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2022年76冊目『SAVING CAPITRISM 最後の資本主義』

私は知らなかったのですが、ハーバード、カリフォルニア大学の教授で、クリントン政権時の労働長官、オバマ大統領のアドバイザーで、このままだと中間層が消滅すると警告し続けたライシュさんの本です。



アメリカで起きている事が理解できました。
日本でも一部起きています。

これきちんと理解した方が良いと思いました。
一読の価値あります。

ざっくりいうと金持ちが「合法的」に貧者を搾取しているのです。
それが様々な業界、様々な場面で起きているのです。

学生時代、私は材料物性が専門でした。

オストワルド成長というのがあって、ある状態の時にオストワルド半径を超える粒子は周囲のオストワルド半径未満の小さな粒子を吸収してどんどん大きくなるのです。

アメリカでは、まさにオストワルド半径以上の資産を保有した金持ちが、貧者から(気づかないうちに)搾取しているのです。
しかも、金持ち自身も搾取していることに気づかないのです。

ここに問題の深さ、闇があります。
これが起きるのが合法的なのです。
つまり、ルールによって合法化されているのです。

金持ちが自由市場を擁護し、何年もかけて、自分たちが得をするように再構築し、それが問題にされないようにしてきたのです。
※政府に任せるのか、自由市場にするのかを議論することで、これを目くらまししている側面もあるのです。

合法的なので、ルールを変えるようにすれば、この不平等は是正される可能性があるのです。

最初に資本主義の5つの構成要素について書かれています。

この5つすべてについて、金持ちが得をするように徐々に変化をさせて行ったのです。
一例を挙げます

所有権

 法律のどこにも会社を所有しているのは株主だけとは書いていないが、そのように仕向けた
 発明者に一定期間の所有権を与えたが、ワンクリック注文という概念でも取れるようにした

独占

 アメリカのインターネットは高くて遅い。これはケーブル会社のロビイングで、新規参入できないようにしている。
 農業はF1種子(種を作らない)により農家から毎年種子代を取ることに成功している
 ICT企業は、様々な独占を合法にして、利益を取ることに成功している
 金融界は、共和党、民主党に献金をし、政府にロビイングをし、様々な法律を変化させている

契約
 米国では、血液を売ることができ、子宮を貸せる州が多い
 インサイダー取引での多くの抜け穴を作った
 大手企業は取引先に訴訟を起こさないという契約を合法的に結ぶことができる

破産
 容易に会社を倒産させることができ、その際はリストラができ、労働債権の優先順位も下がる。
 倒産した会社のCEOの報酬の支払い優先順位は高く、労働者のそれは低い。
 個人が破産しても、住宅ローン、学費ローンは支払いつづけないといけない

執行
 ワクチンで副作用が起きても製造会社と医師は保障プログラムがある
 同じく銃で被害が起きても製造会社、販売会社の責任は大幅に縮小された
 議会が執行する役員の予算を大幅に削減し、実質執行できないようにする
これらに加えて、罰金を大幅に減らし、リターンと比較して、リスクを極小化する。
献金やロビイング、そして万が一のための訴訟団で、リスクを予防し、最小化できるのは、金持ちだけ。
すべて金持ちが得をして、貧者が損をする方向に法律を変えていってるのです。

本当かと思うのですが
製薬メーカは、医師に自社の薬を使うと報奨金を支払えるのです。
製薬メーカは、ジェネリックメーカに、開発を遅らせることへの報奨金を支払えるのです。

このように法律を変えたのは、製薬メーカのロビイングと選挙献金と多くの法律家によります。

この結果、制約メーカは自社の薬の価格を高値維持できるのです。

その利益は、ロビイングなどのコストの何倍にもなるのです。
そして、それを負担しているのは、一般市民、つまり貧者であり、補助をしている国なのです。

製薬メーカだけではありませんこれは、保険業界、種子業界など枚挙に暇もありません。

また、学校への寄付でも知らない間に金持ちと貧者で結果として差別が起きています。

金持ちは自分の子供を入れている有名私立学校に寄付をします。
この寄付金はかなりの額が控除されます。

つまり、本来であれば税金で納めるものを合法的に自分の子供の教育に移転できるのです。

結果、税収が減るので、公立学校への補助が減るのです。
貧者の子弟への教育レベルが下がるのです。

これなんかは、寄付控除を活用した富の移転なのです。

労働者が不満を持っても、労働組合が弱体化し、雇用契約で徒党を組んで争わないという文言を書けるようになったので、1人づつ戦わないといけないのです。多くの弁護士と金がある大企業に勝てる個人の労働者はいません。

また個人の能力が給料であるという教育をしていることで、給料が低い人は、自分の能力のせいであると思いがちになるのです。

その結果、金を多くかせいでいる能力が高い人に低い私が逆らうわけにはいかないと思う人も多いのです。

アメリカは相続税もどんどん下げていき、今では実質0だそうです。

その結果、2012年ごろ全米の富豪ベスト10のうち5人がウォールマートの一族だったそうです。
※ウォールマート家に生まれただけでここまで金持ちになるのはやり過ぎですよね。

それくらい富が偏重しているのです。
数十年前まで、厚い中間層がいたアメリカも合法的に金持ちがより金持ちになる方向に進んでいます。
中間層がいなくなっているのです。

アメリカは問題が起きた時に、きちんと改革できる国であり、その可能性があると筆者は言います。
※中間層がまったくいなくなれば、市場が無くなります。

その具体的な方法もいくつか提示しています。

翻って日本。
日本も学ばないと同じ道を進んでいきます。

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