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VTuberさん向け、作曲家にオリ曲を依頼するポイントまとめ

皆さんこんにちは、作編曲家の中迫酒菜(なかさこさかな)です。普段はオーケストラの曲などを書いていますが、VTuberさんに楽曲提供することが増えてきました。

VTuberさんから楽曲の依頼を受ける時に「発注の仕方が分からない」「全体の流れが分からない」という声を頂くことが多くなってきましたので、noteにまとめようと思います。

オリ曲欲しいけどなんか難しそう!」という方の助けになればと思います。

前半が発注に必要なもの後半が全体の流れの説明になっています。

発注に必要なもの

まず、ディープな音楽知識は必要ありません
ファミマでファミチキを注文するくらいの感覚で楽曲を発注して頂いても全く問題ありません。我々作曲家はヒアリングのプロでもありますので、楽曲の発注を受けるのには慣れています。むしろ頼ってください。

まずは必要なものを見ていきましょう。以下の4つです。

・リファレンス楽曲(あれば)
・特記事項(あれば)
・納期
・予算

それでは一つずつ解説していきます。

リファレンス楽曲とは、一言で言えば参考曲です。自分が作って欲しい曲のビジョンが明確にある場合は、そのビジョンによく似た曲を何曲かリストアップしてください。
この作業が難しい場合は、リファレンス曲はなくても構いません。ない場合は次の特記事項を元に、こちらから提案することもできます。
リファレンス楽曲はYouTubeやiTunes、spotifyなどのリンクを頂戴することが多いです。

特記事項とは、例えばご自身の設定など、曲に盛り込んで欲しい要素です。これも音楽用語を使う必要はなく(むしろ音楽用語でない方が良い)、例えば「自分はメイド系VTuberなのでヴィクトリア調っぽくして下さい」「ドジっ子設定なのでそういうイメージが欲しいです」「ピエロ系VTuberですが、道化要素はいりません」の様なものです。
イラストや小説などを渡しても問題ありません。

納期は、いつ頃までに完成させたいかの目安です。
これには作詞の期間や、ヴォーカルミックスを誰が行うかでどの時点を〆切りとするかが変わってきます。つまり、カラオケが完成する日なのか、ヴォーカルのレコーディングまで終わって曲が完成する日なのか、等です。
後述のメールの例のように書いて下さると事故を防げます。
作曲家の空き時間や曲の規模によって「もう少し時間があれば承れます」という返信が来るかもしれません。
(ヴォーカルミックスについてはここでは触れないので、別のnoteを書こうと思います。)

予算は、作曲家によってだいぶ変わるので一概に相場を言うのは難しいですが、最低5万円あれば半分くらいの作曲家が作ってくれる気がします。もっと安い人もいますし、もっと高い人もいますが、ひとつ言えることは、値段を聞かれて困る作曲家はいません! 積極的に聞いてみましょう!

ちなみに私の場合ですと、5万円あればこういう曲になります。
(クオリティの目安であり、実際の依頼額とは異なります)


実際に発注してみよう!

上の4点がそろったら、実際に発注をしてみましょう!
一般的にはメールでのやりとりが多い印象がありますが、私はSkypeやDiscordを使ってチャットしながら曲の内容を決めることもよくあります。

依頼メールの例

はじめまして。私、(○○系)VTuberの○○と申します。
[YouTubeチャンネルURLや設定等]
この度、○○様にオリジナル曲の制作を依頼したくメール致しました。
○○様の作った○○や○○などを聞いて、自分の表現したいことにピッタリだと思いました。 ←なくても良いが、あると嬉しい
オリジナル曲は、○○(アーティスト名など)の○○(曲名)や○○の○○の様な感じで、庭に咲いていた最後の花が枯れてしまったようなイメージで作って頂ければと思います。
[リファレンス曲のURL等]
今年の12月頭に発表したいので、ヴォーカルミックス込みの完成品を、11月の半ばには欲しく思います。作詞に3週間、歌うのに2週間ほど頂くスケジュール感でお願いしたいと思います。
予算についてですが、すべて込みで7万円を予定しています。
上記の条件で楽曲制作して頂くことは可能でしょうか?
よろしくお願い致します。

このようなメールを頂けると、スムーズなやりとりをすることが出来ます。

全体の流れ

オリ曲や歌ってみたは、意外と工数が多いです。
作曲家が私だった場合の流れを、VTuberさん視点でできる限り詳細に箇条書きにしました。参考にして下さい。

1. リファレンス曲を探す
2. 曲に入れたい要素等があれば書き出す
3. おおよその予算を決める
4. 納期を決める
5. メールなどで打診する
6. 作曲家から返信が来る
7. 打ち合わせ後、楽曲の制作が開始
8. デモ音源が送られてくる
(デモ音源とは、本番の音源を作る前に作る仮音源の様なもので、音は本番に比べて劣りますが、おおよその雰囲気をつかんで頂くためのものです)
9. デモ音源で気に入らないところを指摘する
(ここでも音楽用語などは要りません。ふわっと伝えて頂ければ意図をくみ取ります)
10. 8-9の作業を繰り返し曲がおおよそ出来たら、作詞用のファイル一式(メロディー入りカラオケ・楽譜等)が送られてくる
11. 作詞をする
(どうしてもメロディーと合わない場合は、相談して頂ければメロディーを変えるなどの提案が出来ます)
12. 作詞が終わったら歌詞を作曲家に送る
13. 歌詞に合わせた歌唱用のファイル一式(カラオケ・ガイドメロディー・ガイドハモリ・楽譜等)が送られてくるので、それらを使って歌を録る
14. 録ったデータを作曲家に送ってミキシングをしてもらう
15. ミキシングされた曲が送られてくる
16. 聞いて問題がなかった場合、マスタリング後の音源を受け取り、納品完了
17. 報酬の支払い(作曲家によって、前払いだったり分割払りだったりしますが、後払いが多い印象です)
18. 動画作成・告知・発表等

なお、ヴォーカルのレコーディングについては、VTuberの惑星ちるさんが良い記事を公開されているので紹介します。

まとめ

音楽知識がないと音楽家に発注出来ないイメージを持たれている方も多いと思いますが、よほど特殊な曲を作らない限りはそんなことはありません。
気軽に注文して、オリ曲デビューしてみましょう!

自己紹介

最後になりましたが、改めて自己紹介です。
作編曲家・中迫酒菜(なかさこさかな)と申します。
民族調の曲からオーケストラ、昭和っぽい曲、かわいい曲が得意です。
VTuberさんに提供した曲をいくつか貼っておきますので、もし気に入って依頼をしたい方は、こちらから是非発注してみて下さい!

ライザ・フォン・ガルファンゼール16世さんからの依頼で作った曲です。
リファレンス曲の他、魔王系Vtuberだが魔王要素はほんの少しで良いこと、サビまで静かに、サビから盛り上がる感じが良いことなどをヒアリングし、デモの段階で一度作り直しを経た後、2番Aメロのリズムについて数回変更をした後にヴォーカルのレコーディングに挑みました。

惑星ちるさんからの依頼で作った曲です。
鉱石ラジオ」というワードと、惑星ちるさんのイメージから歌謡曲のようなエレクトロスイング系かわいいマイナーポップを提案しました。ちるさんにはレトロなイメージがあったので、現代ではあまり見ない三部形式を採用し、星や宇宙をイメージさせるサウンドメイキングをしています。

それではここまでお読み頂きありがとうございました!

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