農の考察#6 ヘアリーベッチはどれだけの窒素を供給するのか

ヘアリーベッチとは

ヘアリーベッチとは代表的なマメ科緑肥の一つであり、大気中の窒素を固定して作物に可給態窒素を供給する。供給するといってもどれだけの窒素成分量に相当するのかいまいちわかってなかったので、調べてみることにしました。

過去の論文では

Nitrogen from Legume Cover Crops for No-Tillage Corn

少し古いですが、1984年の論文では、不耕起栽培のトウモロコシ栽培において90~100kg/haの窒素に相当する窒素を供給すると述べている。

また、農研機構の緑肥利用マニュアルでは15~30kg/10aの窒素が供給されるとしている。これをヘクタール当たりに計算すると10倍なので、150~300kg/haと上の論文の値よりも窒素供給量が大きい値となっている。
農研機構の緑肥利用マニュアルでは耕起栽培が前提のようなので、この供給量の違いは耕起と不耕起の違いによるものなのかもしれない。確かに、耕起したほうが微生物の活動が活発になり有機物の分解が促進することからも納得感がある。
私は不耕起でのトウモロコシ栽培を試しているので、とりあえずは10kg/10a程度の窒素と考えておくことにしようか。

トウモロコシではどれだけ減肥できるか

農水省のスイートコーン栽培指針では元肥と追肥合わせて反当30kgの窒素が必要ということなので、ヘアリーベッチからの窒素供給が反当10kgとすると単純計算ではありますが3割減できるということになります。緑肥利用マニュアルでもトウモロコシに対して3割減と5割減の事例が紹介されています。
不耕起栽培では残渣の分解に時間がかかり、窒素が放出されるまでに時間がかかるかもしれないので、生育初期に追肥するのも検討の余地がありそうです。
Legume Cover Crop Contributions to No-Tillage Corn Production
この論文では緑肥としてヘアリーベッチを利用し、化成肥料も利用することで収量に対して相乗的な効果が得られ、化成肥料の必要量が減少したが、小麦後のトウモロコシでは化成肥料の必要量が増加したとある。現在私が不耕起栽培を試している圃場ではライムギやイタリアンライグラス、ヘアリーベッチ、クローバーが生育しているが、どちらかというとイネ科緑肥が優勢となっており、この論文を参考に考えると少し肥料の必要量が増える場合もあるということになる。

緑肥の種類が多いほどトウモロコシの生育がいいという報告も見たことがあるし、複雑で難しいですね。生育を見ながら追肥していこうと思います。また、イネ科緑肥で畑の排水性を改善した後にヘアリーベッチなどのマメ科中心の窒素供給でトウモロコシを栽培するのがいいのかもね。
どちらにせよ、ヘアリーベッチが放出する大体の窒素量の感覚は掴めた気がするので、あとは現場のトウモロコシの様子を観察してちょうどいいところを見つけ出そう。

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