2016年 55冊目『ビッグデータ・ベースボール』
弱小メジャーリーグチームが従来着目されていなかった「出塁率」のデータなどに着目して、奇跡の成長をした話をまとめた『マネー・ボール』。
あれから既に12年が経ち、メジャーリーグはビッグデータを活用し、大きく進化しています。今回の主役は2012年まで20年連続で負け越しているピッツバーグ・パイレーツ。このパイレーツが2013年、14年と連続でプレーオフに進出します。
話は、ビッグデータを使ってうまくいきました!と言うシンプルな話ではありません。
登場人物は、球団オーナー、フロント、監督、コーチ、そして選手たち。これにメジャーリーグのデーターを取り出したデータ収集会社、そしてそのデータを活用して分析をしだしたプロ、アマのデータ分析官(今の言葉だとデータサイエンティスト)と地元のファンです。。
球団オーナーを株主、フロントを取締役、監督を執行役員、コーチを部長、選手をマネジャー、メンバー、そしてデータ収集会社を外部のビッグデータコンサル会社、データ分析官を社内のシステム部門やビッグデータ部門、ファンをユーザーだと考えると、まさに企業の話です。
世の中にビッグデータはたくさんあります。社内にもあるかもしれません。それをデータサイエンティストが有効に分析しても、現場は何も変わりません。動きません。
それは、経営の不理解であり、中間管理職の不理解であり、現場の不理解であり、データサイエンティストの現場の不理解であり、それらの組み合わせであったりします。
今回のパイレーツでは、監督のハードル氏がキーになり、様々な役割のキーパーソンの理解促進に腐心します。
ハードルは3年契約の3年目で背水の陣であった事、予算がこれ以上増えない事が良い方向に寄与します。
制約がある方がイノベーションが起きるという典型ですね。
2人のデータサイエンティストが戦略の原案を作ります。それらは従来だれも着目していなかったけれど、とても効果のあるデータでした。
守備に関するものです。
打者や配給、ピッチャーに合わせた守備のシフト、キャッチのボールの取り方、ゴロ中心の打線。全てが従来の常識と異なります。
これらのデータを駆使し、他球団が注目しない人材を採用します。
加えて、データサイエンティストが遠征に同行したり、選手が分かりやすいようにヒートマップを活用して打球の飛ぶ方向を視覚的に見せたり、コーチの素朴な質問から新しい法則を見つけたり、様々なコミュニケーション上の工夫をします。
これらなどは実ビジネスに参考になるTipsがたくさん載っています。
物語としても、21年ぶりに勝ち越しするシーズン、プレーオフに参加する瞬間などワクワクする表現がたくさんあります。
V字回復の奇跡的要素も、がんばれベアーズ的要素もある本です。
お勧めです。
▼前回のブックレビューです。
▼新著『業績を最大化させる 現場が動くマネジメント』です。
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