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#06 大好きだった彼女②

電話番号を書いた紙を渡したあと、しばらく経ったある日。電話が鳴りました。当時電話はあるものの日中は大学。夕方から深夜までバイトの生活の為、家にいて電話が鳴るという事はほとんどありませんでした。留守番電話にメッセージが残っていて、あとで電話をかけなおす。もしくは深夜の時間に電話をする事がほとんどでした。

相手は番号を渡した彼女。その時は確かごくありふれた近況や、
どこに住んでいるの。とか彼女の電話番号とか。ごくごく他愛もない話で終わったと思います。それでも彼女の電話番号を聞けた事はとても嬉しかった事は今でも覚えています。それ以上に嬉しかったのは彼女が電話をかけてきてくれた事。ポケベルはあったけど、携帯電話が普及していなかった頃。
離れた相手と気軽にコミュニケーションを取るのが難しかったのです。
電話が鳴る事と、電話の相手が彼女であった事は嬉しかったです。

大学行ってバイト行って。たまに彼女がいるコンビニに行っても姿を見つけられず。何もない日々が続きました。私は私立の大学。経営学部にいて朝から夕方まで大学に行って単位も落とさず通っていました。夕方から深夜までは少し離れた地元チェーン店の本屋でバイト。0時までだった為、レジを閉めて次の日の品出しや整理を行うと家に帰るのは1時半から2時位。暇だったのでほとんどバイトしていたな。

バイト終わって遊びに行ったり、明け方まで電話したり。地方都市だったので今と違って夜遅くまで店が空いている事も少なく、大学の友達の家を転々としてゲームしたり麻雀したり。ほぼほぼそんな毎日が続いていました。

時々、彼女から聞いた電話番号にも何度か電話もしました。ただ、深夜遅くに電話を掛ける勇気は自分にはなく、バイトが休みの日の夜に電話したり。でも、ほとんど留守電。切る事もあれば留守電にメッセージを残す事も。彼女は私とは違う大学。当時出来たばかりの新しい大学で仕組みが他の大学と異なって卒業が難しいと言われていた学校でした。中学の頃、バスケも出来たけれども勉強も出来た彼女。なるほどな。って今思い返しても納得できます。

そんなある日、電話が掛かってきました。電話の相手は彼女。
電話を取ると電話の向こうで開口一番。
「ちょっと!留守電に入れるとき、"おれ”って言わないで!」
始め何のことだろう?と思いよくよく聞くと、録音が始まる時に
「もしもし。俺だけど」と話し始める事を指摘したのです。
その時は結構怒り口調でそれだけ伝えて電話が終わったはず。

それ以降はあまりしつこくなく、時々電話して出る時も、出ない時も。
留守電の場合は「naccaだけど。」と名乗るようにしたり。
昔話だったり、今の話だったり。本当、他愛もない話をするように。

次回へ続きます。

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