反論への反論

この投稿は僕の友人が下記記事に対する反論として書いたものです。それを、本人の許可をいただいた上でコチラにコピペします。

なお、1~5までの数字の意味について、リンクを開かなくても対照出来るように、その部分のみリンク記事内より先にコピペしておきます。友人が書いたものはリンクより下の部分です。

>このなかでは、MMTは「地動説」的発想の転換であるとして、以下の主張がなされています。
1.銀行の預金が貸し出されるのではなく、預金は貸し出しによって生まれる
2.通貨発行権を持つ国は財政赤字では破綻しない
3.財政赤字は民間の貯蓄を増やす
4.財政赤字によって通貨供給量が増える
5.財政赤字は金利上昇をもたらさない
6.財政赤字がインフレを招いたら、財政赤字を止めればいい(やめる事が出来る)
 ところが、このうち1~5は標準的経済学でも同じ結論になります。

https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019051500003.html

1.
>預金が貸し出しを作るのか、貸し出しが預金を作るのかも同じ話で、同じ物事をどちらから見ているかに過ぎません。標準的経済学でも預金が貸し出しによって生まれると考えることもあり、特段新しい考え方ではありません。

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主流派経済学では、まず「本源的預金」が存在し、それが「又貸し」される。これが繰り返されることで、最終的に本源的預金の乗数倍の預金が創造される、ということになっている。

対してMMTというか実務では、預金は「常に」銀行の貸し出しによって創造される、としている(万年筆マネー)。

つまり主流派経済学では、必ず最初に「本源的預金」が必要とされるが、MMTというか実務では常に「貸出→預金」なのであって、両者は全然ちがう。

2
>2は、言うまでもなく当然で、どんなにインフレが進もうが、国家権力が国家権力である限り、お札を刷って支払いをすることは可能です。これを否定する経済学はありません。

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主流派経済・財政学者はほぼ常に「現在の借金はいずれ返済しなければいけない」「政府(国)も例外ではない」「現在のまま借金を増やし続けることはできない」と言い続けてきた。それを無視する米山さんが、まずもって理解不能である。

3
>3も、(民間貯蓄超過)=(政府財政赤字)+(経常収支黒字)と言う標準的ケインズ経済学からの当然の帰結です。何も新しくありません。

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上記の恒等式は主流派経済学における「実物経済収支」である。

対してMMTが説明する
民間収支=財政赤字+経常収支黒字
は「資金収支」である。

つまり米山さんは全く異なる恒等式を同じものであると混同している。

かつ、主流派経済学では、「財政赤字の原資は民間金融資産」となっているので、財政赤字は民間貯蓄を奪う、とされている。

4.
>しかしMMTでは、暗黙のうちに、発行した赤字国債を中央銀行が直接引き受けるか、現在日銀がやっている「異次元の金融緩和」のようなことをして、ほぼ全量を買い取ることが前提となっています。そうなれば日銀の保有する通貨が新たに市中に供給されますから、当然通貨供給量は増えます。従って財政赤字で通貨供給量が増えるかどうかは、財政赤字をファイナンスする為の赤字国債をどう発行するか(発行した後どうするか)の手段の違いによる帰結であって、理論の違いによる帰結ではありません。

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MMTというか実務では、中央銀行による国債の直接引き受けを経なくても、財政赤字による支出は通貨供給量をふやす、となっている(次コメント参照)。
MMTを批判するなら、まずMMTをもっと良く勉強してからすべきだろう。

5.
>しかし、例によってMMTが暗黙のうちに前提としている、中央銀行の赤字国債の直接引き受けや「異次元の金融緩和」でほぼ全量買いとってしまえば、資金が市中に供給され、債権の値段が上がって金利は上がりません。ここでも、金利が上がるかどうかは、赤字国債をどう発行するか(発行した後どうするか)という手段の違いによる帰結であって、理論の違いによる帰結ではないのです。

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MMTというか実務では、貨幣は経済主体(政府や民間)が「借金」をすることで、「無」からこの世に貨幣が創造される(内生的貨幣供給論)。
これは、政府が発行する債務(赤字国債)の中央銀行直接引き受けを経なくてもそうなのであり、実際に、現在も直接引き受けなしに、財政赤字により貨幣が「無」から創造されているのである。
「現実」の「実務」がそうなのだから、否定のしようが無い。

5
>5も4と同じことで、標準的経済学では、赤字国債を市中に売却するので、民間の資金が政府に吸収されて逼迫(ひっぱく)し、債権の値段が下がって金利が上昇します。

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主流派経済学では上記の通りだが、MMTというか「現実」の「実務」では、銀行は「市中」の「民間預金」ではなく、「日銀ネット」内の「準備預金」で赤字国債を購入する。
政府はそれで得た準備預金で支出をし、中央銀行と民間銀行の仕振りを経て、民間口座に公共事業等の代金が預金として振り込まれる。
つまり、財政赤字になればなるほど、民間金融資産は「増える」ので、市中金利は「下がる」のである。
現在、日本政府が多額の政府債務を抱えながら、市中金利が史上最低に低いのは、そのような理由から。
「現実」の「実務」を知れば、赤字国債の発行で金利が「上がる」という主流派経済学の間違いは、一目瞭然なのであり、MMTはその間違いを明確化しているのである。

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