見出し画像

ととのイップス解消の処方箋


序文

『ととのい』とは何か?

サウナに入ると「ととのう」とはよく言われているが、では具体的に何を指すのだろうか。一般的には以下のような作用についてととのうと表現されることが多い印象だ。

・自律神経が「整う」
・ストレス解消になって心が「整う」
・トランス状態が訪れて「ととのう」

それぞれの詳細は割愛するが、サウナーが最も求めている「ととのい」は間違いなくトランス状態を指すと思われる。これこそがサウナの最大の魅力であり、本記事でも主にこの点について取り扱うことにしたい。

「主に」と記載したのは最近知った第四の「ととのい」についても後ほど触れたいと考えているからだ。

まず、ほとんどの人は正しいサウナ浴の仕方を教わって温冷交代浴を実践すれば、かなりの割合で「ととのい」を感じることができるだろう。だが、身体がサウナの刺激に慣れてくるにつれて、徐々に物足りなさを感じると共にととのいの機会も減っていくことになる。

鎮痛剤などの薬剤においても、利用量が増えるにつれて耐性ができることはよく知られているので、「ととのい」に関連するといわれている物質(セロトニン、オキシトシン、β-エンドルフィン)についても同様の作用が発生しているのかもしれない。あるいは、そもそもサウナの刺激になれることでそういった物質の分泌量自体も減少している可能性もある。

いずれにせよ、サウナに入って3サイクルをキメれば必ずといって良いほどととのうことができるのはビギナーズラックのようなもので、遅かれ早かれ全てのサウナーはなかなかととのうことができない「ととのイップス」の状態を経験することになるだろう。

それではどうすればあの恍惚の時間を再び体験することができるのだろうか?この点を真剣に検討していきたい。

基本に立ち返る

まずは基本的な事項から再確認していこう。当たり前のことだが、何事も慣れてくるとおざなりになりがちなのが人間というものだ。

・サウナに入る際は時間に囚われず身体の芯までしっかりと温まること
スマートウォッチを身に着けて心拍数を目安にするのも良いだろう。

・水風呂は長く漬かりすぎないように注意すること
こちらも同様に心拍数を目安にしても良い。ととのいたい一心でやせ我慢をしても逆効果である。

・雑念を捨ててととのいに集中すること
外気浴の最中に余計なことを考えていないだろうか?こちらも慣れの弊害だが、過去にととのいを感じている時は「無」の状態だったことを思い出すべきだ。

下準備

それではさっそくサウナの入り方を考える・・前に下準備をいくつか紹介しておこう。これらの下準備は必須ではないが、雑念を捨てるために大変役立つため、サラリと触れておくことをお勧めする。

呼吸法

いわゆるマインドフルネス瞑想やインドのヨガ、はたまた仏教の禅においても重要視されている基本が「呼吸」である。特に日本人は「深呼吸」という言葉に幼少の頃から触れる機会が多いと思うので、さほど違和感はないだろう。心を落ち着ける時には呼吸を落ち着ける必要がある。

言い換えると呼吸を整えることができれば、自然と意識や気持ちも整ってくるので、基本の呼吸法を覚えておくとサウナ以外の日常でも役立つ場面が多く訪れるだろう。

ちなみにヨガの呼吸法は8種類以上あるそうなので気になる方は調べてみるといいかもしれない。非常に奥が深いのでここではあくまで代表的なものに触れるにとどめる。

・禅やマインドフルネスの呼吸法
これらの基本は「呼吸を意識すること」である。普段は無意識で行っている呼吸を意識し続けると徐々に呼吸が整ってくる。1~10まで数を数える方法などもある。あえて深呼吸をしたり、呼吸のリズムを意図的に変える必要はない。ただあるがままのペースを受け入れるイメージだ。
マインドフルネスの呼吸法では上記の方法でリズムが整った後に、呼吸のリズムを徐々に伸ばして長く息を吸い長く息を吐くように変化していく方法もある。

・ヨガの呼吸法の基本
ヨガの呼吸法はあまりにも多岐に渡る上、身体的な負荷が大きいものも多いので、あくまでも基本中の基本だけを参考にするが、こちらは「息をしっかりと吐き切ること」が重要である。人は意識的に深呼吸を行おうとすると、つい息を吸うことから始めがちだが、肺に古い空気が残っている状態では限界まで息を吸うことができない。
ゆっくりと時間をかけて息を吐き、脱力と同時に一気に息を肺まで吸いこんだらまたゆっくりと息を吐くことを繰り返す。いわゆる深呼吸のイメージである。

呼吸法は合う合わないや好みの問題があるので、どれが良いかは自分で試してみる他ない。参考までに、筆者はサウナ内では禅の呼吸法、水風呂内ではヨガの呼吸法に近い深呼吸を実践している。

ととのいへの集中

基本的には上記の呼吸を実践できれば、ととのい中も意識が逸れることはあまりないだろう。ただし、休憩中に徐々に雑念が頭をもたげた際への対応法も自分のなかで決めておくと良い。

ここでも禅やマインドフルネスなどの瞑想法は非常に役立つだろう。初心者を脱したサウナーが妙にスピリチュアルな方向に傾倒するのには明確な理由があるのだ。

禅のようにシンプルに呼吸を数えるだけでも良いし、マインドフルネス的に「今」に集中して、感覚を研ぎ澄ませてもよい。恵まれた環境の外気浴であれば、水のせせらぎや木々のざわめき、鳥や虫の声に耳を澄ませるだけでもディープリラックス状態に近づけるだろうが、都心だとなかなかそうはいかないので、水風呂の音など、意識的に集中する対象を選択する必要はあるが。

ちなみにマインドフルネスはほぼ禅にインスパイアされた代物なので、基本的な思想や手法は同じことが多い。仏教の修行における禅はヨガ同様にかなりハードなものもあり、中には危険を伴うものも存在するが、マインドフルネスは禅の中でカジュアルに実践できる部分を「瞑想」のスキームとして採り入れている。

準備としては、ととのい中に雑念に囚われた時、自分がどのように集中力を取り戻すか、その方法を決めておくだけで良い。

第一の解消法

ここから先は

4,403字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?