員がいる場合:業務執行社員(会社法599条1項)
代表社員も業務執行社員もいない場合:社員(会社法590条、599条1項)

法人登記

誰が役員か、代表取締役はいるのか、などは法人登記で確認できます。もちろん、相手の名刺や法人のホームページで確認をすることもできますが、一番確かな確認方法は法人登記になります。法人登記自体は、相手の法人の本店所在地を管理する法務局で、誰でも申請して見ることができます。費用は登記取得が600円、閲覧が450円です。

法務局管轄:http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

社長、会長とは

社長や会長は、法律用語ではなくあくまで役職名です。必ずしも「社長=代表取締役、取締役、代表社員等」とは限らないため、必ずしも「社長=代表者」とは限りません。
この場合、社長と聞いていたのに、送られてきた契約書の署名欄の代表取締役として違う人の氏名が記載されている、ということになります。とはいえ、なんの説明もなく相手から送られてきた場合は、一度相手に確認した方がよろしいでしょう。相手の説明に不審な点がある場合は、法人登記を確認しましょう。
なお、「社長」自体は会社の代表を示す記載ではないので、契約書に下記のような記載がある場合は、「社長」ではなく「代表取締役(代表取締役がいない場合は取締役)」に訂正してもらいましょう。
株式会社○○
社長 山田太郎

代表取締役社長とは

株式会社○○
代表取締役社長 山田花子

ぼくも法務部時代に頭を抱えたのがこの記載です。厳密にはこれは「株式会社○○代表取締役社長」という肩書をもった山田花子のサインになってしまい、株式会社○○ではなく山田花子個人の契約になります。
とはいえ、実際には契約書の冒頭の甲乙部分に株式会社○○の記載があったり、請求書や見積書が株式会社○○の名義になっていたり、印鑑が法人代表印であるなどから、「株式会社○○」の契約とみなされます。
「代表取締役社長」という記載は、法務からすると避けたいのですが、慣習上相手の肩書をきちんと記載することが礼儀である、という風潮ももあり、目くじらをたてて訂正をするのもどうかな?というところです。
なので相手から「代表取締役社長」と書かれた契約書が来た場合は、目くじらをたてる必要はありませんが、自社のドラフトを送る際はできるだけ「代表取締役」などにしましょう。

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