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2022年14冊目『リスク論のルーマン』

小松丈晃さんの著書です。
松岡正剛さんの塾に通っているのですが課題図書です。

松岡さんがルーマンで注目するところ
世界や社会をつねに複雑系として捉えつづけてきたこと
その世界や社会を形成する根源的な単位を「意味」に求めようとしつづけたこと
その意味を加工編集するものはすべからく「システム」であるとみなしたこと
ルーマンは社会は複雑なシステムであり、意味によって構成されるとみなした
→市場も価値も意思決定も、「意味」で構成される

20世紀後半のリスクには、前例のない特徴と多様性があった。
1リスクの作為者とリスクの犠牲者を分けることが困難なリスク。
2「非知」のリスク:環境汚染や薬害やコンピュータ・ウィルスなど、多くのリスクが直接に知覚できない。
3大規模リスク:原発事故や鳥インフルエンザなど、保険制度などによってカバーできない大規模なリスクがふえ、連鎖してきた。
→社会は「富の分配」ではなくて「リスクの分配」で成り立っている。

ルーマンは以下の④の先駆けだが、その範囲はもっと広い
①保険数理によるリスク論
②確率論によるリスク分析
③リスクを組み合わせる経済学
④リスク社会論
⑤リスクをめぐる認知心理学
⑥リスク文化論
⑦毒物学や疫学

ルーマンはオートポイエーシスを社会システムに適用した
オートポイエーシス:免疫的なシステムの謎を解くための概念。生命が「非自己」を活用しつつ自己組織化をとげ、システムとしての「自己」を環境の内外で保持しているのはなぜか。「自己を再生産するための自己準拠」や「自己による自己再帰」のしくみがあるのではないか。生命は自分自身についての「自己言及」をしながらも自己矛盾(コンフリクト)をたくみに超越するしくみをもっているのではないか。

→法や価値観や市場の動向にも、オートポイエーシスの作用が関与したり滞留したり、また逸脱したり過剰になったりして、システムの内外を出入りしているのではないか。

→生命にも社会にも共通して動いているもの「情報」、「意味」がある。
ルーマンは社会システムにおいては「コミュニケーション」が動いて、オートポイエーシスに向かっている可能性があるとみなした。

→社会システムのどこかににオートポイエティックが部分的にあるのではなく、オートポイエティックな動きのなかに社会が機能している。
ルーマンは、リスクを「危険」や「安全」に対比させるのではなく、社会システムにおける「決定」のプロセスに関するものと見たほうがいいと考えた。

近代以降の社会は、おおむね「真/偽」「法/不法」「統治/反対」「就業/失業」「支払い/未払い」「貸付/返却」「成功/失敗」「健康/病気」といった二値コードによって成り立ってきた。

→二値コードで社会を裁断し、判定することがリスクを生じさせている
リスクは、構造の隙間やきしみからコンティンジェント(偶発的に)に生まれる。
→二重のダブルコンティンジェンシーがシステムが自己言及するたび、自己再帰するたびに選択され、リスクが内包される。

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